台本『王女の恋』金城哲夫

 

題名は「うみないびのこい」と読む。脚本集『金城哲夫の世界 沖縄編』所収。1975年作品。金城最後の戯曲。

 

題名からラブロマンスを期待したが、内容は史劇だった。内容的には『アマワリの乱 異聞』とでも題すべき中身だが、それでは観客動員が見込めないので、ラブロマンスを思わせる題名にしたと思われる。金城は戯曲ではラブロマンスを遺してないのか。ダンとアンヌを書いた金城の濃厚な恋愛モノをぜひ読んでみたかった。

アマワリは実在の人物で、現在は悪漢説と英雄説がある様子。金城は英雄説で書いている。上原正三も小説の中で、正義感ある頼もしい青年にアマワリと命名しており英雄説を採っていた模様。

この作品は、戦争の順番や結果は史実に準じているが、それ以外の、戦争の原因については金城の創作。たった一つの恋が原因で国が亡んだりする、人の世の危うさがテーマ。

 

あらすじ

 舞台は15世紀の琉球。首里城にわがままな姫・百登がいた。王は、最近評判の良い勝連地区知事・アマワリ(飾らぬ働き者、良政を行なう好漢)を気に入り、娘の百登をアマワリに娶らせる。

 百登は勝連城で暮らし始めるが、わがままは相変わらず。実家の首里城から付き人として若侍の大城を、小間使いとして子供の頃からの乳母も連れてきている。実は大城と百登は幼少時からの恋仲。大城は百登の結婚後自分も結婚。しかし妻の妊娠にも関心無し。大城は今も百登に夢中であった。

 大城は百登と結婚するための謀略を思いつく。それは「中城城主の護佐丸が勝連城を攻めようとしている」とのニセ情報をアマワリに伝え、アマワリに中城を攻めさせ、護佐丸に返り討ちさせてアマワリを殺し、自由になった百登と結婚しようというのだ。護佐丸がヤマトから武器を密輸入し戦力を持っていることを大城は知っていたのだ。アマワリは謀略にはまり中城に攻めていった。

 しかし意外にも、アマワリが中城に勝ってしまった。しかも大城の企みがアマワリや乳母にバレてしまう。大城は乳母を討つ。乳母は勝連城の城壁の下に転落していった。

 一方、首里城の王はアマワリが中城の次に首里城にも反逆してくるかと思ったが、娘の百登が勝連にいるので手出しできない。そこへ百登と大城が首里城に逃げてきた。王は「アマワリが攻めてくる」との大城の言葉に騙され、勝連討伐に乗り出す。戦の中、大城はアマワリを斬り殺し、勝連軍は滅びた。大城は戦功により知事に取り立てられる。

 後日。大城と百登は領地で優雅な暮らしをしていた。百登のもとへ乞食のような老婆が現れる。老婆は実は生きていた乳母であった。大城の謀略をすべて知っている乳母は、それを王に通報していた。大城に処刑命令が下り、大城は自決。百登も引っ立てられていった。終