運動会前日の東京中高
【10月3日・土曜日】
美術担当の崔先生のfb「去年、壊れた統一門片方を今年はリニューアルしてついに出来あがりました。あとは、校門に作る鬼瓦の門だけ。頑張れ、美術部!」との記事を見て、東京中高(東京朝鮮中高級学校)に立ち寄った。
運動場手前の統一門越しに青々とした人工芝の上でボールを蹴る生徒の姿が見えた。

校内を歩く生徒の姿はまばらだ。美術室をのぞくと何人かの生徒がカップラーメンをすすっていた。そう言えば、校門前の弁当店に人だかりができていた。昼食の時間だ。

二時過ぎ、美術室の前から「トンムドゥル(みんな)!!」の大きな声が聞こえた。作業の前の気合い?を入れているようだ。しばらくすると、五、六人の部員が大きな「壁」を体育館から校門に向け運び始めた。何枚ものベニヤ板を繋げた面に「大運動会」の文字が見えた。もう一枚には龍の絵に校名が描かれていた。なかなかの迫力だ。

校門の前を五、六人の男女生徒が竹ぼうきで掃きはじめた。
「ソンセンニム(先生)、枯れ葉を集めるのが上手ですね」
「人生生きてきた分…」
男子生徒と女性の先生のそんなやり取りが聞こえてきた。生徒は「テーゲ(とても)」という言葉を乱発していた。ほうきに「中級部一分団」と記されていた。中学生のようだ。

校門の上にはすでに三人の男子部員が上っていた。カメラを向けると、大きく手を広げポーズを取ってくれた。脚立も立てられ、崔先生はメジャーで何度も図り直していた。
「仮止め」とか、「ロープで…」とか、「緊張…」とかの言葉が。通りかかった先生からは、「保険に入っているか」、「二時間で終わるか…」などとの声がかけられていた。

「固定!!」、「もう少し…」。
校門の上の三人がロープを引き、五、六人が支え、崔先生が長い板で補助する。「壁」が徐々に垂直になり「柱」になるにつれ、真剣味も増していた。

そしてもう一つの「柱」。さきほどまで、校門の上で変なポーズを取っていた三人も声を掛け合い真剣に作業に取り組んでいた。下で「柱」を支える部員からも時折笑い声が、「愉快な裏方集団』のようだ。

その頃、校庭では一斉に掃き掃除が始まっていた。女子生徒が体育館の二階の窓ガラスを拭いていた。チマチョゴリ姿で身を乗り出すので少し危なっかしく思えた。

運動場には共和国の旗と統一旗がなびき、人工芝の上には大きなブルーシートが次々と敷かれていた。正面には中級部と高級部の大きな校章が貼られ、男子生徒が鉄柵によじ登り、「学校創立69周年…大運動会」の横断幕を固定していた。

校門に戻ると、「柱」と「柱」の間に入る「壁」の設置が始まっていた。搬入からすでに一時間たっていた。後ろからみると、二本の「柱」は、七枚ずつのベニヤ板を繋げた代物、大きいはずだ。

二階の校舎から運動場を見ると、女子生徒が大きなスカーフをもって踊っていた。集団体操の最終リハーサルのようだ。同じ動作を幾度も繰り返していた。本番が楽しみだ。

何人かの先生と話をして、原稿を頼み、校門を出て振り返ると、美術部の努力の結晶「鬼瓦の門」がそびえ建っていた。足を止め眺めている母娘の姿を見て、とても誇らしかった。「愉快な裏方集団」の面々の笑顔が浮かんだ。***

*再整理して11月下旬に刊行する『朝鮮学校のある風景』34号に掲載します。