JIN side 22.


怯える心に、猶予はない。


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TH『ねぇ。そんなことしてヌナに届くの?』


『うわぁっ...覗くなよっ』


東条さんへ、ヌナへの面会を請うメールを、もう何通送っただろう。


返信はない。

もちろん...


ナムジュンの部屋、僕らの集合場所には、みんな隙を見つけては顔を出してくれる。


僕を気遣ってくれてるんだろう。


HS『心当たりないの?ヌナが行きそうな場所とか、通ってた店とか』


行動を起こしていないように見えるんだろう。

ホソクが僕に横目を刺した。 

いつもは楽しくて明るい奴なのに

たまに出るんだ、黒い部分が。


『行ったことあるよ、何度かね。でも気付いたんだ、僕との思い出の場所なんかにヌナが行くはずない、って』


「現在」を振り切って、「過去」を選んだ僕を、ヌナが待っててくれるなんて。

そんなことを信じて疑わなかった。

「過去」の、あの時の僕は本当にバカだ。


YG『もう2ヶ月だろ...いい加減、顔出してみろよ。勤務先にでも、アパートにでも』


楽譜を眺めていたユンギが、痺れを切らしたように舌打ちをする。


『できないよ...研究所はダメだよ、東条さんがいるし。アパートだって、僕なんかがウロウロしてたら変質者扱いされちゃう』


JM『要するに、怖くて行動できないってわけだ』


ジミンの呆れた声には溜息が大いに混じっている。





NJ『ただいまー!いやぁ混んでたわ、あそこのカフェ。まだ朝だってのに』


買い出しに行っていたナムジュンとジョングクが帰ってきた。


JK『何周年だっけ?なんかイベントやってて若者が溢れてた』


『お前も十分若いけど?』


紙袋の中からコーヒーを取り出そうとした時、カフェのロゴが目に留まった。


『え...ここって、もしかして地下鉄3号線の...』


JK『ん?うん、公園前駅のあたり』


ヌナと韓国で初めて待ち合わせた、あの初夏の昼下がり。

このカフェで連絡先を交換したんだ。


ここには、あの一度しか行ったことがなかった。

ヌナと僕は、お互い理由は違えど人目を避けていたから。


NJ『ヒョン?』


鼓動の速さに、気持ちがついていき損ねないように決意する。


JM『ヌナを探しに行く場所、次はここなんだね?』


ジミナ。

心理学の勉強、すごく身についてるじゃないか。