東条Side 22-1.
心底腹が立つ。
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『それで...君はなんかあると俺を呼ぶね?なんでそんなに頼られてんのかな?』
『東条さん、ご無沙汰しております...』
彼の方が背が高いのに、こんなに縮こまってる。
今日も今日とて...
一体、何を言い出すんだろうか。
『あっ...あの時は本当すみませんでした。ヌナ、本当は東条さんと約束を』
ん...
今更だけどな...
『うん、そうだね。休日に上司に呼び出された部下を、君はさらって行ったんだ』
...
ちょっと、変な言い方になった。
でも、その通りなんだ。
年甲斐もなくウキウキとカフェへ向かったのに。
白馬の王子様に姫を、滞りなく引き渡した執事のような気分だったから。
『...うまくやれてるはずだろ?瑞上とは』
答えにはおおよそ、予想がついているにも関わらず敢えて聞く真似をした。
『ヌナとは...うまくいっていないと、思います...』
彼側も、そう認識しているんだな。
『ヌナの気持ちを聞くのが怖いんです。一旦離れて、また一緒になって。それがヌナとの合意の上だったかと言われると、きちんと確認していないというか』
『なんで?』
あんな風に、俺から瑞上を連れ去ったのに。
俺は。
自分で出来なかったことを。
瑞上を幸せにすることを、君に託したのに。
『なんで?あいつとは想い合ってるんでしょう?』
二人は想い合ってる。
そうに違いないと思い込みたい弱い心に、煙が立ち上る。
『...仲間に言われるんです。ヌナの気持ちを第一に、焦るな、ゆっくり、って。だけど僕は一日でも早く取り戻したい。あの頃のヌナと僕に戻りたいんです』
火のないところに煙は立たない。
早く。
この火を消さなければ。
『まぁ...俺には関係ないから。瑞上の担当する研究に支障が出ない範囲で、君たちがプライベートを過ごすなら...』
物理的に効果はないが、手元のコーヒーを火消しに大きく含み込む。
『東条さんは...ご存知でしょうか。ヌナの指に、手に傷があって。治りが悪いんです』
カチャン...
なに...?
こいつ、何も知らないのか?
何も知らされてないのか?
なんで...
それを俺に聞く?
つづく→