【6月2日・土曜日】晴天に恵まれた東京第3の運動会
8時半過ぎ、登校する生徒に混じって、東京中高(北区にある東京朝鮮中高級学校)の校門をくぐった。
簡易テントと昼食が入っているだろう大きなボックスを載せたカートを引く女性が前を行く。運動会を見に行く学父母の「標準的」スタイルだ。

運動場の入り口に設けられた教育会とオモニ会の物品販売用のテント-金校長が45リットルのビニール袋に入れて背負ってきた氷を発泡スチロールの箱に移していた。曇との天気予報に反してカンカン照りの晴天だ。冷えたビールが4本で千円、チューハイは1本200円、ジュースは100円、売れそうだ。
テントの中にビールやジュースの缶が次々と運び込まれていた。

受付に看板を取りつけていた新任のオモニ会の会長と二言三言。
私・「何か大任を担ったようで…」
会長・「引き受けちゃいましたよ。やるっきゃないでしょ」
私・「サッカーは?」
会長・「オモニ体育クラブを発足させました。今年はオモニサッカー大会を復活させて…こっちの方も頑張ります」
運動会のプログラムには「オモニスポーツサークル 美容と健康、ストレス解消に!みんないっしょに楽しみましょう!」との広告が載っていた。つねに笑顔を絶やさない新会長、オモニ会も、サッカーもやる気満々のようだ。

スタート1時間前、すでに運動場の両サイドにはいくつものテントが張られ、正面に設けられた1年生と6年生の「専用席」にも荷物が置かれていた。新入生が半減し、6年生も前年度に比べて少ないせいか、テントの数も場所取りの荷物の数も昨年に比べて多くはない。それでも席取りのため開門1時間前の6時から並びだし、10分前に20余人に整理券が配られたとのことだ。
徒競争のゴール地点の前方に設けられた撮影台の隣の「特等席」にテントを貼った6、4、1年の3人の児童を持つアボジの整理番号は2番、6時前に家を出たと話していた。

テントが次々と張られていく。手慣れたものだ。10時のスタートを前に、ひと眠りするアボジが何人かいた。
少し遅れてきた学父母は、正面スタンドへ。昨年、福島のウリハッキョから転校してきた女子児童のオモニが最上段に座っていた。
私・「4年生になった娘さん、4月の少年団の入団式では代表として決意表明をしていましたよ」
オモニ・「家で何度も読み返していました…参加した中2の上の子から聞きました。第3だけでなく、何校も参加したって…」
私・「学校生活にもだいぶ慣れたようですね」
オモニ・「福島は少人数だったので、手をあげなくても指名されましたが…」
私・「オモニはどうですか?」
オモニ・「バザーや夜会などを一緒に準備する内に、何となくうち解けました」
新年度も東大阪と東北のウリハッキョから4人の児童が転校してきた。入学式のとき、児童と並んで座っていたアボジ、オモニの姿が思い浮かんだ。

運動場の真ん中では、大縄跳びの練習が続いていた。100回超えを目指してだ。お揃いの黒いポロシャツを着た先生たちはマイクや音響機器を囲んで最後の音合わせを繰り返していた。

ポロシャツの胸には、「합심(心を一つに)」という二文字を囲むようにして学校名と「나래쳐라 미래에로!(羽ばたけ未来に!)」という言葉が、背中には「앞으로!(前に!)」の文字がデザインされていた。今年の運動会のテーマのようだ。教務主任の金先生はとても気に入ったらしく、「必ず紹介してください」と、すすんでモデルを買って出てくれた。

児童の応援席では、1年担任の黄先生が民族衣装に着替えさせていた。今年退職した秦先生もだ。前年度の1年生の担任だ。
「座っていられなくて…」と一言。笑みがこぼれていた。

「第66回運動会」と書いた横断幕を掲げた1年生が、運動会のスタートを知らせると、全校生が入場だ。「시작하겠습니다(シジャクハゲッスムニダ=始めます)」の「시(シ)」を少し延ばした大人びた言い方に場内は沸いた。

正面向かって左手の撮影台には溢れんばかりの学父母、ハルモニ、ハラボジたちが座っていた。学年別の徒競争、児童と学父母による障害物競走に風船割り。ビデオは回りっぱなし、デジカメのシャッター音も途切れることはなかった。

祖父母による玉入れは、スタートの合図の前から競技は始まり収拾がつかない。


高学年による騎馬戦は、男女別ではあったが、男女共に帽子の取りあいではなく、潰し合いだ。幼児が「お姉ちゃん、頑張れ」と、運動場に飛び出して来たり、地元のチョチョン(青年同盟)専従が怪我をしないよう児童を支えたり…。

歓声と共に飛びかかって行く、男女とも、なかなかの迫力だ。

つづいては1年生の「ここだよ!アッパ、オンマ!」。学父母が二人三脚で走って行き、仮面を被った児童の中から自分の子を探し出し両手に乗せ、名前を書いた札を取って、三人で手をついでゴールに駆け込むという競技だ。
新入生は10人のはずだが、仮面を被った児童は16人、他人の子を連れだそうとしたり、児童を落としそうになったり、つまずいたり、ゴールに駆け込むなり、急ぎ客席に向かい友人に任せたデジカメで写真のでき具合を確認したり、ここでも児童より学父母が汗だくになっていた。


6年生の農楽が終わると、学父母と一緒に卒業アルバム用の記念撮影だ。6年生の学父母に頼まれたであろう、にわかカメラマンも取り囲んでいた。そく底抜けに明るい児童たちの笑顔は素敵だ。それを見守る学父母の表情も誇らしげだ。学芸会もそうだが、運動会も新入生と卒業学年にスポットをあてる、プログラムもそのように組まれているようだ。
運動場をひと回りする。今年度東京朝校に転任した教務主任だった金先生と、退職した、前年度2年担任の高先生も児童たちに声援を送っていた。

つづく