資料紹介・脱北外国為替ディーラー見た北韓貨幣改革の裏側・上 | トンポ・トンネ 日々イモジョモ

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月刊誌「新東亜」(2010年3月号)
脱北外国為替ディーラーが見た北韓貨幣改革の裏側・上
 
「朴正熙モデルを踏襲した改革、開放準備作業---失敗とはいえない」
ファン・イルト 東亜日報、新東亜記者
 
 
 北韓ははたして没落の道を歩んでいるのか。昨年11月に断行された貨幣改革以降、北韓専門マスコミを通じて伝えられるニュースはひときわ深刻だ。貨幣改革の相対的な失敗による後遺症が爆発的に表面化しており、民心離反で体制不安が深刻化しているという分析があふれている。平壌指導部の統治権がすでに底をついているという展望さえ提起されている。
 代表的なのは朴南基朝鮮労働党計画財政部長やキム・ドンウン39号室長が貨幣改革の失敗に関連して更迭されたという2月初めのニュースだ。チェ・イクキュ党映画部長も貨幣改革と関連して公報失敗に対する責任を問われて左遷されたというもの。特に最近、北韓消息の主要流通窓口として定着している専門インターネット媒体は、貨幣改革によって史上機能が急速に萎縮したことで食料不足現象が深刻化しており、一部国境地域周辺で騒擾に準ずることまで起こっていると伝えた。2月中旬には金正日国防委員長が貨幣改革の失敗を認め、金英逸内閣総理が人民班長数千人の前でこれについて謝罪したと言う報道まで出た。
 このようなニュースは、北韓の貨幣改革と外国為替管理政策の変更が1990年代以降急速に進んでいる市場経済的要素の拡散を遮断するための措置だという分析の延長線上に立っている。この間後退を続けていた計画経済を復元して社会主義国家としての国家運営システムを回復するという意図だというもの。このような核心部の意志がすでに定着した市場やこれに適応した住民の反発にあって座礁したというのが貨幣改革失敗の主な原因だという分析だ。
 
「北韓も国家だ」
 『新東亜』が紹介する脱北外国為替ディーラー、チェ・セウン氏(50)の分析は、このような既存の視覚と全く違う。貨幣改革をはじめ最近の北韓が見せている経済政策は、開放のための導入部作業と見るべきだというのだ。このような図は、朴正熙政府が推進した国家主導型の開発プログラムに似ており、後継体制構築や北核問題と関連した国際情勢の変化に合わせてこのような開発プログラムを試みようとしているというのがチェ氏の分析だ。
 1995年に脱北したチェ氏は、北韓労働党財政経理部長(韓国の財政経済部長官)を務めたチェ・フィビョク氏の次男だ。1979年に平壌外国語学院、1984年に金日成大学校を卒業した彼はその後、北韓労働党の対外決済を担当する朝鮮大成銀行に入稿し、外国為替担当課長と国際部次長を歴任した。その後数年間ロンドンの現地法人で代表を務めて金と外国為替先物を取引し、朝鮮統一発展銀行副総裁補職を最後にソウルに来た彼は、その後金融決済院・資金仲介室とナラ総合金融国際部課長、外国系企業ソウル法人代表などを務めた。北韓の通貨政策や外国為替管理実務を担当したことがある事実上唯一の高位級脱北者だ。
 
  北韓の貨幣改革と関連して最近伝えられる消息に対してどのように考えるか?
 
 「言論では北韓貨幣改革が失敗したというが、私の考えは少し違う。特に貨幣改革乗せ井で朴南基やキム・ドンウン画解任されたという報道は北韓の政策決定過程に対する最小限の理解さえないという事実を露呈している。個のような重要措置はすべて金委員長の方針を受けて実現されるため、その結果に対して誰かの責任を質すという構造ではない。南韓や日本で自分なりに解釈しているだけだ。
 貨幣改革問題は基本的に内閣の所管だ。貨幣改革をするには中央銀行と内閣財政省が先に起案を作る。一種のタスクポストを組織して起案を審査したはずだ。シミュレーションも実施する。その結果、必要性が認められれば金正日国防委員長が最終的に承認するというプロセスだ。
北韓も国家だ。指導層、専門家たちがいる。あれだけ多くの人口の中でそれなりの頭脳を持った人がいないはずがない。海外留学に行った人も少なくない。北韓を水準以下の非正常な集団と見くびっていては、彼らが今どのようなことを考えているのか、どこに行こうとしているのか把握できない。北韓で通貨関連の計画樹立に直接関与した経験を持って話すなら、北韓にはすでに何度も貨幣改革を断行した前例があることに注目すべきだ。貨幣改革というのは、基本的に一部の苦痛を伴う過程であり、それにより多くの変化が生じ、初期の混乱も小さくないが、すべて予測可能な変数だ。政策が基本目的を達成したなら、失敗とはいえず、貨幣改革の目的は達成されたと見るべきだ。
 貨幣改革の失敗というのは、事前に情報が漏れて人民が買い占めに走り、混乱を招いた場合だ。しかし北韓は統制が強い国家なのでそのようなことが起こりにくい。今回の貨幣改革を前に全国的な買い占めが行われたというニュースが全くないというのは、北韓の体制統制力が依然として生きていることを意味する。国家機構がそれだけ関連情報をきっちり統制したと言うことだ」
 
