伝統校、進学校、初候補がズラリ

 

第96回選抜高校野球大会の「21世紀枠」に選ばれる2校はどこになるのかーこれまで21世紀枠は3校だったが、枠数の見直しによって2024年センバツからは1校減って2校になる。

 

すでに決定している各地区候補9校の中から、来年1月26日の選考委員会で東西関係なく2校が選出される。2校は一般選考29校、神宮枠1校とともに、2024年3月18日から13日間、甲子園球場で開かれるセンバツ大会に出場する。出場32校の組み合わせ抽選会は3月8日。

 

21世紀枠は、秋季都道府県大会のベスト16以上(加盟校129校以上の場合はベスト32以上)」を対象に、▽部員不足、練習環境などの困難を克服▽文武両道など他校の模範▽地域への貢献活動▽近年の戦績は上位でも甲子園出場の機会に恵まれていないーなどの要素も加味されて選出される。

 

■8校は初の地区候補、半数は伝統校

 

地区候補9校のうち8校は初の候補校。また、9校のうち8校は公立校で、私立は東海地区の帝京大可児(岐阜)の1校のみだった。

 

今回は伝統校が目立つ。1891年~1902年(明治24年~同35年)までの間に野球部が創部された伝統校は5校、半数以上を占めた。水戸一(茨城)の創部132年をはじめ仙台一(宮城)、田辺(和歌山)、鶴丸(鹿児島)、大洲(愛媛)も120年以上の歴史を持つ伝統校だ。逆に創部が比較的に新しいのは1989年の帝京大可児、1987年の岡山城東である。

 

■地区大会出場4校、すべて初戦敗退

 

23年秋季都府県大会では、富山北部(富山)、田辺、岡山城東の3校が準優勝の成績を残して地区大会に出場。また、県4強の仙台一も宮城3位で地区大会に参加したが、4校ともに無念の初戦敗退となった。北海道は全道大会4強の別海が候補になった。

 

最近の傾向をみると、県大会などで上位成績を残して地区大会に出場したチームからの選出が目立っており、前述の地区出場組から少なくとも1校は選ばれることになりそうだ。

 

  9校の秋季大会戦績

■目立つ文武両道、県トップ進学校も

 

県内屈指の進学校が揃った。偏差値73の水戸一は茨城では県トップ校、また、同じく偏差値73の鹿児島の鶴丸も公立では県トップ校で、いずれも国立、私立の超難関大学への合格者を多数輩出しているまさに超進学校である。

 

また、県内有数の進学校を誇る岡山城東、同じく進学校の仙台一など、他校の模範となる文武両道の候補がズラリと顔を揃えた。こうした進学校は野球部の専用グランドを持つところはほとんどなくて、他部とグランドを共用しているため練習時間が制限されているのが共通点である。

 

水戸一は部員24人、グランドを共用するため平日は約2時間余という練習環境の中で県4強入りした。鶴丸の平日の練習時間は1時間ほどだが、選手の自主的なアイデアで練習を効率化し、強豪・鹿児島実などを下して県4強入りを果たした。

 

春夏5回の甲子園経験を持つ岡山城東もグランドは共用、放課後の練習時間は1時間半という厳しい環境を克服して県大会で準優勝した。

 

■困難克服、 地域貢献に取り組む

 

北海道の東端部に位置する別海は乳牛10万頭以上が飼育されている酪農の町。酪農・農業学科なども設置されており、地域産業を支える人材育成に貢献している。

 

富山北部には全国でも珍しい「くすり・バイオ科」がある。「富山の薬売り」でも知られている富山県は国内有数の医薬品生産拠点でもあり、その薬産業を支える人材育成でも地域に貢献している。

 

少年野球教室の開催や地域の清掃活動に取り組んでいる学校は多い。進学校で文武両道の仙台一は海岸湾の防災林の育樹活動など、また帝京大可児は小学生対象の野球教室を開催、田辺も近隣浜辺の清掃や少年野球チームとの交流などの地域活動を行っている。

 

岡山城東も清掃活動や野球教室など地域活動に熱心。大洲の練習環境もグランドを共用して2時間ほど、冬には海岸清掃をするなどボランティア活動にも熱心に取り組んでいる。

 

■甲子園は遠い聖地になっている

 

甲子園出場経験では、岡山城東が春3回夏2回で最多を誇る。田辺は春2回夏1回、仙台一と水戸一が夏3回、富山北部は春1回夏1回、鶴丸も春1回を経験している。

 

鶴丸が選ばれると約100年ぶり、水戸一なら70年ぶりになる。直近では岡山城東が96年春に出場しているものの、出場経験のある6校とも2000年代に入ってからの出場はなし、甲子園は「遠い聖地」になっている。

 

別海、帝京大可児、大洲の3校は、春・夏を通じて甲子園の出場経験はなく、選ばれると初出場になる。

 

