【子どもたちに渡すな あぶない教科書 大阪の会の伊賀 3・22発】
昨日、大阪で日韓共同シンポジウム「教科書問題と歴史認識」を開催し、日韓アピールを発表しました。
最終的には、日本で95団体、韓国で22団体の合計117団体の賛同を得ることができました。
ご協力、本当にありがとうございました。
今日は、大阪の会とアジアの平和と歴史教育連帯の方たちと、大阪府教委、大阪市教委へのアピール文の手渡しと要請行動を行いました。
日韓市民友好のための共同アピール
日韓友好のかけはしとなる教科書を
子どもたちに渡しましょう!
今年、2011年は中学校教科書採択の年です。
今、日本の文部科学省によって中学校教科書の検定が行なわれています。3月末には検定結果が公表され、8月中には全国500あまりの採択地区で、来年度から使用される教科書が決定されます。
今回の検定と採択は、「愛国心教育」を盛り込むように改悪された新教育基本法と、新学習指導要領にもとづいて行なわれます。そのため、これまで以上に偏狭で、自国中心主義的な内容の教科書が、教育現場で使用されるようになることを、日韓の真の友好を願う私たちは強く懸念しています。
2001年に「新しい歴史教科書をつくる会」(「つくる会」)が、「これまでの教科書は自虐的だ」「日本の歴史に誇りを持たせる歴史教育が必要だ」と叫び、侵略戦争と加害の歴史を正当化する歴史・公民教科書(扶桑社版)を発行しました。この歴史教科書は「日清・日露戦争」や「韓国併合」を「自衛のためのやむをえない戦争、併合だった」と記述しています。また、公民教科書では「竹島/独島」について「韓国が不法占拠している」と書き、両国民の対立を煽りました。
その後、「つくる会」は分裂し、2009年には侵略を正当化する教科書が2社(扶桑社、自由社)から発行されました。横浜市の一部で自由社発行の教科書が採択されたことから、今や、全国の中学生の60人に一人が偏った自国中心主義的な歴史教科書で学習させられています。
対立を増幅させるナショナリズムを子どもたちに植え付けてはなりません。
しかし、懸念されるのはそれだけではありません。文部科学省が中学校学習指導要領の解説書において、「竹島」について「北方領土と同様に」扱えと、日本国内の領土ナショナリズムを煽るかのような指導をした結果、今年度発行される8社の社会科教科書には「竹島/独島」に関して、日韓両国民が鋭く対立せざるをえないような記述がなされていることが予想されるからです。
すでに、2010年に発行された小学校教科書では、「島根県に属する竹島を韓国が不法に占きょしている」と記述した教科書(日本文教出版発行・旧大阪書籍版)が出てきています。このことによって作られた日韓両国の間の緊張と対立の火種が、これ以上燃え広がることがあってはなりません。
そもそも「竹島/独島」は、1904年から始まった日露戦争の真っ只中で、ロシア艦隊を監視するための望楼を建設するという軍事的目的から、1905年1月に日本政府が島根県への編入を急きょ閣議決定したものです。それは、日本が朝鮮を軍事占領し、実質的な支配下に置いていく状況のもとで、朝鮮全土の植民地化に先駆けて行なったものでした。そのため韓国では、「竹島/独島」問題は単なる両国の領有権の対立の問題としてではなく、日本が朝鮮を植民地化していった一連の歴史的過程で生み出された問題として認識されています。つまり「竹島/独島」問題は、日韓両国民にとって、侵略戦争と植民地支配の清算にかかわる問題でもあるといえましょう。
このような歴史的経過のある問題であるがゆえに、従来の日本の教科書では、「竹島/独島」についてはまったく記述しないか、または「日韓両国が領有権を主張している」といった記述にとどめていました。それをあえて今、文部科学省は扶桑社の公民教科書と同様の記述を、他社にも求めているのです。
私たちは、このような記述は日韓の友好にとって百害あって一利なしと考えます。両国の政府間の冷静な話し合いによって解決すべき問題を、「韓国が不法に占拠している」と一方的な記述をすることにより、日本の子どもたちに友好国への悪感情と排外主義的なナショナリズムを植え付けることは、断じて許されることではありません。
「近隣諸国条項」を尊重した教科書を子どもたちへ
文部科学省は、社会科教科書の検定基準のひとつに「近隣のアジア諸国との間の近現代の歴史的事象の扱いに国際理解と国際協調の見地から必要な配慮がされていること」をあげています。これがいわゆる「近隣諸国条項」と呼ばれているものです。
これは1982年に、「侵略」から「進出」への書き換えをめぐって教科書問題が起こった際に、過去の日本のアジア諸国への侵略・加害行為の反省を教科書の記述に反映させるために、日本政府が自ら設けた項目です。アジア諸国からの信頼を回復するための措置として、この検定基準が設けられたという背景を考えるなら、「近隣諸国条項」は国際社会に向けて日本政府が行なった“約束”ともいえるものです。
にもかかわらず「つくる会」の運動が始まると、2001年以降、文部科学省はこの条項を事実上反故(ほご)にし、同会系の教科書を検定に合格させ、日本軍「慰安婦」に関する記述も後退させてきました。現時点ではまだ検定結果は公表されていませんが、文部科学省は育鵬社版(これまでの扶桑社版)、自由社版ともに検定に合格させることが予想されます。
国際社会においては、2010年6月に国連子どもの権利委員会が「日本の歴史教科書においては、歴史的出来事に対する日本側の解釈しか記述していないため、地域の異なる国々出身の子どもの相互理解が増進されていない」との勧告を出しました。これまで教科書問題が発生するたびに、日本政府が「近隣諸国条項」をもって“近隣諸国に配慮している”と説明してきたことと、現状とが矛盾することを国連が指摘したのです。このような国際社会の声を日本政府・文部科学省がどのように受け止め、検定に生かすのかが国際社会からも注目されています。
おりしも、昨年「韓国併合百年」にあたって、日本の菅直人首相は談話を発表しました。菅首相は、韓国・朝鮮の人々の「意に反して行なわれた植民地支配」を「自らの過ち」として認め、「省みることに率直でありたい」と述べました。そしてその上で、「両国間の未来をひらくために不断の努力を惜しまない決意」を表明しました。
私たちは、この菅談話の立場が検定においても貫かれるべきだと考えます。菅談話と「近隣諸国条項」にもとづき、日韓の友好を壊すような記述を厳しく精査し検定を行なうよう文部科学省に強く求めます。それこそが日本が国際社会、とりわけアジア諸国の人々からの信頼を取り戻す道ではないでしょうか。
絡まった日韓の糸を解きほぐし、平和な東アジアを構築する主体を育てましょう。
私たちは、日本の中学生たちが歴史を偏った形で学び、歪んだ自国中心主義に陥って、アジアの人々との友好関係を自ら壊す結果になることを危惧しています。
20世紀は「戦争の世紀」と呼ばれてきました。21世紀に入ってもいまだ人類は戦争を克服できていません。21世紀を真に「平和の世紀」にするためには、「平和を創造する主体」を育てなければなりません。そのためにも社会科教育は極めて重要です。
子どもたちにもっとも適切な教科書を渡せるよう、日韓の市民が今回の検定と採択に注目し、ともに声をあげていきましょう。
2011年3月21日
*続く