台風は早めに熱帯性低気圧に変わったが、その影響で、予報どおり午前中は雨になった。仕事は休みだったが、いつも通りの5時前に目が覚め、それから何をやっていたのか、用意していた本も開かず、とにかく時間だけが進んだ。気づくと昼になっていた。


とりあえず何か結果を残しておこうと、池波正太郎氏の鬼平犯科帳シリーズ決定版の第20巻を読んでみた。映画も公開されていることだし、これだな。




本書の内容は以下のとおり。( )内は初出誌「オール讀物」の掲載号数。

・おしま金三郎(1979年8月号)

・二度ある事は(1979年9月号)

・顔     (1979年10月号)

・怨恨    (1980年2月号)

・高萩の捨五郎(1980年3月号)

・助太刀   (1980年4月号)

・寺尾の治兵衛(1980年5月号)


表紙絵には歌川広重の『名所江戸百景』より「利ね川ばらばら松」が使われている。




女賊のおしまと情を通じたせいで火盗改方の同心を辞め、居酒屋の亭主になっていた松波金三郎のもとにおしまが姿を現した。かつての同僚・小柳安五郎が殺されてもいいのかという言葉を残して、松波に追い返された。背景にあるものは?おしまの心境とは?(おしま金三郎)


火盗改同心・細川峯太郎は女房をもらう前に馴染みの女・お長と遊ぼうと不埒な考えで女のいる家に近づいたところで、不審な輩を目にし、大きな捕物に発展した。結婚し、しばらく静かにしていたが、またぞろ遊び心が疼いてきた。両親・先祖の墓参りにかこつけてお長の店に向かった細川の目に留まったのは…。(二度ある事は)


高輪の太子堂へ参詣した長谷川平蔵が門を出たところで井上惣助によく似た男を目にした。高杉道場の剣友だった井上は20数年前に公儀の罪を受けて切腹していた。しかし、誰も死に顔を見ていなく、生きていたと思った平蔵はあとをつけた。すると…。(顔)


盗賊の磯部の万吉は浪人くずれの盗賊・杉井鎌之助に今里の源蔵の殺しを依頼した。源蔵は、密偵・大滝の五郎蔵の情報屋で煮売り酒屋の亭主・桑原の喜十のところに身を寄せていた。万吉が源蔵を狙う背景とは?火盗改は先に逃げられた万吉を捕えることができるのか?五郎蔵が喜十の異常に気づいた。(怨恨)


木登りして遊んでいた百姓の子が木の上からして小便が下を歩いてきた武家の頭にかかった。斬り殺されようとした子どもを助けたのは盗賊・高萩の捨五郎だった。捨五郎も傷を負ったが、彼を尾行していた長谷川平蔵によって救われた。そして捨五郎が告げたこととは?(高萩の捨五郎)


20数年ぶりに会ったかつて高杉道場の剣客だった横川甚助は女に鉈を振りかざされていた。女の敵討ち引き受け、夫婦同然の暮らしをしながら敵討ちを実行しない甚助に女は怒っていた。甚助の助太刀をすることになった平蔵が甚助を促し敵討ちの相手のもとに赴くと…。(助太刀)


籠滝一味の押し込みに高萩の捨五郎を斡旋した口合人・寺尾の治兵衛が大滝の五郎蔵に声をかけてきた。今度かぎりで盗みの世界から身を引くため、生まれてはじめて盗みの采配を振るという。平蔵と相談して治兵衛の仲間に加わった五郎蔵は治兵衛にいろいろアドバイスするが、予期しない事態が出来した。はたして結末は?(寺尾の治兵衛)



映画が公開された影響か、中古本屋では決定版が特別陳列されたいた。110円か220円の値札が貼られることはしばらく期待できないかもしれない。まだ21巻と22巻が手に入っていない。