【9月21日・金曜日】いつもの東京チェーサムの遠足へ
春の遠足は、観光バスでの全校生による「ふなばしアンデルセン公園」だったが(ブックレット『朝鮮学校のある風景』13号参照)、今回は高学年は昭和記念公園、低学年は井の頭公園だ。
「8時30分学校集合・弁当持参・お菓子は300円まで」とのメールが届き、低学年に同行した。
小雨だ。路線バスに乗ると、並んで座った男子児童が漫画の本を夢中で読んでいた。隣に立った女子児童がのぞきこんでいた。大きな赤いリュックを背負って、手にはピンク色の傘を握りしめていた。運動会の赤い帽子を被っていた。
「サマヨール」、「ポケモン」の文字が見えた。ポケモン関連本のようだ。
途中、通路を隔てて座っていた女子児童が立ちあがった。乗って来た年配の女性に席を譲るつもりのようだ。ピンクのリュックに赤と白のツートンカラーの手提げ袋、赤い帽子をかぶっていた。
中年女性・「いいの? 座って…」
女子児童・もじもじしながら「どうぞ」。
途中、男子児童が乗って来た。重いのだろう、紺色のリュックが肩からずり落ちていた。私に「アンニョンハシムニカ」と言って、「ポケモン組」に合流した。
地下鉄の出口から女子児童が飛び出してきた。信号待ちで一時停車したバスに乗れて、一安心といった表情だ。息を切らしていた。手には黄色い携帯を握りしめていた。傘も黄色を基調としたカラフル色合いだ。リュックも靴もカラフルだ。
最後部の私の隣の席に座るなり、動物図鑑を読み始めた。額ににじんだ汗を拭いていた。地下鉄から降りて、バスに乗り遅れまいと、走って来たに違いない。
私・「何年生?」
女子児童・「2年生です」。しっかりしたウリマルだ。恥ずかしいのか、目を合わせようとしない、視線はクマの写真にいっていた。
バスを降りると、何人かが走り出したが、信号待ち。のんびり歩きだした赤い帽子を被った女子児童が追いついた。

信号を渡ってしばらく行くと、資源回収のリヤカーをひく、2人の中年の男性とすれちがった。
児童たちと、「おはよう」、「遠足です」-そんな言葉を交わしていた。
赤い帽子を被った3人のの女子児童は、写真館のショーウインドーの中の幼児の写真を「イェプダ」と指さしたり、2、3軒先の商店の閉まったシャッターの穴をのぞきこんだり、あいかわらずスローペースだ。
朝からの小雨はあがり、3人の手にしっかり傘が握られていた。

低学年の教室がある2階の踊り場の正面には、「お爺さん、お婆さん よくいらっしゃしました」とのイラスト付きのポスターが貼られていた。先週土曜日の「敬老の集い」のなごりのようだ。
児童たちが教室と廊下を走り回っていた。誰一人として上履きを履いていない。
2年生の教室の黒板には「体育着」「上履き袋」「歯磨きの道具」の3つの単語が書かれていた。
遠足の後、2連休なので持ち帰るようにとのことらしい。
高学年の教室が並ぶ3階からも賑やかな声がした。目的地が同じ沿線なので、途中まで一緒に行くのかと思ったが、4年生の教室に児童の姿がない。5、6年生の教室から何人かの児童が飛び出してきた。
机に隠れる輩、掃除道具入れに入ろうとする輩、廊下を走り回っている輩もいた。
「ミッションA」とかの声も聞こえた。鬼のいない間に何とかである。低学年の児童が「探検」と称して、わがもの顔にふるまっていた。

集合時間の8時30分になったのだろう、、「教室の電気を消して…校庭に集まるように」との校内放送が流れた。
学年別に整列を始めたころ、自転車に乗った音楽の朴先生が「遅刻! 遅刻! ミアネ」と言いながら到着した。
1年生は出席番号順、2年生は男女1列づつ、3年生は…。運動会の帽子をかぶって行くのは1年生だけだと思ったいたが、2、3年生はリュックから帽子を取り出し全員着帽。3年生の最後部の男子児童一人帽子を忘れたようだ。
金教務主任が「雨が心配ですが…楽しく…」、「広い道では2列…」と短く注意事項を告げて、出発した。

最寄りの駅で何人かの児童と合流し、2度電車を乗り継いで目的地へ。乗り換え駅はいずれも混雑することで有名、先生は乗り降りするたびに人員点検を繰り返していた。
電車やバスでの通学に慣れている児童たちには、緊張感は見受けられなかった。
ただ、団体切符なのに定期券を持った児童がいつものように定期券を自動改札機にあてようとしていたのには笑えた。

