43-2.
→つづき
...あぁ当たり前だ。
よく考えたら、先輩が何も知らないはずがないんだ。
あの意識転送は、先輩と所長が執り行ったんだから。
ジンがいつ、どんなふうに「現在」
に帰ってきたかも、ちゃんと知ってて当然なんだ。
浅はかだけど。
ジンの記憶を無くしたことにしちゃってたから。
たとえ、それに気付いたとしても、もう何も聞けなかったんだけど。
「瑞上、すまなかった」
先輩...?
「俺は謝ることしかできない。何もかも全て知った上で、お前に接してきた。責められるのは彼じゃなく、俺だよ」
そんなわけ、ない。
何もかも知った上で、これまで私と一緒にいてくれたなら。
感謝しかないじゃないか。
この感じだと、私の即興記憶喪失劇も、見抜かれてたんだろう。
恥ずかしいな、全く。
「今はまだ混乱してるだろうから、何か聞きたいことが出てきたらいつでも言えよ。俺にはお前に、彼の試験については、事実に基づいて話す義務があるからな」
送られた視線は弱々しくて。
こんな先輩、見たことない。
穏やかな口調に、胸が痛む。
先輩は、いつも。
ちゃんと。
私の手を引いてくれていたんだ。
多分。
もう随分前から。
先輩のためにも。
これから私はジンと、正面から向き合わなきゃ。
もう、ジンを手放すわけにはいかないんだ。
*******
ねぇ。
いつになったら気付くの。
もし問えるなら。
過去の私に一番に伝えたい。
私は忘れていた。
私自身と向き合うことを。