Jin side 28-3.
→つづき
「ジン...ごめんなさい...」
『ヌナ、悪いのは僕だ。ヌナは何も悪くない。だから謝らないで』
声が掠(かす)れて、声にならない。
ヌナの手を取り、きゅっ、と握る。
すると、ヌナが優しく握り返してくれた。
「ジン...もう...帰ってきたのね...」
そう呟くと、ヌナの涙は瞬く間に干上がり、自らベッドへと横になった。
え...?
これが...正解...?
本当に...?
さっきまでが、まるでひとときの悪夢だったみたいに。
目の前に、穏やかに眠るヌナがいる。
これが、夜間せん妄。
今までは止める人がいなかったから。
ヌナ独りだったから。
この小さな手で、僕の部屋のドアをずっと...
傷の残る手を改めて握り返した。
僕がきれいに治してあげなきゃ。
ヌナのこの手に、僕なんかのことで傷を残しちゃいけない。
次に、いつ同じことがあるか分からない。
このまま、ヌナを見守っておこう。
もし、またさっきみたいなことになれば。
手を握ってあげればいいんだよね?
*******
「ジンッ!」
まだ太陽が街を照らし出す前。
ヌナは目を覚ました。
『ヌナ、おはよう。目覚めたて一番で名前を呼ばれるなんて、照れるね?』
結局、この晩は、あの一度だけ起き上がっただけだった。
一晩中起きているくらい、どうってことない。
『ヌナ、抱きしめてもいい?』
僕が、ヌナを守るんだ。