ルパンははやく父を失なった。母のアンリエットは女学生時代の友人の伯爵夫人の情けで、伯爵家で働かしてもらっていたが、「王妃のネックレス」事件で伯爵家を追い出され、田舎に引っ込んでいるうちに母は病死してしまった。
ルパンは両親がたっしゃで生活も豊かだった自分に、家で働いていた乳母のビクトワークに救われ、育てられていたが、二十歳ビクトワールの家を出てパリで働き口をを探した。
だが、上手くいかなかった。いろいろな職場で一生懸命働いたが、どういうわけか長続きしなかった。
主人が破産したり、自分が病気になったりして、勤めをやめなければならないことが度々あった。
そして、今は失業しているのだ。のちに怪盗紳士ルパンも、ひどくみじめな生活をしていた。
彼は下を向いて歩き続けた。が、ときどき立ち止まって、体をかがめて前方を見すかして、ジッと耳を澄ました。
だが、夜ふけの街には人通りがない。電車も、もう通らなかった。その線路が黒くまっすぐ伸びていた。
街灯の光のが青白く道のところどころを照らしていた。その頃 の街灯はガス灯で、それも離れ離れにあるだけだ。街灯と街灯のの間は薄暗い。街路樹のある所は、なお薄暗い。
これで二㌻終了