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独断的予想

選考・選出のポイント

戦績、文武両道、困難克服、地域貢献など

 

21世紀枠の2校はどこになるのか。

 

2024年春のセンバツから東西関係なく2校を「選抜」することになった21世紀枠。地域にこだわらないということなので、東日本から2校、西日本から2校が選ばれる可能性もあるということだ。今回の枠数の減少によって選考方法、評価の重点ポイントなどは変わるのか、その点にも注目したい。

 

▽勝てるチームなら田辺

 

今回はあくまでも個人の独断予想としてまとめてみる。

 

21世紀枠での出場校は苦戦を強いられている。2015年に松山東(愛媛)が初戦勝ちした以降は一般枠出場校との対戦では22連敗中で、実力差は明らかだ。(連敗中に21世紀同士の対戦で勝者が2回戦に進出したことは2回ある)。

 

 

では、一般枠出場校を相手に力を発揮できるチームはあるのだろうか。

 

秋の戦績上位組では田辺の内容が光っており、一般枠に勝てるチームとしては一番手だろう。選手は18人だが、県大会では市和歌山、智辯和歌山の強豪勢を連破して決勝進出、決勝では3-5で敗れて優勝は逃したものの近畿大会に進出。地区大会1回戦でも京都国際を相手に延長10回タイブレークに持ち込んで、2-3の1点差で惜敗。

 

相手の京都国際は近畿4強入りしてセンバツ出場を確実にしているだけに、田辺も甲子園で十分戦える力があることを証明した。清掃活動、少年野球チームとの交流など地域貢献にも熱心なので、選出される可能性はあると予想する。

 

▽文武両道なら水戸一、鶴丸

 

県下屈指の進学校である水戸一、鶴丸、仙台一などの文武両道の学校も甲子園の舞台で1勝してもおかしくはない。

 

水戸一は昨年から硬式野球部にスポーツ(野球)に秀でた選手を入学させる特色選抜組の制度を導入させた。その制度で入学したエース・小川投手は最速141位㌔の好投手、県大会では3試合連続完封するなど早くもその制度による成果は出ている。鶴丸は超進学校でありながら鹿児島商、鹿児島実といった強豪勢を下して県4強入りした。

 

▽ハンディ克服なら別海

 

大きなハンディを背負いながら全道大会で4強入りした別海の評価も高くなりそう。2回戦、準々決勝ではいずれも4-3で競り勝った。準々決勝では優勝した北海を相手に8回表まで1-2と互角の戦いを展開、その裏に得点を許して1-6 と敗れたものの、勝負強さを見せつけた。

 

別海は気温が0度未満の冬日が半分以上もある厳しい練習環境の中で、農業用ビニールハウスを活用するなどの工夫をしながら、わずか16人の野球部員で全道4強入り、その存在を強くアピールした。全道4強に困難克服・地域貢献を加味されて、日本の最東端から初の甲子園出場校が誕生する可能性もある。

 

▽再挑戦の富山北部はどうなる

 

北信越地区の富山北部は3年ぶり2度目の地区候補になった。2023年は県大会の春、夏に連続で準優勝して好成績を続けている。

 

1回目は統合した学校との連合チームで地区候補になって話題を集めた。選考委員会で最後の枠をめぐって論戦が伯仲、投票で敗れて補欠1位にとどまった経過がある。地区候補を複数回重ねて甲子園行切符を手にした例は何回もある。連合チームから苦難を乗り越え、さらに地域貢献も加味されて55年ぶりの甲子園出場をめざす。

 

ただ、悩ましい点もある。すでに北信越地区は一般枠2校に加えて明治神宮枠も確保しており、もし富山北部が選ばれると北信越地区から4校が甲子園に出場することになる。さらに言えば同地区からは3年連続、富山県からは23年の氷見に続き2年連続選出ということにもなる。この「4校出場&連続出場」がネックになるかもしれない。

 

もっとも、過去には東北地区から5年連続出場の事例もあり、他の地区でも3年連続、2年連続出場したケースは普通にあった。また、和歌山、島根から2年連続で選出されたこともあり、最初から選外ということにはならないだろうけど、さて。

 

▽9校は練習に励みながら吉報を待つ

 

結論 まず、戦績で田辺。そして、困難克服の別海、文武両道の水戸一と鶴丸による三つ巴戦になるのでは。富山北部の選出があれば、「北信越から4校センバツへ」というニュースになるかも。

 

春夏5回の甲子園出場経験を持つ文武両道の岡山城東、県内有数の進学校で文武両道の仙台一、海岸清掃などのボランティア活動などを行って地域に貢献している大洲、私立から2回目の21世紀枠出場をめざす帝京大可児も、冬場の練習に励みながら甲子園招待の吉報を待つことになる。

 

2024年1月26日(金)の選考委員会で21世紀枠2校を含めて出場32校が正式に決まる

 

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