朝鮮学校のある風景-その3 ② | トンポ・トンネ 日々イモジョモ

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連載中の「統一評論」(2010年6月号)の原稿に加筆
 
 
 
朝鮮学校のある風景-その三 ②
 
四月は入学式に公開授業
 
 
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■少年団の入団式にも学父母が
 少年団への入団も、児童にとっては思い出深い行事の一つだ。
 東京チェーサムの少年団の歴史は長い。一九五八年六月二五日に結成されたという記録がある。私が三年生に上がった年である。翌年、少年団に入団した、そのときのことは今でもはっきりと記憶している。
 当時は、今のように四年への進級と同時に全員が入団できたわけではない。上級生による入団の意思の確認、決意表明、そして「少年団の誓い」を暗唱して、入団式に臨む。
少年団の赤いネクタイ(ネッカチーフ)は、下級生のあこがれの的である。三年生の夏休みが過ぎた頃になると、「授業時間に雑談ばかりしていると、少年団になれないぞ」とか、「下級生の面倒をちゃんと見れば、少年団になれるぞ」とか、「キャンプに連れて行かないぞ」とか、先生は少年団の入団をちらつかせ、児童たちにはっぱをかけていた。
 「四月二三日-少年団入団式」のスケジュールを見て、雨で延期になるのではと前日、学校に確認したところ、十条の東京中高の体育館で行われるとのことだ。
二階の観客席に行くと、一昨年までチェーサムで少年団の指導教員だったカン先生がいる。東京チェーグー(杉並区にある東京朝鮮第九初級学校)の児童を引率してきたというのだ。他にも何校かの児童が体育館の階段を勢いよく上り下りしている。
 この日は、チェーサムの児童だけではなく、東京都内で中学が併設されていない、四つの単設校合同の入団式と東京朝中に進学した生徒たちの移籍式が同時に行われる、それで会場が東京中高の体育館というわけだ。
 カン先生は、チェーサムの児童を見つけると、一人ひとりの名前を呼んで、「チュカハムニダ」。「もう四年生か、こんなにちっちゃかったのに」と、優しく声をかける。カメラを向けられると、児童たちは恥ずかしそうに、それでもポーズをとっていた。
 入団する四年生が、地下の体育館でのリハーサルのために席を立つ。残った上級生たちは赤いネッカチーフをしめて歌いだす。
 
밝아오는 조국땅에 노을빛으로
붉게 타는 넥타이를 펄펄 날려라
……
소년단동무들아 기발을 높여라
……
 
(明け来る祖国の地に夕陽で輝く赤いネクタイをなびかせ……少年団のトンムたち旗を掲げ……)
 
 少年団行進曲である。私も一緒に口ずさんでいた。少年団は中学三年生までだから、退団してすでに四五年もの歳月が流れたというのに、忘れないものである。運動会での行進、山中湖でのキャンプが懐かしく思い出された。
 体育館の舞台にたくさん椅子が並べられ、中学生が入場し始める。二階の女子児童の中からは「○○オッパ―」、「○○オンニー」の声が飛ぶ。振り返って手を振るのは、チョーサムの卒業生たちである。
 在校生らも体育館に整列し、式の始まりを待つ。
 舞台の椅子の数を見て、ずいぶん来賓が多いなと思っていたら、そこはこの日の主人公の入団者の席だった。
 この何年か、児童数の減少が取り沙汰されているが、四校が集まればそれなりの数になる。こうして集まれば、チェーイー(江東区にある東京朝鮮第二初級学校)だのチェーユク(大田区にある東京朝鮮第六初級学校)ではなく、日本中のチョソンハッキョがそうであるように、ウリハッキョのトンム(友だち)である。
 いよいよセレモニーの始まりだ。
 まず、各学校の団委員長が「全員整列しました」との報告、祝電の紹介が終わると、入団者の名前が一人一人呼ばれ、上級生がネッカチーフを結んでいく。顔がほころぶ。プレゼントの伝達、そして全員声を合わせての「少年団誓い」の朗読である。
 「私は在日朝鮮少年団として、常に少年団員としての栄誉を胸に…」
ここまでは変わらない。五〇余年前にタイムスリップしたようである。
次に「知徳体を兼ね備えた朝鮮人として同胞社会と統一祖国の未来の主人公として一生懸命に学ぶ…」と続く。
私たちの時は、この部分はなく、「常に準備することを厳粛に誓います」という言葉で結ばれたと思う。
来賓のあいさつ、入団式した児童の決意表明でも語られていたが、「ひとりはみんなのために、みんなはひとりのために」という、少年団のモットー、合言葉は、今も昔も変わらない。少年団生活は、友との出会いの場であり、学びの場であり、協調性を身につける場でもあるのだ。
 
 
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この瞬間にも、東京のいくつかの駅頭では高校生たちが、朝鮮学校の高校無償化の適用を求めてビラを撒いたり、署名を集めたりしている。それはトンムたち少年団員のためでもあるのだという来賓の言葉は、幼い少年団員たちの記憶にも残るであろう。
もちろん、この日もデジカメとビデオを片手のオモニが九人、アボジが一人、二階から児童たちの晴れの舞台を目に、いやカメラにしっかり焼き付けていた。
少年団への入団は、児童の成長の一区切りで、中学、高校への進学が目前に迫ってくるような気がすると、語るオモニの言葉が印象に残った。
 
■熱気むんむんの公開授業(次回)
 
 
 
 
◎シリーズ・朝鮮学校の歩み
Ⅰ「私たちの東京朝鮮第三初級学校物語」(一九四五~六七年・証言編)
Ⅱ「朝鮮学校は民族、統一、共同体の価値を持つ宝庫』(ソウル発インターネット新聞の特集)
Ⅲ「復刻版・東京朝鮮中高草創期十年史」
Ⅳ~Ⅵ「ぼくらの旗-君はあの頃(都立)の東京朝高生を知っているか?(三部作)
Ⅶ「私の中の一九四八年朝鮮人学校教育事件-アメリカ占領軍に抗して」
Ⅷ「続・私たちの東京朝鮮第三初級学校物語』(一九四五~二〇〇九年・体験記録編)
 
 
目次・内容などは 
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