46-2.


→つづき


瞼を閉じながら横にいるジンが眠ったかどうかを確認するのは難しかった。

ジンの吐息は限りなく一定で、私の鼓動を安定させる。

ジンの体温が冷えた私の心まで温めてくれているようで、なんだか涙が出そうになった。


そのまま自分も眠ってしまうのではないかとビクビクしたが、その心配には及ばなかった。


ジン越しに目に入った、ベッドサイドの時計の針は、もう夜明け近くを指していた。


そうか...


私は、ずっと手に入れたかった最上の安堵の場でも眠れなかった。


ううん。


眠らなくて良かったんだ。

ジンの部屋のドアを私なんかで汚すわけにはいかないんだから。



ジンと再会してもなお。

私は、ジンを探し求める私を制御できないでいる。


もう、ジンは私のそばにいてくれているのに。

私の目を見て、優しく微笑んでくれているのに。


何が足りないのか。

何が必要なのか。


私が私に問いかけても。

答えは一向に出ない。


真夜中の私は、何に取り憑かれているんだろう。




あまりに美しい、その瞳を閉じた顔はタイムリープ試験を思い出させる。


「眠り姫、みたいだって研究所中で持ちきりだったんだよ」


瞼にかかる、柔らかな前髪をそっと選り分ける。


その指にも、私を苦しめる傷が残っていることに冷や汗をかく。




ジンが目覚めるまで、ここで起きて眺めていたっていいんだ。


少し早いけど、静かに朝食の準備を始めるのもいい。


テーブルには昨日読んでいた本があるし、ジンのそばで繰り返し目を通すことも可能だ。


ジンのそばに居続けられる理由はいくつもあるのに。


私には、この場を離れるという極端な答えしか持ち合わせていない。


「ごめんね...」


帰り支度を済ませ、寝室を出る。


玄関で靴を履いていると、先の夜中の出来事が鮮明に蘇る。


ジンが愛おし過ぎて。

そんなジンを苦しめている自分に憤りさえ覚える。




扉をそっと閉めて、一気に駆け出す。

エレベーターに乗った瞬間、私は崩れ落ちた。



ジン。

ジン。

ジン。


愛している。

愛していることになんら変わりない。


ただ。

あの頃とは違う。


ジンが、変わっちゃったから?


ううん。


私が、変わってしまったんだ。