新国立劇場バレエ団「ニューイヤー・バレエ」(12日/13日/14日)の感想 | まるこブログ

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私の先週末を、最高に幸せなものとしてくれた新国立劇場バレエ団「ニューイヤーバレエ」の感想を、やっと書く時間が出来た!

数日が経過してしまったけれど、あの感動はまだまだ冷めぬ…どころか、思い出すほどにまた新たな気付きもある三日間だったので、それを記していこうと思う。



まず初日(12日)。


年末年始に大風邪をひいて、寝込み正月となっていた私だが、寝床でゴホゴホ臥せっている間も、考えることといえば「この体調不良が、ニューイヤーバレエの週でなくて良かった〜〜」というくらい、2019年明けて一番のお楽しみだったのだ!

おかげさまで元気ハツラツ、鑑賞するコンディションは上々で、オペラパレスへと

(実は12日はN響定演のCプログラムと重なっていたんだけれど、新国バレエとN響…となると、バレエを取ってしまう私の代わりに、息子が友人と行ってくれた。聞けばドゥネーヴ指揮N響は素晴らしかったそうで、息子曰く「今まで聴いた“ローマの松”の中で一番感動したかも」ということだったので、それに行けなかったのは残念だったかなぁ…ぼけー N響と新国バレエが重なるのは辛い!!! )



さて…

第1部の【レ・シルフィード】は、主役が小野絢子さんと井澤 駿さんのコンビ。

小野さんはいつも福岡雄大さんとのペアがほとんどなので、井澤 駿さんとは珍しい組み合わせだ。

小野さんは空気のように軽く儚く美しく、井澤さんは非の打ち所なくノーブル…だったのだが、なんというか、何も起こらないステージだった。

いや、もちろん素晴らしかった!

細田千晶さんと寺田亜沙子さんそれぞれのソロも見事だったし、コール・ド・バレエの完璧なことと言ったら喩えようもなかったのだ。

しかし、申し訳ないけれど、小野さんと井澤さんの間には、なんの関係性も見えなかったから、それが私にはつまらなかった。(最終日の14日はかなり違っていたので、あくまでも12日の感想ですキラキラ

そもそも、ショパンのピアノ作品は、管弦楽に編曲すると、だいたい失敗する。

ショパンが作り出した甘やかな旋律や和声には、ピアノという硬質な響きの楽器が丁度よくマッチして、そこは切っても切り離せないものなんだと思う。

また奏者が隅々まで神経を行き渡らせ、一人で構築するピアノという、実に個人的な世界で演奏されない限り、ショパンの作品は引き立たない。

東フィルの演奏は文句なしに美しかったけれど、ことショパンに関しては、単体のピアノには何者も勝てないのだと、私は思った。

まあ、そうは言っても「レ・シルフィード」はオーケストラ編曲されたもので初演された、それがオリジナルなんだから、いまさらピアノ独奏にするとバレエ作品としての世界観が変わってしまうのだろう。

長年のショパン好きとしては、どうもその…後半のストラヴィンスキー作品と比べて聞き劣りしたことが悔しくてならないのだが、ま…仕方ないですショック



第2部の【火の鳥】は、中村恩恵さん振付による新作だった。

第1部が男性ダンサー1人で、あと全員が女性ダンサーだったのと反転し、こちらは女性ダンサー1人に他は全て男性だ。

12日の紅一点は米沢 唯さんで、少年のような衣装にショートヘアが似合い、とてもピュアで可愛らしい。

反乱軍のリーダー役の福岡雄大さんは、こういうワイルドな役がよく似合い、キレキレのダンスが本当に格好良かった。

対抗する王子役は、これぞ当たり役の井澤 駿さんで、第1部の詩人役とは人が違って見えるほど輝いていた。

そして火の鳥役の木下嘉人さんには、大きな存在感があった。

他、反乱軍の兵士たちも黒子役も、新国立劇場バレエ団きっての実力派ダンサーが顔を揃え、舞台のどこを見ればよいか迷うほど、誰もかれもが素晴らしかった。

音楽は、言わずと知れたストラヴィンスキーの名作で、マーティン・イェーツ指揮の東京フィルハーモニー交響楽団の演奏も冴え渡り、それだけでも大満足という贅沢さ。

お馴染みのフォーキン振付ではなく、今回は中村恩恵さんによる、全く別のストーリー「火の鳥」だったが、これは賛否両論あるだろうけれど、私は好きだった。

実は正直なところ初日は「ん??」という理解が及ばない場面も多く、幕切れに至っては「?」しかなかったのだが、それでもこれだけダンサーの魅力を存分に届けてくれる舞台は、好きにならずにはいられなかった。



