『七瀬ふたたび』1979年・NHK版

 

ネタバレあります。

 

1話 出会い

深夜。豪雨の中を走るローカル線車内。七瀬、テレパスのノリオと知り合う。予知能力を持つ青年・恒夫とも知り合う。恒夫、列車の脱線事故を予知する。七瀬はノリオを同行の義母から離れさせ、事故が起きる直前の駅で恒夫とともに下車する。予知通り事故は起きた様子。3人は豪雨の中、宿を求めさまよい歩く。

 

2話 旅立ち

何とか旅館は見つかった。七瀬と恒夫は話すうちに、二人に共通の「森のイメージ」があるとわかる。そこは北海道らしい。翌朝七瀬は事故被災者収容先の病院にノリオの義母を訪ねる。テレパス能力により義母がノリオを愛してないと知り、ノリオを引き取る。事故処理の手伝いに行った旅館の主人が、事故を予言した乗客がいた事(七瀬は周囲の乗客に下車を呼び掛けていた)、3人が手前の駅で降りたことを聞き込んできた。主人は3人を問い詰める。七瀬は恒夫を旅に出発させる。旅館の主人に「黙っててやるから」と関係を迫られるがテレパス能力で撃退。ノリオと二人で旅立つ。

 

(感想)

面白い。原作がいいんだが。脚本の石堂淑朗がおとなしい(石堂は突拍子もない脚本家という印象。『呪いの壺』は『怪奇』のトップレベル。『美女と花粉』は標準作。『平城京のミイラ』はトンデモ脚本)。ここでの石堂は原作の良さを生かすことに徹している。石堂のウデをもってすれば楽な仕事であろう。石堂にとっては金にはなるが退屈な仕事だったのでは。『怪奇大作戦』も難解な実相寺映画もこういう原作付きドラマも無難に書けちゃう石堂の凄さ。ただし石堂の第二期ウルトラはつまらないが(やはりウルトラ脚本の名人といえば金城、佐々木、上原、市川、千束であろう)。こういうドラマに、誰でも書けちゃいそうな脚本にわざわざ石堂を使うところがNHKスゴイ。かけるとこには金かける。と思っていたら2話は石堂オリジナルと知ってビックリ。あまりにも原作世界と馴染んていたので。さすが石堂なり。他にも石堂はいろいろウデを揮っているらしい。注目である。

 

3話 大都会の夜 

七瀬はノリオとの生活費稼ぎのためバーのホステスになる。客の西尾は七瀬の体を狙っている。西尾は透視能力の持ち主。バーテンのヘンリーは内心で七瀬に忠誠を誓う言葉を繰り返している。実はヘンリーも超能力者(念動力)。七瀬とノリオが暮らすアパートに恒夫が訪ねてくる。画家である恒夫は「七瀬との共通イメージ」の北海道の風景探しに旅立つため、絵を描いて資金を稼いでいた。恒夫が買って来た新聞に三行広告が出ている。義母がノリオに会いたがっていると。七瀬は広告の番号に電話。ルポライターの山村につながる。エスパーの存在を追う山村は広告を出しエスパーからの接触を待っていたのだ。気付いた七瀬はすぐに電話を切る。恒夫は北海道へ行くと言って七瀬から去った。恒夫は知人の週刊誌記者に会い、山村の住所を巧みに聞き出した(注 結局この伏線は回収されず)。 

 

(感想)展開回。素直に物語を進めた感じ。

 

4話 ダイヤモンド

七瀬が務めるバーでダイヤ紛失事件が起きる。西尾が愛人ホステスに買ってやったダイヤ。西尾は透視能力を使い、ダイヤを拾った別のホステスを突き止め脅す。七瀬は能力悪用を許せず西尾のマンションへ。テレパス能力とヘンリーの念動力も借り、拳銃発砲した西尾を成敗、ダイヤ事件を解決した。しかしその後現場へ取材に来た山村に七瀬が働くバーの所在を知られてしまう。七瀬、ノリオ、ヘンリーの3人がいるアパートに北海道にいる恒夫から手紙が届く。3人が北海道に来るという予知が書かれていた。あの「共通のイメージの場所」に行けるのか?どんな所なのか?期待する七瀬。

 

(感想)活劇編。尺が短かかったらしくエンディング曲がフルコーラスかかる。

 

5話 航海 

3人はフェリーで釧路へ向かう。七瀬が恒夫からの手紙を見返すと「君たちは4人で来る」と書いてある。もう一人は誰? 山村が週刊誌に「超能力者かもしれぬ」と七瀬の実名を書いているのを見る(注 こういう点が子供ドラマ視されてしまう原因だろう)。七瀬は若い女性・藤子と知り合う。老けてるのに17歳という不思議な女性。七瀬らは船内で殺人未遂事件に遭遇、男に海に投げ込まれた女性をヘンリーが念動力で助けるが、巡視員にその様子を目撃されてしまう。現場甲板を慌てて立ち去る3人。七瀬はテレパス能力により藤子が最終超能力者、時間旅行者であると知る。

