「予断許さず」「念のため出荷停止」 政府の曖昧な説明、膨らむ不安  | U.F.O.=Ultimate Futures Observatory                  究極(NK225F) 先物展望台 だったべ? 

「予断許さず」「念のため出荷停止」 政府の曖昧な説明、膨らむ不安 



 「予断を許す状況ではない」「直ちに健康被害はないが、念のため出荷を控える」。東日本大震災や福島第1原子力発電所事故をめぐり、政府はどのようにとらえていいのかはっきりしない、曖昧な言葉を連発している。専門家は「かえって不安を増幅させている」と指摘。政府の“無策”は、こうしたところからも透けてみえるようだ。

 《予断を許す状況には立ち至ってはいない。緊張感を持って一つ一つの事態に当たらなければならない局面が続いている。力を合わせて乗り越えていこうではありませんか》(25日、菅直人首相)

 東京女子大の広瀬弘忠教授(災害・リスク心理学)は、これまでの政府の発表を「混乱を起こさぬよう慎重に言葉を選んでいるのを日本人は見抜いている。『何か裏に隠している』との想像力が働いてしまう」と分析する。

 特に25日の菅首相の会見は不安をあおるものだったという。「今回の震災は予断を許さないことは誰もが知っている。具体的な方策を示さず精神論を持ち出し、逆に『無策なのではないか』との不安を覚えた」。政府は25日に原発30キロ圏の住人に自主避難を呼びかけたが、広瀬教授は「明確な理由の説明がなく、危険性が広がっていると錯覚させた」という。

 放射性物質の拡大や食物への影響など、考えられる“最悪のシナリオ”をすべて公表する必要があったとする広瀬教授。「そのうえで『今はまだこうした段階にない。具体的にこんな対策もあるから安心してくれ』と言うべきだ」と主張する。

 《検出の放射線量によれば、直接に、直ちに健康に害を与えるものではありませんが、念のため水道水は飲用を控えること》(21日、枝野幸男官房長官)

 《念のために早い段階から出荷を差し控えていただき、かつ、できるだけ摂取しないようにしていただくことが望ましい》(23日、同)

 「『直ち』にとは1年か10日か。『できるだけ』とはどれぐらいの頻度か。一概に言えないのは分かるが、そこをあえて説明する努力をしてほしい」と話すのは、政治家の発言などを研究している日本大学芸術学部の佐藤綾子教授(パフォーマンス学)。福島県などの農産物の出荷制限の発表に必要だったのは、具体的な“数字”という。

 「成人の平均体重や平均身長のデータをもとに、今の放射線量なら、何グラムを何年摂取したら健康に被害が出るなどと数字を明示してほしい。放射線量は刻々と変動して計算は面倒だろうが必要なことだ」

 佐藤教授は、災害時は不安な精神状態から「悪い情報」を選択してしまう心理が働くと指摘。「悪い方悪い方へと思考が流れる。枝野官房長官の落ち着いた話しぶりは安心感を与えている面もあるが、『念のために』という言葉はあまりに曖昧だ」と苦言を呈する。

 危機管理コンサルタントの田中辰巳さんは「枝野官房長官の話し方はいかにも弁護士出身らしい。法廷で淡々としゃべっている感じがする」と分析。「しかしここは法廷ではなく会見場。裁判官には専門的な言葉は伝わるが、国民はそうではない。もうすこし具体性を持たせて話すことを心がけてほしい」と話している。