面接で何度も人柄の良さを強調して頂けた。曰わく顔立ちを見ると分かるとの事であった。まア確かに自分の顔を分類するなら優男と云えるだろう。しかし其れにしても面映ゆい思いをした。
そう云った事も含め手応えは十全な物だった。が、余り喜ばないで置こう。所詮合否は私が決める事ではない。
ただ、誉められたられなかったは無関係に、人生で最も楽しい面接だった。殆ど雑談ばかりで、又内容も占いから新産業まで幅広く、将来上司としてよりも歳の離れた友人として近付きたい方々だった。

所で中食を食べた店が美味かったので紹介する。
南海湊駅から海側に少し行った所の「晴一」と云ううどん屋だ。正確には「うろん」と表記してゐた。
此処で天丼とざるうろんの定食を食べた。
天麩羅は海老二匹、南京一切れ、獅子唐一本、茄子が大き目の一切れ、紫蘇一枚、薩摩芋一かけであった。カウンタ式の席しかなく、しかし目前で揚げられた熱い天麩羅を食えるのは食欲増進である。タレと云うか出汁も白飯全てに味を付けるに過不足無き量でexcellentだった。
うろんは勿論旨い。数年振りに鶉の卵を食べた。カレーうろんが名物らしいのだが、白シャツを着てゐたのと余計な汗をかきたくないのとで止した。
二次面接迄受けし企業より落選の報が来た。此が昨日の事也。
一時の遣る瀬無い怒りに任せ真っ二つに破り棄てた。
今日は又違う企業で二次面接を受けた。
集団面接の筈が一人で受ける事と成りて心細く覚えしも、前回に比して明快に応えた。
もし落ちたとして、其れはもう留年の他に原因は有りはしないと諦められる程十全であった。
朝寝坊し、午前中の説明会は急遽辞めたけれども、其の分起床せし後は企業や業界に就き良く調べた。其の事が自信に繋がり堂々と受ける事を助けたに違い無い。加えて、彼女の声を聞き、メールの遣り取りして行ったから緊張も幾らかは取れたのだろう。考えるに、今迄面接と云えば、其の日初めて口を開く機会でもあり、一旦何か喋る必要があったやも知れぬ。
せめて最終面接へ招かれればと願う。


しかし今日の最も心象の強い出来事とは他の事だ。
久し振りに(と云うにはそうも長く離れてゐないが)彼女と会えたのだった。
彼女を眼前にし感じたのは、喜びより落ち着きだった。

漁師は七つの海を巡り、兵士は異国の大地へ立ち、燕は北へと帰り行く。旅立つ者には何らかの取得のイメージを持ち、残された者には等しく喪失の印象を受ける。ほんの一週間が余り長くて詩情すら浮かぶ始末だ。
お帰りなさい。
社会へ順当に出た友人に誘われて夕食を食べに行った。久方振りに酒を飲みたく成ってゐたので計られたかの様なタイミングだった。夕方頃、面接を終えて以降急に麦酒が脳裡にちらついてゐた。実の所帰りて直ぐに冷蔵庫から発泡酒を出して飲んでさえゐた。其処へ連絡が来て、スーツも脱がずに家を出たのだった。
居酒屋で飲みながら食事をし又談笑してゐたのだが、酔いが回るのが昔に比べて早く成ってゐるのに気が付いた。余り飲まなく成ったので、慣れが失せたのだろうか。
彼と話してゐて、自然彼の働きや会社の事等を聞く事に成った。彼は露悪ぶってはゐるけれども性根の悪い奴ではないから、嫌味な喋り口ではなかった、けれども、一寸僻んだ様な気持ちが湧きもした。今頃どう思っても仕方のない事とは承知してゐるけれども…。

所で彼と居酒屋へ行く前に見た事も無い船来の煙草がコンビニで売ってゐたので手に入れた。始めは葉巻かとも思ったが、タール数六ミリの好みの味のする煙草であった。
BOHEM CIGAR NO.6(ボヘーム シガー)と云う此れは、今調べて見ると、韓国からの品である様だ。中南海とガラムを除いてアジア諸国の煙草と云うのを知らなかった。セブンスターを始め、日本の煙草が受け容れられてゐるのは知ってゐたが、煙草の味わいの方面ですら、彼の国の追い上げる勢いの凄い事に驚きである。
私は可成り気に入った。雑味の少ないJPSに味は近いかも知れない。