 

(備考)救出シーンでビデオ合成による特撮有り。色調合わせはよくできてるが女性をクレーンで吊ってるのが丸判りなのが惜しい。古い作品だから仕方ないが。

 

6話 時をのぼる

海に投げ込まれた女性は助けたが、巡視員に目撃されたし、女性に詰め寄られた犯人が「幽霊だ」と騒ぎだしてしまう。このままでは超能力者であることがバレる心配がある。七瀬は意を決し藤子に正体を明かし「あなたが時間旅行者であることもわかっている」と協力を要請。藤子は了解し、七瀬と時間を遡る。殺人は未然に防がれ、藤子は仲間になった。一方、山村はノリオの家へ。ノリオが書いた「北海道に行く」というハガキを義母から回収。超能力研究所にも行き七瀬の父が優れた透視能力者だったこと、七瀬の実家が北海道・釧路近くであることを聞く。フェリーが釧路に着く。4人は下船。恒夫が迎えに来ていた。

 

7話 廃虚 (注 廃墟 ではない)

5人は釧路港からバスに乗る。3時間ほどで廃虚に着く。そこは5人の「共通のイメージ」の場所だった。藤子が300年遡り調べる。その場所にはかつて集落があり、5人の先祖が暮らしていた。だから懐かしい感情を覚えるのだ。しかし藤子の時間遡行が、港から尾行してきていた山村に目撃されてしまった。5人は山村と腹を割って話す。そっとしておいてくれと。山村は了解し書きかけの記事を廃棄する。「いつか5人一緒にひっそり暮らしたい」と夢を語りあう5人。藤子は北海道の叔父の家へ向かった。七瀬は生活費を稼ぐため北海道を去った。ノリオ、ヘンリー、恒夫の3人は廃虚に残った。

 

(感想)おとなしい回。山村があっさり撤退するのは拍子抜け。もっと危機の盛り上げ役として作者が便利に使うキャラかと思っていたが。

 

8話 家族 

ノリオ、ヘンリー、恒夫と山村は釧路の湖畔の空き別荘を隠れ家にした。七瀬は神戸で寝たきり富豪の小間使になった。あの「廃虚の土地」を買いとりたいので金が欲しい。七瀬は富豪の心を読み、望みどおりに奉仕するので気に入られる。山村が神戸まで様子を見に来た。七瀬は富豪から莫大な財産を譲られそうになるが、それを阻止するため家族が富豪を毒殺しようとする。しかも七瀬の仕業に見せかけて。七瀬はテレパス能力で毒殺を防ぐが、富豪宅を去ることになった。

 

(感想)この回は石堂オリジナルという。そういわれれば、ドライでソリッドな感じが原作に比べると無いかもしれない。

 

9話 危機 

七瀬は山村と一緒にマカオへ向かった。皆の生活費のため、テレパス能力を使ってカジノで大金を稼ごうというのだ。山村の発案。700万儲ける。しかしカジノの親分は監視カメラにより七瀬の能力を見抜き、七瀬ら超能力者がいては不都合なので全員抹殺すると決め、エスパー対策を訓練した暗殺チーム「ゾンビー軍団」を差し向けた。カジノ側は山村を誘拐監禁し七瀬の秘密を聞き出そうとする。七瀬は狙撃される危機に遭いつつ山村を救出、マカオを脱出。カジノで親しくなったヘニーデ姫(やけに陽気で能天気に見える女性)も一緒に帰国した。

 

(備考)七瀬の命を狙うのは「日本人のカジノ経営者」と言及有り。おそらく現実のマカオのカジノに日本人経営者がいないことを確認したうえでそう設定したと思われる。そうしないと現実のマカオカジノ側から抗議が来ちゃうからだろう。

 

10話 ある青春 

七瀬はヘニーデ姫の赤坂のマンションで暮らす。ヘニーデ姫は父親から金は与えられているが愛がなく孤独。七瀬にゾンビ―軍団の魔手が迫り北海道から恒夫が警告に来る。北海道に帰ろうとする七瀬。山村が「羽田まで送る」とマンションに迎えに来るが、暗殺者が狙撃。誤ってヘニーデ姫が銃弾を受け死ぬ。七瀬は山村に東京に残るよう言い、一人で北海道へ。ヘンリーとノリオがいる隠れ家に帰り着く。

 

(感想)悲しいラストを知ってるので先を見るのがだんだんツラくなってくる。

 

