Jin side 25-1.


好きだから、近付きたい。


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この前、ヌナが図書館へ行くのについて行った時。

特に一生懸命読んでいる本が目に留まった。


僕の部屋にあるものと同じだった。


いや、正しくは。


起業準備のために、実家の父親の書斎から数冊拝借したものの中の一冊だった。


表紙をよく見ると、第三版とある。

売れてるんだな。



「気になるなぁ...」


小さく、だけど何度も唸るヌナに声をかけた。


『どうしたの?』


『うーん、この本ね。第三版なんだけど初版から参考文献変わってて。多分それだと記載研究の方法もちょっと違うんじゃないかなって...』


ヌナは凝り性だ。

気になると、そこから前に進めない。


『ヌナ、その本...』


あ。

ちょっと待て。

僕のは本当に初版だったかな...


『うん?』


『あ、いや。大きい本だなーって思って...』


帰って確認だ。

もし次に図書館に来たときにヌナがこの本をまだ読んでたら。


うちへ誘おう。

僕がご飯を作って、一緒に食べて、ヌナにゆっくり本を読んでもらおう。


出会った頃はよく、そんなことをして穏やかに流れる時間に心委ねていた。


それだけだ。


ただ。

もう少し、近付きたい。


僕がヌナをこれまで以上に大切に思っているってこと。


この気持ちがヌナに伝わったら。

前のように、心を開いてもらえる?


*******


『ヌナ。僕の家でゆっくり読んでよ。夕飯、僕が作るから一緒にたべよう?』


ヌナの瞳がゆっくり見開く。


『あっ...いやっ...さすがに申し訳ないよ!私、持って帰る...』


『...ダメ...かな...?』


思わずヌナの手を掴んでしまった。

これは...

ジミン先生が言ってた「体の距離」

を縮め過ぎることに該当する...?


「ダメ...じゃ...ない...」


ヌナ...

ヌナッ...!


『本当...?』


ヌナの頬を紅く染めているのは夕焼けだけじゃなさそうだ。


つづく→