53.
二人のためになると信じて。
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『それでね、ジンと一緒に住めないかなって』
『え...?』
ジンが私の家に来て、一緒に眠ってくれるようになって2ヶ月。
『ジンといると、ほら夜中にね...起きてないみたいなの。次の日に傷が増えてないから。でも、たまに一人になると...また傷が増えてて』
ジンの仕事の都合で会えない夜もある。
でも、ジンが私の元へ足を運んでくれた回数は、タイムリープ中のデートのそれをはるかに上回っていた。
『もちろんっ...自分自身で克服しなきゃって思いの方が強いの。私の問題だから。だけど...だけどね。ジンといるとすごく安心するの。ジンがそばにいてくれたら、私...』
『ごめんっ...』
あっ...
『...ちょっと考えさせてもらってもいいかな』
どうしよう。
ダメだった...?
『あっ...もちろんっ...もちろんだよ!急にこんなこと言ってごめんっ...でもっ...』
でもね。
ジン、困らせると思うけど。
話の続きを聞いてほしい。
『私たち...ずっとこのままかな?その...タイムリープが終わったらって約束...』
恐る恐る、西日の当たる壁を指差す。
ジンの書いた誓約書。
タイムリープ前に、「未来」を約束した誓約書だ。
一緒になる。
ジンと幸せになる。
沈黙が長く感じるのは、これが私のわがままだと、心の底では分かっているからかもしれない。
『そっ...そうだよ!』
え...
『ヌナ、そこは僕に花を持たせて欲しかったんだよなぁ』
ジンは、まだ寝癖がついたままの艶やかな髪をボサボサと掻いた。
「えっ...えええっ!!?あっ!違う違うっ!」
私、ダメじゃん。
いくら年上だからって、こんなことまでリードする必要なかったんだ...
『私の...その...まだ夜のこともあるし、急いではないの。さっきの、プロポーズしたわけじゃないからっ...』
恥ずかしい!
カッコ悪い!
消えてしまいたいっ...
俯く私の隣に座り直したジンが、肩を抱いてくれる。
『ヌナ、大好きだよ』
私だって。
『ジン、大好き』
今夜も。
一緒にいてくれるんだよね。