53.


二人のためになると信じて。


*******


『それでね、ジンと一緒に住めないかなって』


『え...?』


ジンが私の家に来て、一緒に眠ってくれるようになって2ヶ月。


『ジンといると、ほら夜中にね...起きてないみたいなの。次の日に傷が増えてないから。でも、たまに一人になると...また傷が増えてて』


ジンの仕事の都合で会えない夜もある。

でも、ジンが私の元へ足を運んでくれた回数は、タイムリープ中のデートのそれをはるかに上回っていた。


『もちろんっ...自分自身で克服しなきゃって思いの方が強いの。私の問題だから。だけど...だけどね。ジンといるとすごく安心するの。ジンがそばにいてくれたら、私...』


『ごめんっ...』


あっ...


『...ちょっと考えさせてもらってもいいかな』


どうしよう。

ダメだった...?


『あっ...もちろんっ...もちろんだよ!急にこんなこと言ってごめんっ...でもっ...』


でもね。

ジン、困らせると思うけど。

話の続きを聞いてほしい。


『私たち...ずっとこのままかな?その...タイムリープが終わったらって約束...』


恐る恐る、西日の当たる壁を指差す。


ジンの書いた誓約書。

タイムリープ前に、「未来」を約束した誓約書だ。


一緒になる。

ジンと幸せになる。



沈黙が長く感じるのは、これが私のわがままだと、心の底では分かっているからかもしれない。



『そっ...そうだよ!』


え...


『ヌナ、そこは僕に花を持たせて欲しかったんだよなぁ』


ジンは、まだ寝癖がついたままの艶やかな髪をボサボサと掻いた。


「えっ...えええっ!!?あっ!違う違うっ!」


私、ダメじゃん。

いくら年上だからって、こんなことまでリードする必要なかったんだ...


『私の...その...まだ夜のこともあるし、急いではないの。さっきの、プロポーズしたわけじゃないからっ...』


恥ずかしい!

カッコ悪い!

消えてしまいたいっ...


俯く私の隣に座り直したジンが、肩を抱いてくれる。


『ヌナ、大好きだよ』


私だって。


『ジン、大好き』


今夜も。

一緒にいてくれるんだよね。