歩くにはいい天気になったが、あいにくと仕事だ。それでも十分休んだせいか、宮前平の富士見坂を歩く足取りは軽い。坂上からは今朝も冠雪の富士山がよく見えていた。




昨日東伏見稲荷で見損ねた富士山だったが、これで今年初の富士見になった。富士山を見るのを有り難がるのは日本人特有の言葉遊びに依るのかも知れない。「富士見」は「不死身」につなが…らないか。ついこの間まで風邪でぐしゅぐしゅしていたしな。


ようやく塩野七生さんの『小説イタリア・ルネサンス4  再び、ヴェネツィア』を読み終えた。電車移動の時間を使って読み始めたが、なかなか進まず、とうとう年を跨いでしまった。一人の外交官の人生を通してルネサンス世界の興亡を描いた壮大な歴史小説の完結編となる。



ヴェネツィアの名門ダンドロ家の当主マルコ・ダンドロ国政に復帰するためローマからヴェネツィアに戻ってきた。


イスラム教徒とキリスト教徒の対立が深まる中、交易国家のヴェネツィアはトルコ対策に議論が白熱していた。そのトルコで絶対君主スレイマンが亡くなると、セリム二世がスルタンの地位につくと、キプロスを攻撃した。


マルタ島の戦闘で撤退を余儀なくされた父に代わり、自分は勝ってみせるという思いが、ヴェネツィアとの講和を破り、キプロスに攻め入った。ヴェネツィアは法王庁、スペインに働きかけて連合艦隊を結成しようとするが、ヴェネツィアを快く思っていないスペインは何かと足を引っ張ろうとする。


それでも何とか連合艦隊を結成し、ついにレパント沖で全面衝突する。500隻の双方の艦船が海上で激突し、15000人が命を落とした大海戦は、キリスト教徒側の圧勝に終わった。この1日で世界の運命が変わっていく。


ヴェネツィアは秘かにトルコとの間で講和を結び、西洋と東洋の間をとり持つトルコ商館をヴェネツィアに設置することが決まると、マルコ・ダンドロは引退を決意する。隠退場所はブラーノ島に決め、ここでマルコは一生を終えた。


本書の構成は以下の通り。

・帰郷

・職場復帰

・ユダヤ人居留区

・医師、ダニエル

・女の香り

・「タルパ(もぐら)」

・音楽会

・祖父と孫娘

・秘書官ラムージオ

・ヴェネツィアの矛盾

・尼僧院脱出作戦

・ローマ再訪

・金角湾の夕陽

・時代の変化

・ヴェネツィアの芸術家 一

・ヴェネツィアの芸術家 ニ

・ヴェネツィアの芸術家 三

・対話の醍醐味

・舵取りの苦労

・マルタの鷹

・現実主義者が誤るのは…

・海将バルバリーゴ

・血を流さない戦争と、血を流す政治

・戦雲にわかに 一

・戦雲にわかに ニ

・「火」と「水」

・レパントへの道 一

・レパントへの道 ニ

・レパントへの道 三

・レパントへの道 四

・レパントの海

・最大にして最後の大海戦

・血を流さない戦争 一

・血を流さない戦争 ニ

・血を流さない戦争 三

・隠退

・その後のヴェネツィア


ヴェネツィア一千年の歴史に関しては著者の『海の都の物語』(全6巻)で描かれている。トルコとの攻防戦を描いた歴史絵巻三部作『コンスタンティノープルの陥落』『ロードス島攻防記』『レパントの海戦』も必読だ。



よくよく考えると、1月も、早くも1週間になろうとしている。正月ははるか過去の出来事に思えてきた。明日の朝には正月飾りを仕舞って実質的にも正月は終わりだ。気がつくと2月になっていそうだ。確定申告が済むまでは時間が過ぎるのが速そうだな。