最近なにかと忙しく、まともに本が読めていないのが苦々しい限り。筒井康隆の日記くらいしか読んでいない。

 

『腹立半分日記』(角川文庫)

筒井氏の会社員時代から人気作家時代までの日記が抜粋されて掲載。何度も読み返しているがやはり面白い。筒井氏ほどの大天才でも下積み時代があったことが驚き。『スーパージェッター』筒井脚本回だけ観てみたい。作家になってからの掲載分では『エディプスの恋人』執筆時期の分が載っており注目だがメイキングに触れる記述は無く残念。筒井氏が幾多の傑作をどのように書き上げていったか誰か体系的にインタビューしておかないと文化的に重大な過怠となるぞ。

 

『日日不穏』(中央公論社 単行本)

筒井氏の日記本ではこれが一番面白い。事件多数。筒井氏がプロ野球に熱中していた時期なので野球ファンの俺にとってはその意味でも面白い。書棚のどこかに紛れてしまっており今回は再読できず。

 

『幾たびもDiary』(中央公論新社 単行本)

面白くてすらすら読んでしまう。栄光に溢れた売れっ子作家の日々。115ページに「やはり旅行はすべて、自分の金でなくてはな。」との一文あり、我が意を得た思い。自分で稼いだ金による旅でないと本当の楽しみは得られないというのは私も常々感じている。筒井氏は各地の寺や神社を見て回っている。これは真似できん。小林信彦を褒めている。美味いものを食べいい宿に泊まっている。そういうのは良質で当たり前なので拾い物好き、掘り出し物好きの(要は貧乏性)俺は別にうらやましいとは思わない。よく書き、またよく読んでいる。まれに原稿料が明かされてるのも面白い。この日記にも度々登場する息子さんが亡くなったのを最近知った。筒井氏の落胆いかばかりであったか。同情に堪えぬ。

 

『偽文士日碌』(角川書店 単行本)

この日記に書かれている時期になると筒井氏の作品は私には高尚過ぎるものとなり全く読んでない。日記だけ読む。ドライブ旅行とテレビ出演の穏やかな日々。読んでてさして面白くないが74歳の巨匠の日記なのでこんなものであろうか。お笑い番組を見たりバナナマンを褒めたと書いている。74歳になって今どきのお笑い番組を見れる筒井氏の若さと貪欲さに感心もするが、若き日のタモリの凄まじい密室芸をさんざん見ていた筒井氏の目に、現在のお笑いはどう映っているのか読みたいがそういうことは書いてない。残念。東日本大震災当日の日記有り。筒井氏の知能指数は非常に高いものであることが『腹立…』に書いてあるが、こうして筒井氏が幸せな老年を送っているのを読むと「人生の幸福度は知能指数が決定する」ということがつくづく感じられる。