家へ再び帰ると、注文してゐたmicroSDが届いて置いて有った。
其処で早速携帯電話に挿して、写真やメールのデータを複写した。此れを機として、彼女の写真のフォルダ分けを細かくした。彼女が一人だったり、私と共にであったりする人物の写真と、彼女が作り或いは一緒に食べに行った食事や菓子の写真と、彼女から貰い若しくは並んで見た風景等の写真と、最後に加えて彼女の創作の写真とで、四つも分けた。斯うする事で、彼女の顔だけを見たい気持ちや、其々に対応した気持ちを適切に満たす事が出来る。
選り分けながら彼女の写真を見直すに、矢張り彼女の笑顔と横顔とに一等恋慕を感じることが分かった。寂しく成る様な予感がして近頃余り見はしなかったけれども、そんな事は一切が杞憂であって、見ると何か緊張した心が緩められる心持ちがした。斯うもほっとしたのは、振り返って見ると久し振りの事かも知れなかった。

随分の写真等々をコピィした積もりであったのに、未だ三十三倍もの容量が残ってゐて余裕が有る。どんどんとファイルを増やそうと思った。
今日は彼女と電話出来た。
彼女が確実に「大人」の域に達しつつある事が分かった。いや、彼女の元来持ってゐた「大人性」が伸びたのか。
話を聞きながら、ずっと凄いと思ってゐた。
我が身を省みて、少し、焦った。
今日は朝、其れなりに早く起きて昼前迄過ごせたが、体が少しだるいのと胃の辺りが重かったので、風邪の引き始めが体調を乱れさせてゐるのかと思い、休養するべく昼寝を取った。起きてからは体調も好転し、二切れ切った巻き寿司を摘まんで大学へ行った。

何と、先週確かにノートに書き付けた筈なのに、大学へ着くまで休講と云う事を忘れてゐた。
其れでも折角来たのだからと、構内へ入った所でサークルの後輩達に会い、久闊を叙した。尤も、長くても三ヶ月振り位なので、懐かしさで一杯と云う程ではなかったけれども。唯、其れでも彼等と近況に就いて話す等出来て楽しかった。短い間ながらも、まるで四回生時分の如き気持ちに成れた。

其の後、友人から連絡が有って、暇だから自動車にて何処か当ても無く走ろうと云うので、折角だから乗せて貰う事にした。
彼を待つ間、大学の周りを後輩と散歩しながら如何にも町の煙草屋と云った風情の煙草屋を探して回った。と云うのも此の間、梅田の煙草屋にて廃止銘柄が無いか質した所、余程の田舎へでも行かなければ手に入らないと云われ、ならばと余り流行ってはゐなさそうな、住宅街中の小さな店を探したのだった。
全て吸いたい銘柄が揃った訳ではないのが、其れでも目標の半分は手に入れる事が出来た。アメーバなうにも書いた、キャメルとキャビンプレステージの二銘柄である。此れ等は大切に大切に吸おうと思う。

結局、友人と合流して、街を無目的に一巡した。

今日は目まぐるしい一日だった。
此れは此れとして楽しかったけれども、彼女からのメールに気付く事も出来なかったし、普通の日に、彼女と普通に遣り取り出来ればとも思った。
其れは誓って本当で、彼女程は忙しくないかも知れないが、其れでも日々何かしら遣り掛けてゐる中で、彼女の事を思う時間だけが際立って私を慰めるからである。
又明日以降に期待しよう。

明日は面接へ行く。早起きしなければ。そして、彼女からの贈り物であるネクタイを締めて、元気一杯で企業へ向かう事にしよう。ネクタイを締める事を考えるだけで元気付けられる。思い入れには大きな力がある様だ。
髪を切った。随分と短い髪に成った。
髪を切られながら、美容師とこんな話をした。
「髪切られるのって緊張するんですよね。慣れないんですよねー」
「そうなんすか?」
「だって、髪切に来るのって、数ヶ月にいっぺんじゃないですか」
「確かにねー。二ヶ月に一度としても、年六回すね」
「ですよね。まだ面接の方が受けてるって話ですよ!」
何故斯うも緊張し、切りに行く事を考えるだけで気が重く成るのだろうか。何故、慣れないのだろうか。少しく考えて見るに、二つの答えが浮かんだ。一つは、鏡を見続けなければ成らないから。もう一つは、背後に立たれたままで美容師とコミュニケーションを取る必要が有るからだ。普段此の様な事は絶対に無い。もっと短い時間ならば有るとしても、凡そ一時間もああ云った姿勢を取る事は無い。其の癖、美容師とはまるで対面でコミュニケーションを取ってゐるような感覚で話さなければ成らないと云う強迫が在るので、其れが緊張を起こしてゐるのだろう。

