【7月21日・土曜日】
日曜日を挟んで、終業式の2日前の東京チェーサム(板橋区にある東京朝鮮第三初級学校)へ。恒例の「民族の日」の行事を見たくてだ。
校舎入口の左手の来客用の靴箱には、いくつもの女性の靴が並んでいた。
「今年は学父母にも公開?」-そんなことを思いながら、教員室に向かうと、隣の会議室からは女性たちの笑い声だ。正面に座ったオモニ会の姜さんが手を振ってくれ、教育会の洪先生はいつものように笑顔で「スゴハシムニダ」をしてくれた。

1週間後に迫った、夜会の打ち合わせだ。

2階の低学年の教室では、声をそろえて発音練習。

3階の高学年の3つの教室をあわせた「臨時講堂」からは、児童が教科書を朗読する声が聞こえた。
4年生はいくつかのグループに分かれての出場なのだろう。
6人の男女児童は担任の金先生前で緊張気味に何かを読み上げていたが、後ろに座った待機組は、寝転がっている男子児童もいて、リラックスしていた。

例年の「民族の日」をウリマルの技量向上に特化した行事に様変わりさせ、今年からは「ウリマル マダン」に。
「ウリマル マダン」、直訳すると「私たちの言葉の場」だ。
前年度逃した「ウリマル模範校」を今年度こそは獲得しようと取られた措置でもあるようだ。
女子児童が会場の正面の黒板にタイトルを書き始めていた。

前に座った6年生の男子児童は、開演直前まで原稿を読み返していた。

学年別に「クゴ(国語)」の教科書の朗読を基本に、発音練習、早口言葉、寸劇などで、ウリマルの技量を競った。
審査委員の金校長と金教務主任は、出演者の目前に座って、一人ひとりの口元をチェックしていた。
児童たちには、そんな緊迫感を撥ね退けるパワーがみなぎっているようだった。
下級生の姿を立ちあがって、心配そうに見ていた6年生がとても逞しくみえた。

夜会の打ち合わせを抜けてきたのか、オモニ会の姜会長が、そんな児童たちの姿を写真に収めていた。
早口言葉や寸前はそれなりに声が通っていたが、教科書の朗読は単調さを免れなかった。
「クゴ(国語)」だけではなく、社会や算数の教科書も朗読し、それに基づくパフォーマンスもおもろいのではないかと思った。例えば、分数をテーマに言葉のキャッチボールをしながら問題を解くとか…他の学課の興味がわくのではないかなど、そんな余計なことも思い浮かんだ。
6年生の教科書朗読で「サリバン先生」、「ケラー」の名前が出てきたときは驚いた。
「クゴ」の教科書にヘレンケラー? 教科書も随分変わったようだ。

4年生の児童が朗読する横では、担任の金先生が場面に合わせて絵を高くかざしていた。とても誇らしげにだ。
教科書の朗読部門で、「優秀賞」に輝いたのは、その4年生だった。
「ソロマル」、言葉のキャッチボールの部門では5年生が「優秀賞」を、6年生が「特別賞」を受賞した。
「ㅇ」と「ㄴ」をきれいに発音していた1年生もまた「特別賞」だった。
6年担任の夫先生は、「当然でしょう」という風? 出番を終えた児童たちを拍手で迎えていた5年担任の許先生の顔には嬉しさがにじんでいた。

この日、児童に負けず劣らぬ「熱演者」は、「チョンケグリ」と「三匹の子ブタ」の読み聞かせに挑戦した先生たちだった。練習に練習を、「特訓」を重ねたのだろう。が、何よりも皆が役にぴったり、児童たちは大喜びしていた。

主人公のひねくれカエルは、きっとあんなガラガラ声なのだろう、オオカミが言葉を話せたら、あんな風なウリマルになるのだろうか。クルクルとなくブタは身体からその言葉を発しているようだった。女性の先生たちも皆が役にはまっていた。

審査結果の発表も沸いた。最後に、金校長は児童たちに「ウリマル模範校」、それも全国で一番の「模範校」になろう、2学期には学年別に特徴のあるもっと立派な「ウリマル マダン」にしようとアピール。先生たちの熱演の後だけに、児童たちはこぞって奮起を誓っているようだ。

そして昼食時間だ。

ヤカンを高々と上げてラッパ飲みした後、男子児童が大きな声で発した一言は、「우리 차가 제일이야!!」、うちの学校のお茶が一番!! 教室中に鳴り響いていた。「ウリマル マダン」の余韻だろうか、発音よし、表現力よし、2学期も期待できそうだ。

昼食を済ませた高学年の児童たちは、運動場に一直線。まだ小雨が降っているにも関わらずだ。
雨でできた水たまりをスコップで運んだ砂で埋めると、思いっきりボールを蹴っていた。
会議室では、夜会の準備がつづいていた。終わる気配はなかった。ik
