保田保(やすだたもつ)は現在31歳。某中堅商社で働いている。
同期は既に課長クラスが多い中、後輩にまでたもっちゃん呼ばわりの
持ち前の人の良さが災いしてか未だに出世には縁がない。
そんな彼への同僚女性のイメージには、必ず「いい人だけど」が冠されている。
しかし明らかに人数あわせで呼ばれた合コンに、彼は並々ならぬ決意で臨んでいた。
隣の席に座ったのが彼が、というよりその場の男子チーム殆ど全員が狙ってい
た宮崎あおい似のまりえだったからだ。人の良さに比例する人見知りパワー全開で尻込みする彼にまりえはジャブを放った。
「保田さんは休みの日とかどうしてるの?」
きた!20年以上前からの自分の趣味を活かす時が遂に来た。
彼は次に続くウンチクトークまでをも頭に描き
ゆっくりと口を開いた。
「寺めぐりかな。」
はいアウトーーッ
だめでしょ、浮き足立った呑みの席で女子にそれ言っちゃ。
ただ自分の趣味をポップに昇華させたい、あまつさえそれで女子のハートを射止めたい。
そんなあまたのたもっちゃん達にボクが提唱するのが
テンプリング(語尾上げな感じで)です。
あたかもツーリングやサイクリング、ハイキングやウォーキングのように呼んでしまうことによって「寺巡り」という単語の持つ抹香クサさをかき消してしまおうというファブリーズ的なやり口ですね。
あと「古寺」はビンテー寺と呼んでしまいましょう。
「今度の連休は奈良のビンテー寺をテンプリングしない?」なんて言い放ってしまいましょう。
