51-2.


→つづき


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バスルームで乾かしていた服を着て、髪を整える。

残業用の夜食を買いに出ただけだったから、メイクはできない。


「この歳でスッピンで街歩くってなぁ...」


幸い、顔色はいい。

ジンと一緒に眠れたから、だろうか。


「私、眠れたんだ...」


鏡に映る自分を見て、幸せそうだ、と素直に思えた。


『ヌナ、トースト買ってきたよ』


この街の朝は早いようで、ジンが朝食を調達してきてくれた。


『昨日の夜は結局何も食べなかったもんね。さぁ食べよ』


私が買っていた、なけなしのキンパは、雨でこてんぱんにやられてしまっていた。


トーストを頬張るジンは、相変わらず美しかったが。


『ジン、顔色あんまり良くない気がする。昨日の雨で体調崩したんじゃない?』


ジンの頬に手を当てて体温を確認すると、その上からジンが手を重ねる。


そういや、昨日...

ジンのほっぺ、叩いちゃったよな...

すごく前のことのように感じる。

昨日の夕方からは本当に、長かったから。


『ヌナの手、あったかい。ちっちゃい』


ジンは、自分の大きな手にすっぽり隠れてしまう私の手を離そうとしない。


『ダメ。ちゃんと確認させて』


両手でジンの顔に触れる。

熱はない。

でも、目の下にクマがある。

疲れさせたんだ、きっと。


昨日の私は、随分と好き勝手に振る舞ってしまったから。

ジンは受け止めるのに大変だったのかもしれない。


『ジン、私のせいだね。早く帰って体休めよう』


ソウルまでの帰路をスマホで検索する私の手を、ジンが止めた。


『ねぇ、ヌナ。もう少し二人きりでここにいよ?』


甘い声。

優しく垂れた視線。


今日は土曜日。


スマホの画面を暗転させる。


だって。

誰が嫌だと言える?