月刊誌「新東亜」(2010年3月号)
脱北外国為替ディーラーが見た北韓貨幣改革の裏側・下
「朴正熙モデルを踏襲した改革、開放準備作業---失敗とはいえない」
ファン・イルト 東亜日報、新東亜記者
誰が北韓の債権を買うのか。
▲貨幣改革の改革開放のための準備作業だと言う他の根拠は。
「貨幣改革と共に最近出た政策の中で注目すべきなのが、国家開発銀行を作るという計画だ。両者はコインの表裏だ。これも朴正熙モデルを考えれば理解しやすい。貨幣改革が国内通貨を健全化するためのものならば、開発銀行は経済開発のためのフォンドを海外で準備するためのものだ」
1月27日の「朝鮮中央通信」報道によると北韓は最近、国防委員会の命令によってテプン国際投資グループと国家開発銀行(韓国の産業銀行に該当)を設立した。金養建統一戦線部長をグループ理事長に、国防委員会や内閣、財政省などの主要閣僚が理事会に参与した。報道によるとテプン国際投資グループは、北韓の対外経済協力機構の役割を果たし、主に北韓国家開発銀行に資金や融資を提供する計画だ。テプングループの総裁には朝鮮族出身の事業家パク・チョルス氏が任命された。
「しかし事実この部分では北韓当局もよくわかっていないことがある。海外でカネを集めたからといってすべてではない。それを資本に会社債や銀行債などCDヲ発行してまた売れなくては成らない。そうしないと資金を増やせない。銀行が預金だけで貸し出しするわけではない。債権の商売だ。必要最小限の資金を集めてそれを手始めに預金よりも少し高い利子の債券を作って売るのだ。
開発銀行を作るのは難しくない。資本金20億ドル程度で充分だ。北韓が持ち分を100%保有する代わりにコンソシアムを作らなくてはならない。問題は北韓が作る債券を誰が買ってくれるのかという点だ。資本は何とか作るとして、その次が難しい。南韓や外国の銀行が保証人になることだけが唯一の方法だ。来たかの名前だけでは開発銀行が成功できるはずがない。資本が残っている間は回るだろうが、すぐに底をつくだろう。
北韓はすでに債券を発行して失敗した経験がある。1988年に平壌で統一債券を発行して1億ドル相当を売った。10%の金利で在日同胞に販売したのだが、こうして集めたカネを再び投資せずに使ってしまった。国家が責任もった債券なので今も有効で、年利10%の利子がどんどん増えていく。結局高い利子でカネを引っ張ってきて使っただけだった」
▲結局今回発表した国家開発銀行計画も同じような結果になると。
「資金誘致を担当するパク・チョルス総裁は金融分野の経歴のない人だと聞いている。大丈夫だろうか。債券を発行して海外に販売するには相当のレベルの専門人材が必要だ。しかし中国は相対的に金融システムが遅れている。米国と我々の格差と同じくらい、我々と中国にも格差がある。債券の海外販売のようなプロジェクトを起案して実行する人が北韓にも在中同胞にも多くない。
「未熟な市場化は開放と相克」
▲もう一度整理してみよう。経済を改革するというのは正しいが、市場化ではないということか。
「長期的には市場化に焦点を置いていると思う。ただ今はそのようだ。韓国もはじめから市場経済をスムーズに進めたわけではない。ある程度資本が蓄積されてこそ本来の市場経済が可能だ。しかし初期のセッティングには国家の強力な介入と騰勢、主導が不可避だ。要するに国家主導型経済だ。
北韓は今、経済を再びセッティング使用としている。これまでの状況では国家が特定の方向に経済をコントロールして引っ張っていく方法がなかった。開放するにもいったんは計画経済敵コントロールシステムが完璧に作動しなければならない。それが今回の貨幣改革の定義だ。
韓国の人たちは改革解放といえば市場経済の導入と考える。だから今回の措置がそれとは正反対のことだとして改革開放が後退したと読む。しかし逆に考えると、放置しておけば開放はさらに難しくなる。開放するにはまず手綱を握らなくてはならない。30~40代の若い人材が職場に復帰しなくては、国家主導の改革開放は不可能だ。市場活性化だけを見る南韓では、後退に見るかもしれないが、事実これは当然の手順だ。
