11月23日(金・祝)
第10回浜松国際ピアノコンクール 本選1日目を アクトシティ浜松に聴きに行って参りました。
主目的はもちろん、牛田智大さんの ラフマニノフ協奏曲第2番を聴くこと、しかも国際コンクールの本選で!です!!
正直、この日がこんなに早く来るとは、1年前頃は想像できなかったです。
会場のアクトシティ浜松はどこか異様な熱気に包まれていました。コンクール本選の2日間のチケットは早くに完売!。例年ではまずありえない事だそうです。
このコンクールがモデル舞台となる直木賞受賞人気小説「蜜蜂と遠雷」の人気と、加えてやはり人気の牛田さんが出場するという影響も明らかでしょう。
6年前の浜コンに来ていた牛田さん
第2次予選 演奏中
シューベルト 即興曲 Op 90-3 牛田智大 「Debut」
本選に弾く曲等へのショートメッセージ 牛田さんは 2:22から
本選を弾き終えて 1日目 牛田さんは3:23から
2014年3月 高関さんとの初共演時、リハーサル風景
アクトシティ内は既に長蛇の列、列! 何やら異様な雰囲気。
満席の2500人収容の大ホールに緊張感も走るなか、開演の18時になり、
お一人目 務川慧悟さんの
プロコフィエフ ピアノ協奏曲 第3番 ハ長調 が始まります。
務川さんは、既に海外でも演奏会を経験してる実力派。
第1次~第3次までの演奏を配信でチェックした限り、安定して素晴らしく端正な演奏が印象的でした。
第1楽章から迫力とキレのあるピアニズムを聴かせてくれます。さすがです! 途中オケとのバランスに不安もあるものの、要所ではなかなか迫力があり、第2楽章の万華鏡のような変奏もうまく表現され、第3楽章の終盤からは、本当に見事でそのままフィニッシュ!
割れんばかりの拍手とかなりのブラボー!、スタンディングオベーションする方も見られました。
二人目 安並貴志さん
ブラームス ピアノ協奏曲 第2番 変ロ長調
この作品を生で聴くのは本当に久々です。
4楽章構成の50分ほどある大作。第1楽章、冒頭ホルンソロとピアノアルペジオの柔らかな対話から開始。まもなく情熱的ですが明るい楽想が展開されていきます。畳み掛ける情熱が激しい第2楽章、チェロのソロが美しく抒情的で瞑想的な第3楽章、第4楽章は明るく楽しく、しかし深い思索も含まれます。
ピアノ自体はとても深い音がしますが、大舞台での明らかに緊張で固くなっておられるようで、全曲でミスもかなり目立ったのが残念(スミマセン)。
そしてこの日のラストは我らが牛田さん! ピアノはYAMAHAです。
ラフマニノフ ピアノ協奏曲第2番 ハ短調 Op.18
燕尾服姿で颯爽と登場。前おふたりの登場時より拍手はいっそう熱気を帯びています! 比較的リラックスされてるのか、にこやかな表情で胸に手を当てて一礼。
第1楽章
冒頭の和音群は息を呑むほど美しくコントロールされ、好スタート、情熱的なアルペジオは低音が特に豊か! またどんどん惹きこまれていきます。前のお二人より明らかにピアノが良い意味で鳴ってます。(生では分らなかったですが、配信では終始苦悩を浮かべるように、切ない表情で弾いてますね)早い技巧的な部分もオケの迫力に埋もれる事もなく、とても力強い! そして優しい題2主題などは歌いに歌ってます。楽章の山場、有名なマーチ調部分はもう鳥肌もの! 音量の幅も豊かで超絶テクニックが必要な部分も、全くミスもなく、迫力いっぱいに楽章は幕。
第2楽章 この上なく甘美な楽章。
静かなアルペジオは優しくまろやかで、フルートやクラリネットのメロディを最高に際だたせ絶品。中間部はじめの短調の哀愁も、くり返しを微妙な音色で変えていますね。この部分からずっとタメも入り情熱的に歌ってます。その歌の心地良いこと! 高速フレーズが続く部分は、正確なテクニックでとても鮮やか。そのままヴァイオリンのとろけるような主題再現を支える優しいアルペジオへ。締めくくり部分は絶品のロマンを放ちながら静かに幕。
第3楽章
スリリングで難技巧な主題はテンポがやや遅めですが、ここも情熱的でありながらとても丁寧。第2主題は本当に豊かに歌っています(今日の演奏、特にテンポ遅い部分は”内声を浮き立たせ奏法”もけっこう顕著ですね)タメが有って歌い過ぎても本当に心地が良い。続く技巧的部分もノリにのって、オケとも調和。第2主題の再現後、いよいよクライマックスへ、アクロバティックなピアノから壮大にオケと第2主題を強奏する部分、もう胸が熱くてどうしようもありません。そこから一気に技巧と最強音で全曲の幕!
