居眠り磐音シリーズも残すところ3冊になった。
坂崎磐音と田沼意次との最後の戦いが始まった第49巻は、時の流れと新しい世代に引き継がれる人の営みを感じさせる展開となった。
田沼意次が亡くなった。老中を罷免され、領地も削減された意次が何も手をうっていないとは思えない磐音は早くから相良城下に弥助を潜入させ、意次の動静を探索させていた。「意次、あえて御不審を蒙るべきこと、身に覚えなし」と上奏文で抗弁していた意次は真の敵が誰だったのかを知っていたようだ。
幕府では、田沼派の反対を押しきって松平定信が老中の座についた。そして、財政再建のために寛政の改革を進めることになる。
意次は、自分の死後、定信を狙うように7人の刺客を準備し、彼らは寸又峡で猛訓練に励み、指示を待っていた。
磐音は、再び政治が混乱することを避けようと、7人の矛先を尚武館に向けるように画策を始めた。
弥助に霧子が合流した。ふたりは、意次の用人から刺客たちに宛てた手紙を奪い、筆跡を真似て、意次の死、最初に狙うは坂崎磐音、その後に松平定信を倒すように内容を書き換えたものを届けた。
道中で弥助と霧子によって2人が倒された5人に減った刺客たちは、狼藉を働きながら江戸に向かい、ついに尚武館に姿を見せた。睦月と空也が人質にとられたが、9歳の空也は尋常の立ち合いを申し出て、見事に初陣を飾った。そして刺客は全員倒された。
残るは土子順桂ただ一人。彼は純粋に剣術家として磐音に勝負を挑もうとしていた。
第一章 寛政の改革
第二章 仔犬の小梅
第三章 寸又峡の七人衆
第四章 弥助、戻る
第五章 初陣空也
昨夜からまた雨足が強くなった。被災地で新たな災害が発生しないことを祈るだけだ。