日本人観光客が体感した9・9節
【9月29日・土曜日】
北とぴあで開かれた「第九回朝鮮観光ファンミーティング」へ。昨年秋の第六回、今年春の第七回に引き続き、「訪朝記」の販売が目的だが、三回目の参加だ。前回、9・9節を前後しての第八回ファンミーティングの平壌開催が明らかにされた。『風景』49号に、「『板門店宣言』以後の『コアな人々』の初訪朝、創建七〇周年行事も目撃するであろう、報告が楽しみだ」と、書いたが、その報告会である。
電車の遅延のあおりで、二〇分遅れの会場入り、めだった空席も、一五分後には埋まっていた。定員八〇人、満席である。
羽田発着、三泊四日で総費用一九万九千九百円、一八歳から八三歳まで、ツアー参加者は五一名。近来ない大型観光団だ。

北京―平壌間の予定フライトのキャンセル、宿泊ホテルのランク落ち、スケジュールの大幅変更など、アクシデントの連続だったようだ。「初心者には驚き…不満も…」。経緯を説明するTさんが明るい笑顔、軽妙な話っぷりから「深刻さ」は伝わってこなかった。空港での長時間待機、市内観光の縮小…そんなこともあんなことも、国慶節の日、メーデスタジアムでの大マスゲーム「輝く祖国」を見ることで帳消しに、結果、大満足だったようだ。
…高麗空港に搭乗するとみんなトイレに行くのでおかしいなと、思ったらCA目当てだったとか、一〇五ビル、柳京ホテルが共和国旗でプロジェクションマッピングされていたとか、両江ホテルに着いたのが一一時五〇分、五八分に「建国記念」に祝杯をあげたとか、大城山遊園地のジェットコースターに乗って、「マンセー」を叫んだとか、「ガスメッチュ、シオーウォンハダ!(生ビールすっきりした)」とか、切手博物館に昨年行った時の写真を持って行ったらとても喜ばれたとか、朝鮮のかっこいいジャージ買って着ていたら向こうの人と間違えられたとか…たくさんのエピソードが紹介された。
マスゲームについての話は長かった。日本を発つとき、「正装持参」が告げられていたので予想はしていたが、「一号歓迎曲」が聞こえてきた瞬間、興奮、鳥肌が立った…地響きするような拍手と万歳! 思わず万歳を叫んでいた…二百メートル先に金正恩党委員長の姿…写真は撮れなかったが、これに感動しない人はいない。
一〇人ぐらいが延泊したようだ。マスゲームを二度見た人も、八三歳の最高齢者は「歩くために海外旅行」をすると言っていたが、「すごく楽しかった機会があればまた…」と。開城や板門店、妙香山にまで足を延ばした人がいて、市内でポーリングやカラオケ、射撃に興じた人もいたようだ。
参加者の中からは、五〇人も行ったのだから感想もそれぞれ、本来、朝鮮旅行自体がミステリーあるあるツアーだと思えばいい、両江ホテルにも結構な外国人観光客が泊っていて英語、中国語、ロシア語を駆使するガイドさんと筆談を楽しんだ、平壌から丹東まで汽車旅行、写真も撮り放題だったし、食堂での食事も楽しめた…などの感想が述べられた。
その後の9・9には行けなかった二人の報告も面白かった。
一人は、九月に二度訪朝したという女性、マスゲームは写真だけではなく、動画も撮れた。「チョー冷麺好き」で、一回目は五杯、二回目は七杯食べた。次は冷麺づくりのツアーに参加してみたい、と。

もう一人は、八月に訪朝した鉄道マニアの男性だ。鉄道に乗るために四五か国行った、朝鮮は二〇一四年に続き二回目。話始めるとスクリーンに「チュチェ一〇七(二〇一八)年八月時点の公共交通事情」、平壌市軌道電車(路面電車)、平壌地下鉄道、平壌無軌道電車(トロリーバス)、朝鮮鉄道省の文字が。四泊五日して七千枚の写真を撮った、案内人からは「機関銃のように写真を…」と言われた。
…路面電車は二七年ぶりにリニューアルされていたとか、地下鉄の車両は中国製からドイツ製に、二〇一五年からは国産の新車も導入されて…トロリーバスは二〇一七年から新型が導入され…とにかく詳しい。そればかりではなく、路面電車とトロリーバスをチャーターしてノンストップで走ったとか、地下鉄の全区間を乗った初の日本人で、ICカードを記念にもらったとか、そんなことも出来るのかと、驚きの連続だった。会場からのチャーター代金はとの質問に日本円で一万五千円、四泊五日の滞在費は二〇万円前後。それに、地方では日本の中古バスが走っていると、神戸、阪神、阪急、名古屋、東急など、会社名をあげて説明していた。
訪朝者も参加者も間違いなく「コアな人」たちだ。朝鮮を楽しもうとする、身近に感じようとする、そんな人の話は、テレビでの「北朝鮮報道」のように不快な思いをさせない。むしろ新鮮で、先入観を取り払ってくれる、そんな「朝鮮ファン」の面々だ。
二年後、記念日に合わせず白頭山ツアーはいかがでしょうかと、呼びかけていた。一緒に行くのも悪くないと思った。しかし、その頃は、白頭山一帯の観光ルートも整備され、北京―平壌―白頭山ではなく、仁川―平壌―白頭山、仁川―白頭山直行便が出ているのでは? そんな夢のような話も現実味を帯びてきたのでは…。

写真は、メーデスタジアムでのマスゲーム「輝く祖国」の入場カード、八GBのUSBメモリ付きで馬息嶺スキー場などの観光案内映像も入っているとのことだ。
*加筆して11月に刊行する『朝鮮学校のある風景』52号に掲載します。