まぁ、何かこんな中途半端な文章より、VOD配信が存在する間はぜひそちらも観て下さい
フィニッシュと共に、すかさず割れんばかりの拍手、拍手、ブラボー!! 高関さんと自然とハグ♡ ハグしたのは本選では牛田さんのみ。お二人は厚い信頼関係で結ばれているのですね。その時の笑顔には確かな充実感、達成感が!
この大舞台で、凄い重圧(既に有名だから尚更)の中で、こんな素晴らしい演奏をされた、感動をくれた牛田さんに、心から感謝します。
ラフマニノフピアノ協奏曲第2番 チョ・ソンジン(第7回大会優勝者でもある)
・・そう、凄い重圧だったろう!と思いきや、意外なお答えが
この作品、牛田さんが、ラフマニノフの作品の中で最初に取り組んだものだそうで、とにかく昔から大好きな作品との事。 そうそう、よ~く解ります!
デビュー頃のレッスン取材でも、既に弾いてますね~!
この頃は、この日の大舞台での大熱演のこと、まだ知る由も無いんでしょう・・
聴衆賞の投票、 牛田さんのハコは入りがダントツに良い!!
本選は2日目 +授賞式も行く予定でしたが、数日前に何やら急遽用事が入り、仕方なく浜松を急いで後に・・・
本選2日目、演奏の配信を主に出先でスマホで聴きながらの感想は、
お一人目、今田篤さん
チャイコフスキー ピアノ協奏曲第1番 変ロ短調
出だし堂々としておられましたが、この大舞台のプレッシャーからかミスが目っだってしまってます。技巧的になかなか素晴らしいし、音楽のまとめ方も上手いのでまたも惜しい印象が。
二人目は 韓国のイ・ヒョクさん
ラフマニノフ ピアノ協奏曲第3番 二短調
この”お化けコンチェルト”を選んでる事自体、たいしたものです!
出だしからちょっと硬くなってるのか、難技巧の箇所ではミスが多かったですが、第2楽章から一転安定感を戻してこられた感じで、表情も柔和に。第3楽章はかなり迫力と楽しささえのある演奏で、一気に壮大な終結へ。反応はかなりのものでブラボーも飛び出す。
最後は、トルコのジャン・チャクムルさん
リスト ピアノ協奏曲第1番 変ホ長調
比較的短い作品なのでアピール的にはどうかな?と思ってましたが、始まるとこ、これはかなり素晴らしい!!テクニックは抜群でとても力強く、音色も多彩な感じ。第2楽章の美しいテーマはもううっとり、フィナーレは華麗そのもの。まさに圧巻のうちに幕!。これも反応なかなか良いです!
さて18時から始まった、と~っても気になる授賞式の中継は
予想どおり 聴衆賞 を獲得!された牛田さん。
続いて、順位が小川審査委員長から 6位から順に発表されてゆきます。
あ~ドキドキ・・・・
さぁ残るは2人! になった時、牛田さんが優勝~と思いましたが、、、、惜しくも2位、
いえいえ 堂々の第2位 ですよ! 併せてポーランド市長賞も見事受賞されました。本当におめでとうございます!!
見事優勝された、トルコのジャン・チャクムルさん(20歳)、おめでとうございます! 素晴らしい才能と、既にかなり高い技術を持っておられますね!
クラシックピアノ界の新星の登場です。
☆11月25日(日)NHKおはよう日本 で 浜松国際ピアノコンクールの密着特集を15分程やってました。ご覧になりましたか? ファイナリストになった牛田さんと安並さんをメインに取材してました(^^♪
25日の「入賞者披露演奏会」では、プロコフィエフ「戦争ソナタ」を演奏されましたが、一次のときよりきっとリラックスし楽しみながらも、第3楽章は最高に力強い演奏で聴かせてくれましたね♪
プロコフィエフ ソナタ第7番「戦争ソナタ」第3楽章 牛田智大「愛の喜び」から
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優勝ではなく第2位という結果に、まだまだ勉強の余地があり、研鑽を積んでいかなければならない、と改めて思われるでしょう。謙虚で努力を惜しまない牛田さんだから、これからもまだまだ伸びていくと信じています。
また2位を勝ち得たことにより、ショパンコンクールのシード権をも得られた形になるので、今後大きく前進があるかと思います。
牛田さん、そして長い間、熱い戦いをくり広げてきたコンテスタントの皆さんお疲れ様、そして本当にありがとうございます!!
ピアノに青春を、人生をも賭ける牛田さんやコンテスタントの皆さんには、ピアノ音楽の素晴らしさ、奥深さを改めて教えてもらった気がします!
長~い記事に、お付き合いくださり、ありがとうございます。