総蛋白・アルブミン・グロブリン

月に一度の大事な話です。

前回はアルブミンの話をしたので、今回はグロブリンの話をします。

 

グロブリンは肝臓でつくられるたんぱく質で、血液中を流れるたんぱく質の主成分のひとつです。 

肝臓にリンパ球が増えたり、肝の線維化が進むと増加します。

γ-グロブリンの上昇は慢性肝炎や肝硬変の進展を疑う指標になります。

血清蛋白は単一の成分であるアルブミンとそれ以外のグロブリンと総称される蛋白からなり、後者は大きくα1-グロブリン、α2-グロブリン、β-グロブリンおよびγ-グロブリンの4分画に分けられます。 

血清中の蛋白の全てを総称して総蛋白と呼びます。

 

 γ-グロブリン

(ガンマ-グロブリン=免疫グロブリン)

グロブリンは肝臓でつくられるたんぱく質で、血液中を流れるたんぱく質の主成分のひとつです。
肝臓にリンパ球が増えたり、肝の線維化が進むと増加します。γ-グロブリンの上昇は慢性肝炎や肝硬変の進展を疑う指標になります。

免疫グロブリンには5つの種類があり、分子量が重い2本の「重鎖」と、分子量が軽い2本の「軽鎖」から構成され、基本的にY字型の構造をしています。それぞれに異なる役割を担い、検査で異常値を示した場合にはさまざまな疾患が考えられます。

免疫グロブリンは5種類

免疫グロブリンには、IgG、IgA、IgM、IgD、IgEの5つの種類があります。それぞれの機能や効果などを見ていきましょう。

IgG

IgGは、5種類の中で血液中に最も多く含まれている、Y字型の構造の免疫グロブリンです。免疫グロブリン全体の80%を占め、細菌やウイルスを防御する役目を担っており、体内に侵入してきた病原体やウイルスなどと結合して、病原体やウイルスの働きを止めたり、白血球の働きをサポートしています。また、胎盤を通過して胎児に移行するため、生まれてから数ヶ月の間、赤ちゃんの身体を守る働きもします。

IgA

IgAは、喉の表面、腸の内側、気管支の内側の壁などの粘膜の表面や、分娩後に数日間分泌される「初乳」に存在している免疫グロブリンです。血液中ではY字型の構造をしていますが、粘膜の表面や初乳の中ではY字型が2つ結合した構造をしています。病原体やウイルスが侵入してくるのを防ぐ働きに関わっています。

IgM

IgMは、病原菌やウイルスに感染した時に最初に作られる免疫グロブリンです。5つのY字型が互いに結合した構造をしているため、Y字型が1つの構造のIgGよりも、効果的に病原体と結合すると考えられています。抗体の働きを補う「補体」と呼ばれるタンパク質と共同して、病原菌やウイルスなどを破壊したり、白血球が破壊した菌を食べるのをサポートします。

IgD

IgDは、Y字型の構造をしていますが量が少なく、今のところ役割がよくわかっていませんが、リンパ球の成長や分裂に、何らかの役割を果たしていると考えられています。

IgE

IgEは最も量が少ないY字型の構造の免疫グロブリンで、身体の中に入ってきたアレルゲン(アレルギーの原因となる物質:花粉やハウスダストなど)に反応してヒスタミンやロイコトリエンを産生させ、アレルゲンから身体を守る働きがあります。

ただ、ヒスタミンやロイコトリエンが過剰に産生されてしまうといわゆるアレルギー反応が引き起こされることもあります。

また、アレルギー性疾患や寄生虫感染症など、アレルギー反応が関係した疾患にかかるとIgE値が増加するという特徴もあります。

免疫グロブリンの基準値

 

細菌やウイルスなどの病原体が侵入するとまず「粘膜免疫」が迎え撃つ

目、鼻、口、腸壁や膣、尿路など外界と体内の境界線にある粘膜には病原体から身を守るための防御システムが備わります。

中心的な役割を担うのがIgA(免疫グロブリンAとも呼ばれる)。

IgAは病原体にとりつき、動けなくします。

一方、体内に病原体が侵入すると、「全身免疫」が働く。

全身免疫は主に、免疫細胞が病原体を攻撃する「自然免疫」と、相手の性質を正確に見極めて抗体を作って攻撃する「獲得免疫」の2つの武器で体を守るが、このとき下痢や発熱が生じてしまう。

