43-1.

「あのっ...日曜は本当にすみませんでした...昨日も研究所休んでしまって」


火曜のランチタイム。

午前終業のベルと共に東条先輩の元へ走った。


「うん。会議室行こう」


私は情けないほどに、ずるかった。

先輩に、逃げ場所を求めてしまった。


そしてあの日。

先輩に背中を押されてから一度も振り返ることなく、ジンとカフェを出てしまった。



会議室に入るや否や、先輩は調光ガラスのスイッチを押した。


「本当に何からお話ししていいのか

...私自身もまだ分からないところもあったりして。ただ、彼が...ジンが過去から帰ってきて、会いにきてくれたってことは確かみたいで...」


先輩のむすっとした顔。

明らかに不機嫌だ。


「いやっ...のろけとかではなく!現実味がなくて、私自身、誰かにきちんと説明してほしいような、もう、うやむやなままにしておきたいような。自分でも自分の気持ちが分からないんです」


「まぁ...座れよ」


顔を上げずに呟く先輩が、怖い。

...座れない。


「それで!先輩に挨拶もなく、カフェを出てしまって、すみませんでしたっ」


勢いよく頭を下げる。

沈黙が、呼吸を忘れさせる。


「いや」


先輩の深いため息が、会議室の床を這う。


「お前は何も悪くないよ」


...え...?


「あの時、お前の気持ちがどんなだか確認もせずに、彼にお前を預けた」


預けた...?


「どこから知りたい?どこまで知りたい?お前が納得するように全部説明するよ」


...!


「先輩、事情をご存知だったんですか...」


つづく→