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国際支援で再発見した日本の美徳 世界との絆



日本の被災者に対する各国からの激励の言葉、救援物資、義援金など、やまない支援の広がりは、各国に日本国民の美徳、世界における日本の重要性を再認識させる機会となった。

 「中国の方々の温かさを感じている」。泉裕泰上海総領事はしみじみと話す。

 震災直後から、上海総領事館には義援金の申し出や激励の手紙、花などが続々寄せられた。日本政府として過去中国でこうした支援を受け取った例はなかったが、16日から受け付けを始めたところ、25日までに535件、1億2500万円を超す義援金が集まった。

 上海の中学生有志10人はたどたどしい日本語で「わたしたちは頑張りましょう」と書いた手紙とともに、1388元(約1万7千円)を持ち込んだ。反日感情が根強い南京の元日本留学生の代表からも「申し出が早速あった」と泉総領事は明かす。

 「こんなに優しい国民とは思わなかった」。海外で暮らす日本人の多くは、現地の人々から受けた気遣いに驚きを隠せない。「海外の人々が大災害に遭ったとき、同じ言葉をかけてきただろうか」。あるパリ在住日本人は自問した。

 各国の支援は、海外の被災地での日本の地道な救援活動や途上国への開発支援で「受けた恩に報いたい」(中国メディア)という思いもこめられている。このことは、大地震を経験した中国や台湾、ニュージーランドの指導者たちが今回、日本に送った言葉ににじみ出ている。

 各国の報道も、被災者への同情と応援の言葉で満ちあふれている。「行列では老人、子供を優先させて最後に一般の人々が続き、けんかや争いもない」(台湾紙・聯合報社説)など、称賛の声がほとんどだ。

 「日韓関係は新たな次元に入るかもしれない」。武藤正敏駐韓大使は、「がんばれ日本」キャンペーンを展開する韓国メディアの関係者からこう聞かされ、韓国社会の対日観に変化の兆しを感じている。

 無論、外交的な配慮も大きい。北京の外交筋によると、中国当局には、尖閣諸島沖での漁船衝突事件後の強硬的な対抗措置が国際社会における中国のイメージまで低下させ、「やりすぎだった」との反省の声があるという。

 中国はいち早く救助隊を被災地入りさせた。「全力で日本を支援している」と訴えることで、日中双方の国民感情を改善させたい思惑がある。北方領土問題で対日関係がこじれたロシアも同様の狙いから最大級の救助隊を送り込んだ。

 一方で日本政府の対応の遅れには、批判もあった。

 「ひとつの必需品が不足している。情報だ」(17日付米紙ニューヨーク・タイムズ)。福島第1原発をめぐる菅政権と東京電力の混乱に世界が抱いた不信感はなお払拭されていない。

 「薄氷を踏む思いだった」。米国への原発事故情報の提供に携わった外交官は、情報不足への不満が日米関係の再緊張に転じかねない状況だったと明かす。

 震災を機に日本が再発見した世界との絆。この財産をどう生かすかは、震災被害に対する日本人の冷静な対処にかかっている。

(上海 河崎真澄、北京 矢板明夫、台北 山本勲、ソウル 加藤達也、モスクワ 遠藤良介、ニューヨーク 松尾理也、パリ 山口昌子)