例年に比べ涼しかった夏が過ぎ
気がつくと金木犀の花が
鈴なりになっていた
こんなに早く咲き始めているのは初めてだ
10月に入る頃
甘い薫りの金木犀が
満開になると
いつも父の事を思い出す
父は多くを語らず、
ゆうなれば大きな木のような
風が吹いても
雨が打ちつけても
じっと耐え
耐えた分だけ深く強い根を広げ
どっしりとしている
明るい太陽からの陽射しを受け
柔らかな風が吹けば
葉と葉が重なり
サワサワと奏で
癒しを与えてくれる…
そんなしずかで優しい父親だった
私が子供の頃に
肺炎で入院していた日を
思い出した
廊下から差し込む蛍光灯の光が
病室をじんわりと明るくし
その中眠れずにいた私は
ベット周りのカーテンレールを
目で辿っていると
廊下から足音がしてきた
父が仕事後に見舞いに来てくれた
携帯なんてない
突然の訪問に
私の心は飛び跳ね
温かくなると同時に
疲れてるのに…と幼心に心配した
父は一度離婚歴があり
年を重ねてから私が生まれた
父は私の側で何かを
多く話すわけでもなく
とにかくここにいてくれた
私は次のバスの時間は?大丈夫?
としきりに聞きながらも
もっと側にいてほしい、
もう少しだけ側にいてほしいと、
我慢してた溢れる涙を拭って
そっと願った
父はそれを察したのか
バスを何本も
見送っているようだった
握ってくれた手の温もり
柔らかさ 手の形
今でも鮮明に覚えている
蛍光灯の光を背にし
しずかに見つめてくる
父の眼差しを
…書き綴っていると
突然強い雨音が聞こえてきた
あれから長く時を経た今
父のように私も
深く深く根を広げ、
もっともっと
太陽の光を浴び
枝葉を伸ばし
空へ空へと伸ばしていきたい
早く咲いてくれた
金木犀が
私の大切な
宝物の想い出を
運んできてくれた
今年も咲いてくれてありがとう









