Jin side 25-1.
好きだから、近付きたい。
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この前、ヌナが図書館へ行くのについて行った時。
特に一生懸命読んでいる本が目に留まった。
僕の部屋にあるものと同じだった。
いや、正しくは。
起業準備のために、実家の父親の書斎から数冊拝借したものの中の一冊だった。
表紙をよく見ると、第三版とある。
売れてるんだな。
「気になるなぁ...」
小さく、だけど何度も唸るヌナに声をかけた。
『どうしたの?』
『うーん、この本ね。第三版なんだけど初版から参考文献変わってて。多分それだと記載研究の方法もちょっと違うんじゃないかなって...』
ヌナは凝り性だ。
気になると、そこから前に進めない。
『ヌナ、その本...』
あ。
ちょっと待て。
僕のは本当に初版だったかな...
『うん?』
『あ、いや。大きい本だなーって思って...』
帰って確認だ。
もし次に図書館に来たときにヌナがこの本をまだ読んでたら。
うちへ誘おう。
僕がご飯を作って、一緒に食べて、ヌナにゆっくり本を読んでもらおう。
出会った頃はよく、そんなことをして穏やかに流れる時間に心委ねていた。
それだけだ。
ただ。
もう少し、近付きたい。
僕がヌナをこれまで以上に大切に思っているってこと。
この気持ちがヌナに伝わったら。
前のように、心を開いてもらえる?
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『ヌナ。僕の家でゆっくり読んでよ。夕飯、僕が作るから一緒にたべよう?』
ヌナの瞳がゆっくり見開く。
『あっ...いやっ...さすがに申し訳ないよ!私、持って帰る...』
『...ダメ...かな...?』
思わずヌナの手を掴んでしまった。
これは...
ジミン先生が言ってた「体の距離」
を縮め過ぎることに該当する...?
「ダメ...じゃ...ない...」
ヌナ...
ヌナッ...!
『本当...?』
ヌナの頬を紅く染めているのは夕焼けだけじゃなさそうだ。
つづく→