第3部の【ペトルーシュカ】は、バレエ団の総力をあげた豪華なステージだったが、最終的にはタイトルロールを演じた奥村康祐さんに、あらゆる感動が掻っ攫われた。

ペトルーシュカは、今後、奥村康祐さんを語る際に外せない代表作となったと思う。

奥村さんは、王子役もいいけれど、どちらかというと井澤 駿さんと同じで、独特のキャラクターを創り一人で踊った方が、何倍も輝く人なんだと思う。

その真骨頂がペトルーシュカで、いやもうこれには感動が押し寄せすぎて、しばらく自分の気持ちが整理できなかった。

とにかく12日の段階では、この奥村康祐さんを、あと2回観ることができる幸せを噛みしめ、家路についたのだった。



翌日、13日。



この日は、昨年11月に心臓の大手術をした父も一緒で、オペラパレスへはタクシーで向かった。

実は父のチケットは14日のものだったのだが、諸事情で13日に変更した為、タクシーの車内でもホールに着いてからも、「え? 今日は小野絢子さんが出ないの? 米沢 唯さんも出ないの? なんで? がっかりだなあー」ばかり聞かされたねー

特に父は小野絢子さんの大ファンなので、彼女が主演の日でないと落胆著しいから困る…笑い泣き

まだ身体が本調子でないのに外出してきているわけだから、このままガッカリして家に帰すわけにはいかないが、層の厚い新国立劇場バレエ団のステージを観れば、両プリマが不在であっても、きっと満足してくれるだろう!!…と、私は祈った。



第1部の【レ・シルフィード】は、主役が木村優里さんと渡邊峻郁さんに変わるのみで、あとの配役は全て前日と同じ。

木村優里ちゃんは、なんといっても私のイチオシであり、次世代の新国バレエ看板プリマであり(個人的には既にそうだと思ってる!!)、そんな彼女が、共に踊るたびに「胸キューン」を実現してくれる渡邊峻郁さんと踊るのは、13日の演目中最大のお楽しみだった。

その期待は裏切られず、やはりこの木村渡邊ペアは素晴らしい。

二人で踊る関係性が見えるし、そこに「詩」が生まれる。

ピアノでないショパンは、どうしたってダサくなるけれども、編曲の芋っぽさを、東フィルが最大限にカバーして演奏されているのには、別の意味で感動した。



第2部の【火の鳥】は、娘の役が五月女 遥さん。

その五月女さんが、息を呑むほど素晴らしかった。

前日の米沢さんは、もちろん見事だったが、この役に関しては、私の目に五月女 遥さんが圧勝だった。

初日に頭の中を駆け巡った「?」の答えが、五月女さんのパフォーマンスには全てあり、納得させられた。

こんなに素晴らしいダンサーが、普段の公演では主役でなく脇を固めることが多い、それが新国立劇場バレエ団の凄さなのだと改めて思った。

この層の厚さはどうだろう?!

そして、なんと勿体ないことをしてるのだろうか?


中村恩恵さん振付の【火の鳥】は、まさに今の世界情勢を描いてリアルだった。

火の鳥の赤い羽根に象徴される「権力」を巡り、人間の正義がいかに明暗併せ持つ多面的なものであるかを描き、更に「女性」という性がもつ「弱さと強さ」をえぐって見せていた。

ことにこの「女性」の強弱と明暗の表現が、五月女さんのそれは観ているこちらの身体が震えるほど明確だった。

凄いダンサーだし、表現者である彼女の、今後の活躍を、私はもっともっと観たい!



第3部の【ペトルーシュカ】では、奥村康祐さんは当然として、街の群衆場面での様々なダンサーにも見惚れる。

なにしろ後ろで立ち歩くエキストラ的な役で、スター級の木村優里ちゃんが出演しているわけだから、バレエ団の総力と言っていいだろう!

レ・シルフィードで軽やかな妖精さんだった女性陣も、こちらではロシアの街を闊歩するおネエさんやオバちゃんを生き生きと演じているし、長身の男性ダンサーは胴回りに肉布団?を巻いて、ガタイのいいニイちゃんになっているウインク

昔々の日本のバレエ団公演では、主役は良くても、その他大勢の演技が態とらしいか棒立ちかのどちらかで、見てるこっちが恥ずかしくなったものだけれど、そんなのは大昔もいいとこだ!!

【ペトルーシュカ】の群衆たちの演技の自然さ、そして盛り上がりは、世界のどこにも見劣りしない一流のもので、それを眺めている時間の幸せなことといったら!