11話 落日 

恒夫は再び北海道に来たが何も予知できない。それは自身の死が近い事を意味していた。七瀬、ヘンリー、ノリオ、山村が恒夫のもとへ駆けつけるが、恒夫が暗殺者の銃弾を受けた後だった。恒夫は七瀬に愛を告白し死ぬ。七瀬はヘンリーに命じ暗殺者を殺させた。後日、同じ北海道の叔父の牧場にいる藤子から手紙が来る。七瀬からの手紙でマカオでのこと、ヘニーデ姫のことを知り、七瀬らのところに来るという。七瀬は山村を藤子の所に行かせ「来るな」と伝えさせるが藤子は行くという。恒夫の墓が荒らされる。暗殺者は第一陣に過ぎなかったのだ。

 

(感想)山村は原作に無いドラマオリジナルのキャラ。超能力者による説明を視聴者に代わって受ける役割を果たしている。

 

12話 暗殺者たち 

七瀬、ノリオ、ヘンリーは隠れ家で暮らすが、暗殺者たちが周辺地域に「七瀬らはオバケだ」と言いふらしたため迫害され、食料調達さえままならない。七瀬はやむを得ずテレパス能力を使い商店主を脅し買い物していた。藤子と山村は、車で七瀬らの隠れ家を目指すが途中暗殺者らに発見され、藤子だけ汽車で待ち合わせの駅に向かう。待ち合わせ地点で暗殺者らに待ち伏せされる。七瀬はヘンリーに暗殺者を殺させ、辛くも藤子と合流、隠れ家に連れて来る。追手をまいて隠れ家に現れた山村に七瀬は「すぐに立ち去れ」とか「ノリオを連れて逃げてくれ」と頼むが山村は拒否。暗殺者たちは隠れ家の場所を特定し包囲。静かな月夜。明日は決戦となるのか。

 

(感想)せっかくシリアスな展開なのにヘンリーの念動力シーンの特撮がチャチいのが残念。

 

13話 森を走る 

決戦に備え、新たに見つけた別の隠れ家に備品を運ぶ七瀬、藤子、山村。しかしその間に、ヘンリー、ノリオが残った隠れ家が暗殺者らにより焼き討ちに遭ってしまう。時間を遡り戻ってきた藤子は、20分後にノリオらが焼き討ちに遭うと七瀬に知らせる。山村はすぐに隠れ家へ走るが山中で暗殺者らに襲われる。藤子は20分後の世界で撃たれており、七瀬に看取られ絶命。七瀬は隠れ家に走るが間に合わずノリオとヘンリーは殺された[A]。七瀬は逃げるが追手が迫る。逃げる中で七瀬は恒夫、ノリオ、ヘンリー、藤子らが生きて微笑む姿を見る。幻影? 手招きする彼らに近づいていく七瀬(七瀬の死)。山中で倒れていた山村が目を覚ますとそこは1カ月後の世界だった。七瀬らとの出来事も現実?非現実?判然としない山村であった。

 

(感想)ラストの解釈について。1カ月後の世界で山村が訪ねた時、隠れ家、ヘンリーの安楽椅子、山村がノリオに土産として渡した人形、ヘンリーが作った馬の人形には焼けた痕跡無し。室内に蜘蛛の巣が張っている。全ては無かったことなのか? 劇中で確かな現実として扱われるのは「山村が気付くと1カ月が経過していた」という事実である。最終回の序盤で七瀬と藤子が話す場面があり、時間旅行した場合、別の世界に行ってしまうことがあると語られる。山村にとっての1カ月間があっという間だったことを考えると、山村は時間旅行させられ「1カ月後の別の世界」に送られたと考えるのが妥当だろう。では藤子の死後、山村を時間旅行させたのは誰なのか? 答えは描かれていないが、おそらくカジノの親分。親分は、隠れ家の場所を特定したり、上記最終回[A]の場面で高笑いする顔の超アップが再三挿入されたりと、超能力者である可能性が示唆されているように思える。

 

それにしても面白いドラマだった。面白い理由はいろいろあるにせよ、やはり「多岐川裕美が七瀬を演じる」という奇跡的なキャスティングが最大の要因。知的で成熟していて華があって、どこか人間離れ、かといって冷たさはない。私は別に多岐川ファンではないが、多岐川七瀬を知る者にとって、他の女優が演じる七瀬は到底受け入れられない。多岐川七瀬はそういうレベルに達している。コロンボだって寅さんだって他の俳優は演れない。それと同じ。できれば多岐川さんで『家族八景』『エディプスの恋人』もキッチリ製作しておいてほしかった。永遠にかなわぬ夢である。(映画化された際に筒井さんは他の女優について「もっとも七瀬らしい七瀬」と発言したらしいが、まあリップサーヴィスでしょう。)