『男たちの旅路 車輪の一歩』

 

山田太一さん追悼の意味で久々にDVD見る。

スゴイ作品。密度が高い脚本。

材料の強さと料理人の確かなウデ。

高い評価を受けているだけのことはある。

テレビドラマは1979年の時点で

ここまで到達していたのか。

よくもこれだけのものを1回だけの放送のために

書いたね、山田太一さん。 

 

吉岡がスーパーマン過ぎるかな。

(しかし傑作ヒーローものの常で、ヒーロー吉岡は

車いすの青年ら、特に斉藤洋介さんに主役を譲り

脇役に回っている)

でもまさに視聴者の常識を覆し、

視聴者が考える「良識」が秘めた欠陥を暴き、

視聴者を見事に投げ飛ばした作品。

 

デリケートなテーマを扱いつつ、

健常者だけでなく、障がい者側に対しても

厳しいメッセージを送ってるとこがまたスゴイ。

「いくら世間が冷たく無理解でも、

世間を見限ったり、諦めたりしてはいけない」

と、なかなか言えないことを言っている。

バリアフリーという概念が無かった時代に、

山田太一さんはどうやってここまで先見の明を

持てたのか? 取材とか、

外国の例を研究したと推測される。

幸い脚本(を掲載した書籍)を持っているので

よく研究しよう。

 

最後の赤木春恵の涙は、娘の新たな挑戦を

見守る涙であり、また、

これからも世間の無理解と辛い戦いを

続けなければならないのかという

哀しみもないまぜになったものだろう。

この「ないまぜ」という状態を描くのは

至難の業。みごとにやり切っている。

素晴らしい。

 

デビュー作ながら一世一代の演技を

見せている斉藤洋介さん、あと斉藤とも子さん、

京本政樹さんらにとっても、

代表作といえる稀有な傑作。

斉藤とも子さんは少し

オードリー・ヘップバーンな感じあり。

若き岸本加世子さんも魅力的。

コメディエンヌな感じ。有能なCM演出家が

樹木希林とコンビを組ませたのもうなづける。