目立ったダンサーとしては、街の踊り子役で登場した柴山紗帆さんと奥田花純さんで、私は特に、柴山紗帆さんのキュートさにビックリさせられた。

柴山紗帆さんのことは、以前にもブログで散々に言った気がするんだけれど、こんなに魅力的で可愛いダンサーだったのだと、やっと分からせて貰った気がする。

次の「ラ・バヤデール」で、柴山さんはニキヤに配役されており、その相手役のソロルが渡邊峻郁さんなものだから、渡邊さんときたら木村優里ちゃんでなきゃと思うばかりに、柴山さんのニキヤを「ガッカリ」などと言ってきたけれど、いや、これは違うよ!と考えを改め、かなり反省したのだ。

私の目が盲目だったのか、柴山紗帆さんが進化されたのか、そのどちらもなのか、とにかく「ラ・バヤデール」での柴山さんが楽しみだラブラブ

きっと、いや絶対に素敵だと思う。

良かった〜〜その日のチケットも買っておいてーゲラゲラ



ところで、「小野絢子さんが出てなくてガッカリ」を連呼していた父だが、今回「ペトルーシュカ」でバレリーナを踊った池田理沙子さんのことが、新たに「大のお気に入り」になり、ご機嫌で帰宅することができたぽってりフラワー

「池田さんは可愛いね」とも「踊りも上手いね」とも絶賛尽きず。

ちなみに父は、私の大好きな木村優里ちゃんは「好みではない」そうで、そんな様々な観客の「好き」に応える、懐の広いバレエ団ということなのだと再認識した次第だ。




最終日の14日。


ダンサーの配役は初日と同じだったが、全ての演目において、初日より更に練られたステージが拝見できたと思う。

第1部の【レ・シルフィード】では、初日に「何のつもりで踊ってるんだろう?」なんて感じた井澤 駿さんが、ちゃんと「詩人」に、小野絢子さんともしっくりして見えた。

絢子姫の素晴らしさは、言うまでもないところで、確かにこのステージを観られなかった父は可哀想だったなぁ…と思ったキラキラ


第2部【火の鳥】は、米沢 唯さんには米沢さんならではの個性があり、彼女の輝きを観る満足は大きかった。

観終わってから胸に棘が刺さったままで、決して後味の良い作品ではないけれど、この中村恩恵版「火の鳥」は再演して欲しい。


第3部【ペトルーシュカ】は、奥村康祐さんが倒れて「人形」と入れ替わっても、それが本当に人形なのか疑ってしまうほどで、つまりそれは、人形の出来が良いのもあるけれど、いや、その前から奥村さんが人形そのものだったのだ。

しかもその人形には魂があり、恋もすれば、悲しみも孤独もあり、周囲を取り囲む「人間」たちと変わらぬ存在だった。

ただ人間には体温のある肉体があるけれど、人形にあるのは「魂」だけなのだ。

奥村さんのペトルーシュカに、人間のような肉体は無かった。

でも真ん中に、熱く燃える「魂」があり、それが透けて見える迫力たるや…


【ペトルーシュカ】も、ぜひとも再演して欲しい。

奥村康祐さんの渾身の踊り、まだ脳裏から消えないです。

たぶんずっと、どこのペトルーシュカ公演を観ても、思い出すでしょう。







 【レ・シルフィード】

ノクターン

小野絢子、井澤 駿 (12日/14日)

木村優里、渡邊峻郁(13日)

細田千晶、寺田亜沙子

増田裕子、廣田奈々、飯野萌子、川口 藍、玉井るい、

中田実里、広瀬 碧、若生 愛、朝枝尚子、今村美由起、

加藤朋子、北村香菜恵、木村優子、小村美沙、

関 晶帆、原田舞子、土方萌花、廣川みくり、

山田歌子、横山柊子 

ワルツ

寺田亜沙子 

マズルカ

細田千晶 

マズルカ

井澤 駿 

プレリュード

小野絢子 

パ・ド・ドゥ

小野絢子、井澤 駿 

華麗なる大円舞曲

全員 


【火の鳥】

火の鳥:木下嘉人 

娘:米沢 唯(12日/14日)

       五月女 遥(13日)

リーダー:福岡雄大 

王子:井澤 駿 

黒衣:渡邊峻郁、趙 載範、福田紘矢 

反乱軍:福田圭吾、宇賀大将、小野寺 雄、髙橋一輝、佐野和輝、中島瑞生、渡邊拓朗 


【ペトルーシュカ】

ペトルーシュカ:奥村康祐 

バレリーナ:池田理沙子 

ムーア人:中家正博 

見世物小屋の親方:貝川鐵夫 

街の踊り子:奥田花純、柴山紗帆 

若い商人:小柴富久修 

2人のジプシー:渡辺与布、横山柊子 

乳母:寺井七海、赤井綾乃、稲村志穂里、菊地飛和、北村香菜恵、木村優子、清水理那、関 優奈、守屋朋子

皇室の御者:中島駿野 

4人の御者:大田寛仁、小川尚宏、樋口 響、渡邊拓朗 

2人の馬丁:井澤 諒、渡部義紀 

悪魔の仮装:速水渉悟 

日本ジュニアバレヱ(交代出演:大熊美里、新貝美咲子、立川祥南、浪崎杏樹)   



管弦楽:東京フィルハーモニー交響楽団 

指揮:マーティン・イェーツ 

ピアノ:岡本知也(火の鳥・ペトルーシュカ)