最後に髪型を整えられてから次の事を言われた。
「お客さん、スーツ着てるし斯う云う髪型するともう働いてるみたいですね」
「それめっちゃ言われますー」
そう。言われるのである。思い付くだけでもう三度目だ。此の二ヶ月程で。
何がそう見せるのだろうか。そんなに老けてゐる積もりは無いのだが。
テレビ曲のスタッフも、クレジットカードのキャンペーンガールも、美容師も揃いも揃って何だ。見る目無いな、と、瞳を潤ませながら書く夜であった。綺麗に月が霞んでゐる…。
今日から何が在っても毎日日記を書く事を目指す。以って彼女の慰問と成れば良いのだが。


昼ごろ外へ出て、大学へと向かった。バス停でバスを待ってゐると、自動車の運転手に手を振って挨拶をされた。誰かと思い良く見ると、近所に住む友達だった。
彼の車で駅まで送って貰った。
道すがら彼が髪を切りに行くと云うので付いて行きたかったが、大学へ行く用事を優先した。
散髪はならなかったが、お陰でエントリーシートを殆ど大学で書き終わったので、良かったと思う。
其のエントリーシートは帰宅して後、全て書き終える事が出来た。後は証明写真を用意するのみである。


所で、気に成る事に、外へ出て以降、体が熱っぽい。
又、皮膚が鋭敏と成りて服を着てゐるのも煩わしい。
経験上、此の様な感覚は、風邪の予兆である。
明日より何とも無く過ごしたいのだが。今週は幾つか面接も入ってゐる。
湯冷めと夜更かしには注意する事にする。
TV番組「金曜ロードショー」で、ウィル・スミス主演「幸せのちから」を観た。

スミス演じる主人公は妻と子との三人でロスの下町に住んでゐる。医療器具セールスの仕事は上手くいかず、妻と共働きでも貧乏からは抜け出せない。夫婦の諍いが高じて妻は家出。強引に息子を手元に残した主人公は、借家を追い出されながらも、転職のチャンスを物にしようと証券会社の研修に打ち込むのだった。廿人の研修生の中から、雇用されるのは唯一人。果たして彼は人生を遣り直せるのだろうか。

と云う様な荒筋。

将来性が有ると見込んでセールスを始めるが上手くいかない、と云う「希望通りに成らない」状況を我が身の其れと重ね合わせ、子の見てゐる前で両親が喧嘩する描写の生々しさに我が家を重ねて、兎に角前半を見るのは辛かった。
前者に関しては、今は、どの様な失敗の仕方を見ても、慢心から留年をした私の境遇に重ねて仕舞う。だから、主人公の焦り方が実にリアルに想像出来て仕舞う。「こうなる筈だった」「何故上手く行かない?」「今すぐに結果が欲しい」「この、チャンスを、摑み取らなければ」と云う様な。
又後者にしても、我が家は斯うしてブログが書ける位には不自由のない生活をしてゐるけれども、昔から兄妹で何かをねだるような事はしない程度に抑圧的な家庭環境だった。加えて私も斯うして大人に成って様々な世界を覗くに連れ、金が無い事の切実さと云うのは可成り分かって来た。究極的な貧乏を経ずしても、彼等家族の様な出口の無い感じと云うのは、想起するだけで居心地が悪く成る程実際的だ。

しかし、主人公が、無給で、加えてシングル・ファザーと云うハンディを背負いながらも、必至で努力する姿に勇気付けられた。彼は、テレフォン・アポイントの実習の中で受話器を電話に戻さず一日に八分を節約し、水を飲むのを我慢して便所に立つ事すら止める。しかし営業用の笑顔は忘れないし、上司と話す時はユーモアも忘れない。
其れだけのガッツを私は果たして発揮したか。絶えずチャンスが目の前に転がって来ると云うのに(書類選考の合格率は昨年の比ではない。面接へ行ける機会は実に増えた)、真剣に対策して面接へ行った事はあるのか。先日も注意されたが、本当に選考を受ける会社に就職したいならもっともっと会社の情報を収集する位はするべきなのである。
手洗いに行く時間を節約する程の切迫は流石に感じないけれども、好機を手中にしたいなら、せめて後二倍三倍の手間を掛けて事に当たるべきだ。


最後に、セリフを引用。映画の引用をしていらした、ブログ「恋する英語」様から更に英文だけ、引用する

Chris : You got a dream, you gotta protect it. People can’t do something themselves, they wanna tell you you can’t do it.
If you want something, go get it. Period.

主人公「夢がある、其れは守らなくてはいけないよ。何も出来ぬ人々、彼らはお前(息子)にお前じゃ叶えられないといいたがるだろう」「けど何かをやりたいなら、やりにいくんだ。俺の話は此れだけだ」