米軍「日本は逆境を乗り越える強さを持っている」 トモダチ作戦に密着
東日本大震災の被災地の沖合から米海軍第7艦隊による救援活動「オペレーション・トモダチ(トモダチ作戦)」は27日も続いた。ドック型揚陸艦「トーテュガ」から、三陸沖に展開する強襲揚陸艦「エセックス」へ移動し、作戦の前線基地に密着した。
「作戦は日米友情の証し」と語る隊員たち。海面には津波で流されてきた家屋の残骸(ざんがい)がいまだに無数に浮かんでいた。それでも、任務に就く隊員たちは「日本は逆境を乗り越え、立ち直る強さを持っている」と復興を固く信じている。
26日夕刻、三沢基地(青森県三沢市)から飛び立った掃海用大型ヘリ「CH-53D」は、太平洋上を15分ほど進み、眼下の船影に向け一気に降下した。みるみるうちに海面が近づくと、機体が大きく前後に揺れた。八戸沖に展開するトーテュガに着艦した瞬間だった。
甲板に降り立つと、すぐに靴の裏までくまなく放射能を測定された。「数値を超えたら没収する」。放射能に対し、米海軍が神経質になっている様子がうかがえる。「日本のために少しでも何かできるのがうれしい」と艦長のアドリアン・D・ラグランド中佐が迎えてくれた。
青森県八戸沖に展開するトーテュガの全長は約185メートル。艦内はまさに迷宮だ。狭い通路が縦横に走り、途中には固く閉ざされた重いハッチが並ぶ。急傾斜のはしごを介してフロアが幾層にも分かれ、売店や食堂、歯科や病床も備わる。
一夜を過ごす船室まで案内してくれたのは、女性隊員のヴェロニカ・ケネディ少尉(22)。「トモダチ作戦は、日米両国の素晴らしい友情の証し」という彼女は、続けて「一日も早く日本の人々が日常を取り戻すための任務。ごく一部でも自分が果たせることを光栄に思う」と胸を張った。
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ベルの音で目覚めると、まだ夜明け前。だが、甲板ではすでに隊員が大型ヘリコプターの整備を始めていた。
27日午前7時すぎ、全身をすっぽりと覆う宇宙服のような防寒救命衣を身につけ、大型ヘリに乗り込み約1時間。宮城県気仙沼市から12キロの沖合に強襲揚陸艦「エセックス」の威容が見えた。「どこにどういう救援が必要なのか。これが今、最も焦点になっている」。放射能測定を経て艦内に入ると、揚陸隊報道官のグレッグ・フローレス大尉(52)がそういって迎えた。
海上自衛隊の護衛艦「ひゅうが」と連携し、被災地のニーズに合わせた柔軟な対応を進めているという。調整役としてエセックスに乗り込んでいる海自第1護衛隊群司令部運用幕僚の田中裕昭1等海尉(32)は「作戦名が『フレンド』ではなく『トモダチ』となったことにつながりの深さを感じる。無償の支援が率直にうれしい」と語った。
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「準備はいいか。LCU(汎用(はんよう)上陸艇)が来たぞ」。午後0時半、海水が満たされた艦内ドックにLCUが帰艦した。救援活動にLCUが使用されるのはこの日が初めてだった。
早朝にエセックスをたち、気仙沼沖の離島、大島に電源車や支援物資を送り届けてきたという。格納庫にはまだたくさんの支援物資が積まれている。同護衛隊群司令の糟井裕之海将補は「物資輸送は(LCUなどを使った)海上作戦に移ってきた」と解説する。
一方、第7艦隊第7遠征攻撃群副司令のトーマス・ショウ大佐は「港から津波に流された漁船やコンテナが航行の妨げとならないように、トーテュガでは、海に沈んでいるコンテナや漁船の調査、除去を進めている」と明かした。
本格的な復興に向け、支援活動の内容も多岐にわたってきている。支援の形は変わっても、任務に就く隊員たちの「心」は変わらない。ケネディ少尉の言葉が印象深い。「日本はどんな逆境に直面しても、乗り越え、立ち直る強さを持っていると信じます」
(大竹直樹)