東京朝高の六六回目の卒業式
【3月6日・日曜日】
一三二人の卒業生一人ひとりに卒業証書が手渡された。上着がはち切れんばかりの巨漢はラグビー部だろうか、歓声が飛んでいた。髪を真ん中で分け後ろで結んでいるのは舞踊部なのだろう、背筋が伸び姿勢がいい。「어떤 바람이 불러와도(いかなる風が吹こうと)」髪の毛だけは揺るがないアイパーでびしっと決めた生徒が多かった。腰を九〇度曲げて深々と挨拶をする生徒が何人かいた。いかにもわけあり風だ。大きな拍手がわいた。大多数が、街角で見かけても朝高生なのか、どうなのか見分けがつかないので、こんな生徒が目につくのだろう。舞台を降りて席につく前に二階の保護者席に向かってなんどもVサインをする生徒もいた。カメラを向けるオモニに応えているようだ。

卒業生の名前を呼びあげる五人の担任の方が緊張しているようだ。壇上に立ち名簿から目を離さず生徒の名前を読み上げる先生もいれば、生徒の顔を見て、語りかけるように名前を呼ぶ先生もいた。
来賓の祝辞、校長の学事報告、卒業生代表の決意表明、卒業公演で、同じく語られたのは、初のラグビー部の花園出場と高校無償化適用からの排除だった。応援を通じて同胞社会の温かさを感じ、「熾烈な戦い」を通じ日本で朝鮮人として生きることが決して容易いことでないことを実感したということだ。
彼らがリーダーシップをとった学生会のこの一年間のスローガンは「오직곧바로(ひたすらまっすぐに)!」だったとも。その気概は、「行こう、白頭山へ」で始まった、卒業公演にも貫かれていた。
男女それぞれの重唱でのアンコール曲がまた良かった。
「民族の魂…心に…礎になろう…」(女子)、「愛がないのなら…信頼していないのなら…私の心とお前の心臓が…」(男子)
男子のアンコール曲のタイトルは、「志を同じくする者たちの歌」、歌詞もよかったが、切々と歌う生徒たちの姿にうっとりした。

それから、いつも力と希望を呼び起こしてくれる合唱・舞踊・合奏の三拍子がそろった「マンプンニョン」を十年後も、二十年後も見ることができればと思った。
卒業生たちは小学校への入学を前後して、「拉致」で騒ぎ立てられ、日々「北朝鮮バッシング」が激しさを増す中で、一二年間の民族教育を受けてきた。
四四人が朝鮮大学、四一人が日本の大学に進学する。一九人が専門学校に進み、一四人の就職が決まっている。慎校長が語ったように、ウリハッキョで得た、「ウリマル(母国語)と人生のかけがえのない友という二つの宝があれば…」道が開ける。大きく羽ばたくことができる。そんな思いを強くしたひと時だった。
再整理して、三月下旬に刊行する『朝鮮学校のある風景』36号に掲載します。