中国の場合を見よう。始め改革開放を決定して、工業と農業を発展させるという計画を建て、成功した。計画経済の強力な主導権のもとで成功したのだ。大きなものを売ってカネが入れば、それを資本として小さなものを作って売りだした。資本が貯まりだしたら、そしてそのメカニズムを国家が管理できるようになれば、自然に開放の道に進む」
▲計画経済が崩壊するのを防ぐのは確かだが、開放化下計画経済、開発主導型計画経済のための出発点を作るためと見るのか。
「北韓の貨幣改革や開発銀行にはより大きな目的がある。国家が自由に使える余力を確保してこれを今後いかに増やすかという構想をもって進めることだ。この構想がまさに開放だ。ひいてはキム・ジョンウン後継体制構築とも関連していると見る。後継者を建てるために派何か状況を大きく変えなくてはいけないからだ。
今後6者会談が開かれて北核問題が進展すれば、米国からカネが入ってくるはずだ。私には正確にはわからないが、400億ドル規模という報道が出たことがある(2009年7月『ブールンバーグ』と『ファイナンシャルタイムズ』はキャンベル米国務省東アジア太平洋担当次官補が明らかにした対北包括的パッケージ構想と関連して「北韓が核を放棄した場合その代価として400億ドル規模の支援金を与える方案」と報道した)。このカネが一度に入るわけではないが、北韓という国を債券する資本としては充分だ。これを元手に経済開発のための基本を築くのだ。北韓の体制を米国が保障するなら、特にキム・ジョンウン体制を認めてくれるなら、平壌としても充分に決心できる問題だと見る」
キャンベルの400億ドル
平壌の権力の中心が経済問題に総力を傾けたのは昨日今日のことではないが、最近取った一連の措置の裏には一種の「重大決心」があるという観測の根拠が至る所に見られる。1月9日付「労働新聞」が報道した金正日委員長の発言が代表的だ。報道によると金委員長は「米の飯に肉汁、絹の服に瓦の家」に要約される金日成主席の遺訓を貫徹できていないと認め、「最短期間に人民に、誰うらやむことのない良い暮らしをできるようにする」と述べた。新聞はまた「今わが党は人民生活に決定的転換をもたらすための雄大な構想と作戦を繰り広げている」と伝えた。
▲ では大きな絵を描いて貨幣改革や開発銀行設立を断行したのなら、それは誰の作品だと考えるのか?
「ひとつの組織が単一で作ったと見るのは難しい。まず、貨幣改革や開発銀行のようなプロジェクトについては内閣財政省、中央銀行総裁が責任を持って進めたのだろう。内閣経済参事たちが立案してあげたものを、党でともに検討して決定したのだろう。それより上位の概念、「後継体制に見合った共和国の改革と開放」という大きな絵は、当然金正日委員長の秘書室で描いたはずだ。それを金正日国防委員長が承諾し、再度内閣参事たちにおろして貨幣改革の実行方案を作ったと見るべきだ」
▲では絵が具体的な成果を得るためにどのくらいの時間が必要か。
「3年ほどで充分ではないかと思う。6者会談を通じて核問題を妥結して後継体制を仕上げる時点と一致させる必要があるだろう。後継者を正式に任命するには人民の暮らしをよくしなくてはならない。2012年強盛大国に関する話や、金正日国防委員長がいう米の飯に肉汁の話もその脈絡で出たものだと思う。カネが入ってきて回り始めれば景気はすぐにでも良くなる。いくつかの開発プロジェクトがすべて進捗しなければ景気が蘇らないというわけではない。一応着手して投資協定を結んで、準備作業を進める過程でまずカネが入ってくるからだ。
米国のある企業がまず象徴的に投資するとしよう。北韓には金鉱や鉄鋼、石炭のような資源がある。黒鉛は世界的に埋蔵量が二位で、生産国は極めて少ない。これを先に掌握するために我先に飛び込む局面もあり得る。モンゴルは北韓に比べて資源が豊富なわけではないが外国の資本が先を競って投資している。韓国が、北韓は滅亡するだろうと考えて傍観していると機会を逃してしまうかもしれない。
李明博大統領がトップ会談をするなら、それが最後のチャンスではないだろうか。北韓が開発プロセスを着実に消化するためには、金融分野の専門性のある人材が数多く必要になるはずだ。各種金融商品や派生商品がすべて投入されなくてはならない。このように専門性が必要な作業を韓国で提供するという提案も良いアイデアだと思う。食糧支援よりも気の利いた提案かもしれない」(了)