Jin side27-3.


→つづき



東条さんの深いため息が、僕の足元まで届きそうだ。


『アイツの寝室のドア、見てないのか。血で黒く染まってたよ』


『!』


なに?

ヌナの...部屋...?

そんなこと...


『そんなことっ...なんで、そんなこと東条さんがっ...』


今はヌナを心配しなくちゃいけないのに。

ヌナへの独占欲に、無用な怒りの火が爆ぜた。


『うるせぇ、もう黙れよ』


これ以上、有無を言わせない圧力。

フロアに靴音だけを残し、東条さんの姿は見えなくなっていた。




東条さんはヌナが好きなんだ。

僕のいない間に、二人に何かがあった?


...っっ


違う。

違う、違う!

そんなことよりヌナの体のことを...

ヌナの心のこと...


*******


情けない。

僕は。

僕のために、自分勝手にヌナを愛してるだけじゃないのか。