朴正熙の貨幣改革と比べて
 
  貨幣改革の基本目的は何だと考えるか。
 
 「華僑をはじめ一部の金持ちに貨幣が急速に集中して流通されない現象を解決することだ。国家に100ウォンが必要なのに入ってくる金が70ウォンしかないとしよう。必要な30ウォンを発券しないと100ウォンにならない。しかし何の措置もなしにそのまま発券したのでは流通量が過剰になる。金持ちたちの家にタンス貯金されている貨幣を使えなくした上で、その限度の中で必要な貨幣を発券するための事前措置がまさに貨幣改革だ。市中に出ている貨幣の中で相当部分を使えなくして、その分だけ国家が自由に使えるように余力を得るのだ。
 1960年代に朴正熙政府が貨幣改革をした理由は何だったか。財閥企業の金庫の中に埋もれていた貨幣を世の中に引っ張り出すというのが当時の貨幣改革の目的ではなかったか。原理は同じだ。貨幣を貯めるばかりの華僑や貿易商、帰国者、商売人など金持ちの現金を中央で統一的に管理できる貨幣に換えようという趣旨だ」
 
  そんな貨幣がどの程度の規模だったか予測できるのか。
 
 「少なくて総流通量の10%、多くて30%近くになるだろう。貨幣がどのくらい増えたか確認できなければ経済改革はできない。この情報を明らかに把握できなければどのような政策をどの時点で採るべきか、絵を描けない。経済改革の第一の出発点だ。個のように見ると北韓が改革と開放を決心したと見る理由がわかる。
 外貨政策も同じだと見るべきだ。北韓は外貨を管理する方式が南韓と違う。ドルが入ってくればカネがあると勘定してレートを計算し、その分だけ紙幣を発券する。銀行にあるドルは国家で貿易をするのに使い、その分の貨幣を新たに発券して月給を出すなど、予算に使う。ウォンが入ってきたと仮定して使うのだ。または貨幣を発券する代わりに手形を発行することもある。
 しかし個のようなことが長い間続くと市中の通貨量は確実に増える。預金に基づいて手形を発行すればそのような問題はあり得ないが、人民は預金を信じていないので家に現金を貯めておく。根拠のない状況で通貨量が増えるためインフレになる。今回市中でドルを直接使えなくした。無条件換金して使うようにということだ。これも通貨量をコントロールするという意図によるものだ。すべての商店でドルをそのまま使う状況で開放すれば、国家がそれを掌握できなくなる。個人がそのまま使っていたのを正常な外貨流通システムに換えようと言うことだ」
 
ニュースを伝える人々
 
▲北韓当局が市場を閉鎖したものの、後遺症が深刻なので再び開けたという報道もあったが。
 
 「最初から市場を完全に閉鎖するというのは不可能だ。閉鎖というよりは貨幣改革のために打撃を受けた金持ちたちが商売をするために出てこなかったのが、閉鎖のように見えただけだ。また当局が30~40才は市場で商売してはいけないと言っていた。北韓経済で商売は原則的に職場がない高齢者に職場を与えるという概念に近かった。しかし職場で働くより商売の方が利益が多いので、多くの人が勤務時間に市場に出てきた。そのような状況で古い貨幣を抑えてしまうと新しい貨幣が出る職場に戻るしかない。
もちろんそんな効果が1日にして100%出るはずはない。薬を飲んだからといってすぐに風邪の症状が完全に消えないのと同じだ。しかし長期的に風邪が直るのは間違いない。明らかに通貨経済の健全性は回復するだろう」
 
▲国境地域周辺で内乱が起きて国家安全保衛部がこれを鎮圧するために出動したというニュースもあった。貨幣改革の副作用に関する報道があふれているが---
 
 「ご存じの通り、最近北韓ニュースを主に伝えているインターネット媒体や、団体と連絡を取っている人たちは、主に中国の携帯電話を持つ国境地域の居住者で、彼らの多くは商売や貿易に関係している。言うならば貨幣改革の最も大きな被害者だ。不満を持つしかない状況にあって否定的であるしかない。そうみると1970~80年代、南韓でどれほど多くの騒ぎがあったことか。
 北韓ニュースを伝える人々が、韓国読者が求めるニュースだけを伝える傾向がどんどん強まっている。北韓に対する認識の歪曲がひどくなる原因だ。脱北者も同様だ。講演会やマスコミで聞きたいことばかり話せば、また何度も呼んでくれるのに、わざわざ真実を話す必要があるだろうか。該当分野に専門知識のない人たちはなおさらだ。実際に銀行で決済を上げて、方針を作って、プロジェクトに関与した人たちでソウルに来たのは何人もいないはずだ」(以下次回)