【5月25日・土曜日】
「阿佐ケ谷朝鮮学校サランの会」の一日給食。
玄関の正面掲示板は、運動会の練習、頑張っていますのポスターで埋まっていた。
前々日の5月23日に行われた、第一回予行練習の成績は、低学年が8・5で、高学年6を大幅に上回っていた。組体操が7、行進が6、人民保健体操には7・8の点数が付けられていた。高学年の頑張りが今一つ、足りないようだ。
隣には、低学年が学ぶべきウリマルとして、「すなあそび」、「よっしゃー」、「くみたいそう」、「がんばれ」などの単語が書いてあった。「よっしゃー」が「옳지」で、「がんばれ」が「잘해」、幼い児童が言う「チャルヘ」は、大人びていながら可愛い響きがして、なんとなく耳触りがいい。

2階の3年生の教室では、教壇に座った金先生がノートを点検していた。なぜか、2人の女子児童は、机の上ではなく、床に座ってノートに書き込んでいた。

1年生の教室からは、全員で「やー」を交互に発音していた。ドアのすき間からのぞくと、鉛筆を握って何やら書いていた。暑いのか、制服の上着が椅子に掛っていた。

9時を少し回って、炊事場では準備が始まった。女性が4人、「料理長」の三木さんからは「少し遅れる」との連絡が入ったようだ。メニューは五目そうめんだ。塩もみしたキュウリや油揚げを細かく刻む作業なので、出る幕ではない。

しばらくして運動場に行くと、休み時間だ。1年生の女子児童が1輪車の練習をしていた。男子児童はボールを蹴っていた。

2時間目、4年生の教室からは軽やかな英語の音楽が流れてきた。
「ハローハロー…」「マイネーム…」
女性の先生の言葉は、すべて英語だ。
順番に自己紹介をするのだが、恥ずかしいのかもじもじする男子児童が少なくなかった。
廊下ですれ違った教務主任の趙先生に声をかけた。
私・「英語の授業、いつから…」
趙先生・「だいぶ前からです。4、5、6年生だけですが…」
私・「教務主任、英語は…」
趙先生・「私は…」

給食室に戻ると、5人はキュウリと油揚げ、ハムをひたすら切っていた。「料理長」の三木さんは、乾燥ワカメをお湯で戻していた。私ができることといえば、卵を割るぐらいだ。
「イルウさん、薄焼き卵作ってみません」「できますかね…」
厚焼きの出汁巻き卵は作ったことがあるが、フレープのような薄焼き卵は初めての挑戦だ。

何枚か、まとわりついて失敗したものの、どうにか、薄焼き卵らしきものを何枚か焼けた。

いよいよメインのそうめんは、男3人の担当だ。2人が湯がいた麺を氷水で洗う役目になった。
ガス台が新品だ。ガス口が三つついた、家庭用ではなく、飲食店でよく見る業務用だ。火力も強い。
ガス台が壊れて、「中古でも」と、区役所に交渉に行ったもののらちが明かず、商店街の人の尽力で新品に入れ替えることができたと、孫が第9に通う申さんが嬉しそうに話していた。
それから40分はひたすらそうめんを氷水で洗い続けた。
児童と教職員、それに「サランの会」のメンバー、おかわり分を合わせて160束、8キロ、湯がく2人は汗だく、洗う私は手の間隔がなくなるほどカチカチだ。
記念に写真をと思ったが、手がかじかんでシャッターを押すことができなかった。

多目的ホールに全校生が集まっての給食。生徒代表が「サランの会」の皆さんに「ありがとうございます」、「チャルモツケッスムニダ」だ。
「そうめんのおかわりはあります」、「唐揚げもです」。
唐揚げのおかわりには、歓声らしきものが…。

3年担任の金先生が児童にカメラを向けていた。趙教務主任は、いつもの大きな一眼レフを構えながら、各テーブルを回っていた。

6年生のテーブルに着いた。英語の先生もだ。
私・「金先生、英語は…」
担任の金先生・「習ったことあります」
児童・「しゃべれますか?」
英語の先生・「金先生は発音もきれいだし…」
その後、金先生と児童の間では、「クレイジー」という言葉だけが飛び交っていた。

図書室で打ち合わせをしていたオモニ会のメンバーも合流。幼児を連れてきたオモニは「一応おむすびは持ってきたんだけど、助かる」、「助かる」を連発していた。幼児たちも唐揚げが大好物のようで、美味しそうに食べていた。
オモニ会のメンバーは、給食を共にしながらも、打ち合わせのつづきやら、子育ての話やら、児童たちが食べ終わった後も延々と話しこんでいた。

その頃、運動場では低学年の運動会の練習が始まっていた。

オモニに連れてこられた幼児は、その隣でボール遊びに興じていた。

その頃、高学年は掃除。6年生の児童が金先生にトイレ掃除の点検を受けていた。

一方、炊事場では後片付けの真っ最中だ。残ったそうめんは、先生の夜食用に冷蔵庫に保管することになった。腰の痛みを感じ、翌日の仕事は休むことができないので、「早退」させてもらった。

強い日差しの下で運動会の練習はつづいていた。徒競争の練習だが、広いとはいえない運動場での徒競争は、直線で駆け抜けるというより、コーナーを最短距離で回るのが秘訣のようだ。児童たちは、そんなことはお構いなしに、直線も、コーナーもおもいっきり走っていた。

第9の運動会も、第3と同じく6月の第1週の日曜日だ。この1週間、練習もあって、先生たちは雨が降らないことを願うばかりだ。
「サランの会」による給食は、今回で4回目だ。次は秋口になるが、メニューは? カレーに冷麺、ヒピンパのつぎは…、給食基金集めも大変だが、メニューを決めるのもたやすくないよう