昌平、初優勝&初の甲子園出場ならず
■先行した花咲徳栄、猛追の昌平をタイブレークで破る
夏の埼玉大会の決勝が県営大宮球場で行われ、花咲徳栄が延長10回タイブレークの末に昌平を11-9で競り勝ち、5年ぶり8回目の優勝を果たした。花咲徳栄は8月7日に甲子園球場で開幕する「第106回全国高校野球選手権大会」に埼玉代表として出場する。
昨秋と今春、そして今夏の県大会決勝を同カードで戦ってきた両校。昌平は満を期してリベンジに挑んだが、3連敗を喫して初優勝、そして初の甲子園出場にも届かなかった。
それにしても壮絶な決勝戦だった。
1回表、花咲徳栄は今秋のドラフト候補として注目されている4番・石塚裕惺内野手の右3塁打で2点を先制、さらに3回表には3番・生田目奏外野手が右にソロ本塁打を放ち、3-0とリードした。
昌平も3回裏にタイムリー、4回裏には犠牲フライで1点を追加し、3-2と追い上げた。すると、花咲徳栄は5回表に二死満塁のチャンスをつくり、4番・石塚内野手が走者一掃の2塁打で3点を追加、6-2と再び引き離した。
ところが、終盤の8回裏に昌平が反撃を開始。無死1、2塁から3番・山根大翔外野手の右スタンドへの3ランで1点差にすると、さらに犠牲フライで1点を加え、ついに6-6の同点に追いついた。9回は両校とも得点ならず、延長10回タイブレークに突入した。
10回表、花咲徳栄は無死満塁にして相手の守備ミスでまず1点、さらに一死満塁の場面で9番・阿部航大内野手が走者一掃の2塁打で3点、そして相手の守備ミスで1点を加えて5点を奪って11-6とリードする。その裏に昌平の2番・大槻真広外野手が3ランを放ち2点差に追い込んだ。しかし反撃はそこまで。タイブレークを制して花咲徳栄が5年ぶりに甲子園切符をつかみ取った。
花咲徳栄は準々決勝の西武台戦でも8点差を追いつかれたが、延長10回に一気に4点を奪って勝利している。この試合と同じように決勝でも昌平に追いつかれたが、タイブレークに入った延長10回に強力打線がきっちりと決着をつけた。この2試合とも猛追されても逆転は許さず、タイブレークに入れば中軸を中心に切れ目のない強力打線が底力を発揮、敗けないことを証明した。プロ注目の石塚内野手は4安打4打点の活躍で勝利に貢献した。
今秋のドラフト有力候補の石塚内野手
優勝をあと押しした花咲徳栄の応援団
岩井隆監督は優勝インタビューで「最後まで自分たちの野球をやってくれた」と選手たちを評価。生田目主将は「甲子園では一戦必勝、全員野球でがんばる」と意気込みを語った。2017年に県勢初の全国制覇の実績を持つ同校の目標は、もちろん2度目の全国制覇だろう。
優勝した花咲徳栄の戦績
2回戦 花咲徳栄14-1越谷東 5回C
3回戦 花咲徳栄 9-0鴻巣 7回C
4回戦 花咲徳栄10-0星野 5回C
5回戦 花咲徳栄 4-1滑川総合
準々決 花咲徳栄12-9西武台 延長10回TB
準決勝 花咲徳栄 3-1山村学園
決勝 花咲徳栄11-9昌平 延長10回TB
注:TBはタイブレーク
==================
熱戦に2万人超
内野・外野とも満席
■見たことのない風景
第106回全国高校野球選手権埼玉大会の決勝「花咲徳栄vs昌平」には大勢の観戦者が押し寄せて、内野席はもちろん、芝生の外野席も満員状態になった。
県営大宮公園球場の収容人数は内野席1万7000人、外野席3500人。一般内野席、応援団席の上段通路にも立ち見の観客が三重の列をつくり、試合が見えづらいほどだった。
試合開始後もチケット求めて長蛇の列
試合開始は10時。30分前に球場に到着したが、入場券を求める来場者であふれ、最後列に向かう。いつもの入場券売り場から300mほど歩いて、やっと最後列に並べたが、そこは球場の施設外だった。「試合が終わっちゃうよー」という女子高校生の嘆きも聞こえてきた。高校野球ファンをはじめ昌平や花咲徳栄の在学生、OB、 その知り合いなども多かったようだ。
4列で数百メートルの列。あまりにも長い列ができたからだろう、いつもは開いていない臨時入場券売り場も解放され、それからは列の流れも少し動き始めた。チケットを購入してスタンドに入ったときは2回途中だった。もちろん内野席はいっぱい、いつも人を見かけない外野席にも観客が詰めかけていた。内野も外野にもこんなに観客がいる風景は、これまでに見たことがない。
今夏は猛暑の影響なのだろうか、それまでは陽の当たる暑い観客席はガラ空き状態が目立った。それが、決勝では大観衆である。埼玉を代表する強豪・花咲徳栄と初優勝、初の甲子園出場をめざす昌平の戦いに注目、関心を持った人たちが多かったということか。敗れたけれど昌平の実力、レベルの高さは間違いなく埼玉ではトップクラスで、花咲徳栄にとってはこれからも油断できない難敵な存在になってくるだろう。