感染に対抗するには、第一の砦の「粘膜免疫」の守りを固め、病原体を体に入れないことが重要です。

 

上気道と腸には共通した粘膜免疫システムがある

上気道には「扁桃」(咽頭や耳管、舌などに存在し環状になっていることからワルダイエル扁桃輪と呼ばれる)、腸には「パイエル板」(小腸粘膜に集中)という免疫細胞が集まる組織があり、病原体などの異物をいち早くキャッチして応戦します。
粘膜上皮にある「M細胞」という細胞に取り込まれた病原体は、咽頭では扁桃、腸ではパイエル板の中で、まず「樹状細胞」にとらえられる。そして、この細胞から情報を受け取った「B細胞」は、次に同じ病原体が入ってきたときにこれを認識して不活性化(中和)するIgA抗体を作り出すモードに変化する(抗体産生細胞)。

こうして作られたIgAは粘膜から粘液中に出て働く

この粘膜上に分泌されるIgAを「分泌型IgA」と呼ぶが、ほかの部位にあるIgAより、ウイルスを不活化する働きが高いことがわかっている。なお、血液中にはIgGという抗体が多い

 

小腸を起点に全身を巡る免疫システム

小腸の腸管にはパイエル板という免疫細胞の集合体(リンパ組織)があり、ウイルスや細菌はパイエル板表面にあるM細胞をくぐり抜けて侵入。すると樹状細胞が待ち受けてこれをとらえ、その情報を受け取ったB細胞が抗体産生細胞となり、「IgA」という抗体(病原体にくっつき、無力化したり、体内から除去したりするタンパク質)を産生する。

このとき抗体産生を助けるのがヘルパーT細胞。IgAは分子が二つ結合した二量体を主とする「分泌型IgA」となり、捕獲力を高めて、腸管内に入ってきた病原体の粘膜内への侵入を食い止める。一部の抗体産生細胞は全身を巡り、再び小腸に戻る(ホーミング)。

この旅の途中で、唾液や上気道などでIgA産生を促し、全身の粘膜免疫を高めると考えられています。

 

IgG抗体とは

体外から体内へ侵入した異物(抗原といいます)にたいして、人の体(生体)が反応して産生される物質を抗体といいます。

この抗体は免疫グロブリンと呼ばれ、構造の違いによってIgG、IgM、IgA、IgD、IgEという5つのグループに分類されます。

生体は細菌やウイルスなどの抗原に対して感染初期にIgMを産生し、その後、遅れてIgGを産生します。

IgGは、その後、長期間にわたって存在し抗原に対する免疫応答を担っています。新型コロナウイルスでは感染後、約2週間で8割がIgMまたはIgGが陽性になります。

しかし、IgGは感染初期には産生されないため、感染から2週間以上経過していない状況で検査しても、IgGの測定結果に反映されない可能性があります。

 

IgG抗体検査は、PCR検査やIgM抗体検査とは違い、現在感染している証拠にはなりません。
PCR検査、抗原検査、抗体検査、いずれにおいても「正しいタイミングで使うこと」と「正しく結果を解釈できること」が求められます。

 


検査は万能ではありませんので、それぞれの使い所、長所、短所を理解し、検査の限界を知った上で上手く使い分けることが重要です。

 

免疫グロブリンは薬としても使われている

免疫グロブリン製剤とは、血液の中にある免疫グロブリンを薬にしたもので、国内の健康な人の献血血液から作られています。その効果や使用場面を見ていきましょう。

免疫グロブリン製剤の効果

免疫グロブリン製剤には、感染に対して有益なさまざまな抗体が含まれており、体内で病原菌やウイルスと結合し、細胞内に侵入して増殖するのを防いでくれる効果があるため、さまざまな感染症や免疫に関する病気の治療薬として使用されています。

免疫グロブリン製剤を使う場面

アレルギー疾患などの治療には、炎症や免疫を抑制する作用があるステロイドが用いられることがありますが、 ステロイドを服用しても症状が抑えられない時は、免疫グロブリン製剤が使用される場合があります。例えば、強い病気の症状をすぐに抑えたい時、症状が再発した時、さらに、ステロイドを減らすと症状が出てしまう時などです。そのほか、他の治療薬の副作用や高齢といった理由でステロイドが使用できない場合、感染の心配がある場合などにも使用されます。

また、アレルギー疾患以外にも、川崎病、ギラン・バレー症候群、血小板減少症など、重い感染症の治療にも用いられています。

 

前回の復習です。⬇️