『誰もいない文学館』西村賢太
本の雑誌社 単行本 2022年初版 本体1800円
文庫を持っている出版社からの本ではないので、
もしかしたら文庫にならないかもと思って買った。
西村氏の古書マニアの知識がスゴイ。異常なまでの知識量。
マニア間では常識とされていることしか書いてないようだが。
マニア知識の具体的な記述はもちろん理解できないが、
マニアの思考回路とか判断基準の面白さで楽しく読める。
自分のやっている趣味がいちばん面白いという自信も
感じられる。
古書マニアの世界は伝統があるので、非常にアカデミック。
球場とか特撮、マンガのジャンルとは違う、
「研究が進んでいる感じ」が非常にうらやましい。
西村氏は中学生の頃から古い探偵小説にハマっていたという。
やはり、本を読むことにかけては
まぎれもなくド天才だったんだな。
そうじゃないとあんな面白い小説は書けまい。
「学歴がない」というだけの理由で西村氏が世間から
理不尽な扱いを受けて来たことは作中よく書かれている。
これだけアタマのいい人が。悔しかっただろうなあ。
西村氏や清張先生、上原氏や倉本氏と、どうやら私は
社会や時代に対し「コンチクショウ」と思っている作家が
好みのようである。