Jin side 30-1.
ヌナの闇が。
僕への愛の深さと比例しているのならば。
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『それでね、ジンと一緒に住めないかなって』
『え...?』
一緒に...住む...
『ジンといると、ほら夜中にね...起きてないみたいなの。次の日に傷が増えてないから。でも、たまに一人になると...また傷が増えてて』
ヌナ...
それは...
『もちろんっ...自分自身で克服しなきゃって思いの方が強いの。私の問題だから。だけど...だけどね。ジンといるとすごく安心するの。ジンがそばにいてくれたら、私...』
『ごめんっ...』
思わず、出てしまった言葉。
『...ちょっと考えさせてもらってもいいかな』
『あっ...もちろんっ...もちろんだよ!急にこんなこと言ってごめんっ...でもっ...』
分かってる。
ヌナの言いたいことは痛いほど分かってるんだ。
『私たち...ずっとこのままかな?その...タイムリープが終わったらって約束...』
目に見えて傷の減った、細い指が壁を指差す。
僕の書いた、誓約書。
ヌナと一緒にいたくて、ヌナの「未来」を繋ぎ止めた。
一緒になる。
ヌナと幸せになる約束。
『そっ...そうだよ!』
だけど、ごめん。
『ヌナ、そこは僕に花を持たせて欲しかったんだよなぁ』
「えっ...えええっ!!?あっ!違う違うっ!」
ヌナ、ごめん。
『私の...その...まだ夜のこともあるし、急いではないの。さっきの、プロポーズしたわけじゃないからっ...』
小さくなって肩を窄めるヌナを抱きしめた。
『ヌナ、大好きだよ』
この気持ちに偽りは一片もない。
『ジン、大好き』
でもね。
僕、いま逃げたんだ。
壁に佇む、ペンのインクが色褪せた誓約書を見て心臓が鈍く跳ねた。
つづく→