金教務主任がいたせいか、電車の中もいたって静かだった。
「ソンセンニム、ソンセンニム、飴とオットットと○○、何が好きですか」と訊ねてくる児童がいたり、「あれって、ウリマルですよね」と言って駅の掲示板を指さす児童もいたりして、長く電車を乗ったという気はしなかった。

ふと見ると、ピンクのリュックに「東北」と書いた女子児童を発見! 白いTシャツの胸の辺りにも赤色で「東北朝鮮初中級学校」で書かれていた。入学式のときにあった東北からの転校生だ。
私・「今年東北から来た…」
女子児童・「そうです。2年生にもいます」
「ズボンにも赤い線が入った東北の体育着の方が格好がいい」と言うと、嬉しそうに笑っていたが、すぐに同級生の話の輪に戻って行った。
吉祥寺駅の若いメガネをかけた駅員は、改札で頭をさげっぱなしだった。
みんなが「ありがとうございました」と言って、改札口を出て行くからだ。

駅から公園をめじし歩きだす。児童58人、2列になったり、1列になったり、かなり長い列ができた。
3年生の児童だろう、「비가 내렸길래」、「싸움하였길래」―大きな声が聞こえた。「길래」の用法を言い合っているようだ。「길레」?かも。
1年生の女子児童は、「ソンセンニム、まだイムニカ」を連発していた。「ペガ コプダ」(お腹がすいた)ともだ。
入り口で、学年別に記念写真。1年生は1列で、児童数の多い2、3年生は3列だ。

まずは、モルモットとのふれあいコーナー。公園最大の人気スポットだ。
その前に、全員が運動会の帽子を赤に被り直した。公園は広い、それに他の学校の児童や幼稚園の園児でごった返していた。迷子になっても探しやすいようにだ。
1年担任の黄先生・「日本語が聞こえます。日本語を使う児童は、あっちの黄色い帽子の集団に行って下さい。赤い帽子はウリマルを話すウリハッキョの児童です」
1年生の児童・「ウリマル」、「ウリマル」。どぎまぎしながら、赤い帽子に手をやっていた。

準備をしてきたタオルを膝にひくと、係員が一人ひとりにモルモットを抱かせてくれた。
「口に指を持って行くと、噛まれます」。それでも何人かの児童は、恐る恐る口を指でつっついていた。
あれほど、先生が帽子は赤にと言っていたのに、約1名、青い帽子のままの児童がいた。
金教務主任は、いつもの赤いタオルを首に巻き、そんな児童の様子を見いっていた。寝不足なのか、動物アレルギーなのか、目をしょぼつかせながら。

担任は、ふれあいコーナーを行ったり来たりしながら、児童の姿をカメラに収めていた。
4、5人の児童はが途中リタイヤ。動物? モルモット? が苦手なようだ。
モルモットはメスだけ。「オスをいれると複雑になる」との係員の説明を音楽担当の朴先生に伝えると、「クロッチヨ(そうでしょ)」と、大きくうなずいていた。そして「動物界でオスは…」。私は「人間も同じかも」と応えた。

その後は、学年別に動物園の見学だ。
1年生の児童は、動物を指さしながら、ウリマルで「ヨムソ」、「ノル」など、動物の名前を連呼していた。
鹿をカンガルーと言う児童もいたり、「角」というウリマルを訊いたり、とっぴしおしもなく「リュックが重い」と言ったり…。頭にピンクのハンカチを載せた黄先生は、そんな児童にウリマルを教えたり、写真を撮ったりしていた。

猿山も人気スポットの一つだ。
落ち葉で遊ぶ猿を見て、拾い集めた落ち葉を猿山に投げ込む女子児童がいた。
「ここに逃げてきた猿がいる」と、男子児童の肩を抱くと、「アニムニダ、アニムニダ(違います)」。
そして「私は東京朝鮮第3初級学校3年の○○○です」と、真面目な顔で応える児童には吹き出してしまった。
2年生の男子児童は、猿が後ろ向きになるたびに、「ウォンスンイ オンドゥンイ(猿のお尻)」、「パルガン オカドゥンイ(赤いお尻)」と、大きな声で叫んでいた。

メリーゴーランドに、コーヒーカップ、スカイバスケット等々-児童には、一人2枚の乗り物券が配られた。
並ばないのがいい。従業員は手持ちぶたさなのか、チケットを持った児童に呼び込みをしていた。
コーヒーカップに乗った児童は、ぐるぐる回しながら思いっきり大声を張り上げていた。

児童たちはリスをみつけては、指さしながら「タランジィ」を連呼していた。
最近、リスの「大脱走」で有名になった、リス園だ。
ベビーカーをひく男性が「タランチュラじゃないのですが…」と、私に話しかけてきた。
「朝鮮語で、リスのことです」と答えると、「韓国から来たんだ」と一人「納得」していた。

以下続く