ダウンタウンの名を初めて聞いたのは1985年(もう40年前になるのか)。大学2年の時、夏休みが終わったら、関西方面に帰省していた知人が「大阪にダウンタウンというスゴイ面白いコンビがいる」と興奮していた。そいつはダウンタウンの漫才ネタを完コピし人前で演じたりしていた。「ああ評論家」というネタだった。当時は同じような若者が全国各地にいたのではないだろうか。

 

俺はたけし信者だったので、「ダウンタウンとやらもたけしさんに匹敵しようはずがない」と思っていた。たけしさんの他、野球にも夢中だったので、この二つで忙しくて『ごっつええ感じ』は見ていない。「笑いといえばたけしの話術」派だったので、松本流「シュールな笑い」は仮に観ていても理解できなかっただろう。

 

『ごっつええ感じ』がナイター中継で急きょ飛ばされて、松本氏がフジに激怒したというニュースを聞いた時は、「自分の笑いに、そこまで誇りと自信を持つ奴がついに現われたか」という感じ。お笑い番組はナイターで飛ばされるのが当たり前の時代だった。この激怒はたけしさんにも志村さんにも出来なかったことだった。

 

昨日『水曜日のダウンタウン』をチラッと見て、松本氏が映っているのを見て嫌な気分になりテレビを消してしまった。俺は文春に洗脳されてしまったのか。リアリティを感じさせる記事なのも事実。松本氏が記者会見しないのは記事が事実無根なら当然ではあるが、不審を募らせる結果となっている。書かれている手口が普通の女性問題とはケタ違いに悪質・卑劣すぎて、たとえ裁判で勝ってももう「テレビの人気者」には戻れまい、と思わせる内容。

 

水道橋博士の本に、松本氏が太田氏を土下座させた話が出てくる。(最近の共演での太田氏の「威嚇したのはそっちでしょう!」というセリフはその時のことを言っている) その時松本氏は「俺をイジるんはやめときいな!」と怒鳴ったという。松本氏は文春に今同じセリフを怒鳴りたいのではないか。文春に土下座させてやると煮えたぎっているはず。記事が出るまで「自慢の息子」であり「自慢のお父さん」だった自分をここまで叩き落とされ、松本氏の怒りはいかばかりか。しかし60歳にもなって老身の母や思春期の娘につらい思いをさせるのはツライよな。誇り高き松本氏にはツラすぎる事態だろう。俺も歳だけはほぼ同年齢だからそのツラさはよく理解できる。

 

そう、松本氏にはなにか美学めいたものを感じてきたのだ。笑いの王者としての誇りと美学。それなのに最後がこんな結末では松本氏の美学が許すまい。おそらくテレビに復帰することはなくこのまま引退だろうが、「復帰なんかしなくていいから、とにかく文春メタメタにしたる」という気持ちだろう。

 

若いうちから笑いの天才といわれ、そのまま笑いの王者となり君臨してきた松本氏。

 

笑いの王者が突然退位するケースはたけしさんのフライデー事件の例くらいで、いったい次のお笑い王者は誰になるのか。王者はそう簡単には出現しまい。当分は空位が続くのでは。