46-1.
応えたいのに、応えられない。
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『ジン、ありがとう!大変勉強になりました。部屋にまでお邪魔してごめんね』
結局、長居してしまった。
何度も時計を確認するチャンスはあったはずなのに。
心地良過ぎて、離れがたくて。
『ねぇ、ヌナ。もう結構遅いよ?終電...行っちゃうんじゃない?』
ごめん、ジン。
電車が行ってしまうのは分かってたんだ。
『あぁ、大丈夫!オルペミバスあるから!』
そして、そんなずるい自分のためにオルペミバスの時刻表を頭に入れておいたことも。
ジンには知られたくない。
なんだか。
計算高い人間になったみたいで嫌だな。
『いや、もう遅いから危ないよ!それなら僕も一緒に乗って送っていく!』
『何言ってんの、ジンがウチまで来ちゃったら帰りに乗るバスもうないよ。本当に大丈夫だから』
優しすぎるよ、ジン。
こんなおばさん、一人で歩いてたって大丈夫なんだからね。
ここでの押し問答を楽しんでいる余裕はあまりない。
バスの時間も迫っているのだ。
とりあえず、玄関から出てしまえば...
ガタンッ!
「!...ジン?」
え...
ドア...ドン...?
『ヌナッ...一緒にいたいっ...』
「え...」
『帰って...ほしくないんだ...』
「どういう...」
『ヌナ。もう二度とヌナのそばから離れないって約束する。ずっと、もっと大切にする。僕がヌナを笑顔にする。泣かせない。守る。その...だから...』
顔を真っ赤にして。
今にも涙が溢れそうで。
あぁ。
こんなにまで。
ジンを追い詰めて。
私は一体。
ジンの何を見てきたんだろう。
何を考えてジンのそばにいることを決めたんだろう。
…….
『分かったよ』
気付けば、ジンの胸の中にいた。
発した言葉の次の行動には、いくつか選択肢があったはずだけど。
心が体を突き動かすとは、こういうことみたいだ。
...あれ。
ジン...固まってる...?
これじゃなかった...!?
『抱きしめて...くれないの?』
我ながら。
ありったけの勇気を絞り出した一分間だった。
つづく→