勢いがついた豊昇龍

安定感抜群の若隆景

 

■まだ続く「珍事や異変」、強い大関誕生に期待

 

125年ぶりの「1横綱1大関」、61年ぶりの「関脇4人、小結4人」―来年1月8日に初日を迎える大相撲初場所は歴史的にも珍しい番付編成となった。

 

2022年は31年ぶりに6場所全てが違う力士が優勝するという珍事があり、また史上初の3場所連続で平幕力士が優勝する快挙もあった。2023年も引き続いて歴史に残る「珍事や異変」などが起きるのだろうか。相撲ファンにとって興味深い年になりそうだ。

 

それにしてもこの数年、大関陣のふがいなさが続いている。21年5月場所には久々に大関4人編成になったが、出場停止になって降格した朝乃山をはじめ御嶽海、高安、そして正代も大関から転落、いまや貴景勝1人だけになってしまった。横綱をねらえる強い大関の誕生が待たれるところだ。

 

横綱照ノ富士は両膝の手術を経てリハビリや基本運動に励んで順調に回復しているけれど、初場所の出場は厳しそうだ。大関貴景勝は11月場所では12勝3敗の成績で優勝決定戦に参戦できたものの、平幕力士の阿炎に初の賜杯を許して2年ぶりの優勝を逃してしまった。

 

それでも、「優勝に準ずる成績」は残したので、初場所に優勝すれば「横綱昇進」の声も出てきそう。ただ、その場合は14勝か全勝Vの圧倒的強さが求められるのではないか。横綱不在の中での13勝以下の優勝では、いくら「横綱待望論」があったとしても見送られる可能性大である。

 

 

■関脇の若隆景と豊昇龍は14勝以上の優勝なら大関昇進の声も

 

2023年の大きな注目点は大関昇進をめぐる争奪戦だ。「関脇4人、小結4人」の三役陣の中には、「新大関」をねらう成長株が揃う。1番手を競うのは東関脇若隆景と西関脇の豊昇龍だろう。

 

若隆景は6場所連続で関脇に座り続けて安定感は抜群。3月の春場所は関脇昇進していきなり12勝3敗の好成績で初優勝し、「一気に大関へ」と期待されたが、その後は2ケタ勝ち越しが続かず、「大関候補」のまま。それでも2022年は57勝をマークして最多勝を獲得、優勝した当時の力強さが戻れば大関昇進の目安である「直近3場所を三役で計33勝」をクリアするのはそれほどむずかしいことではない。初場所に2ケタ勝ち越しができれば大関はグッと近づいてくる。

 

勢いでは豊昇龍が上回る。春場所に小結に昇進してから5場所連続で勝ち越し、直近の11月場所では11勝4敗で初の2ケタ勝ち越しを決めて、大関昇進の起点をつくった。決まり手は押し出し、寄り切りが中心だが、「その他」が6割もある。動きも軽快、粘りのある相撲で多彩な技を繰り出して勝ち切る相撲を取る。ただ、3連敗、4連敗する場所もあるので、この「連敗グセ」を修正することが今後の課題になるだろう。

 

叔父の元横綱朝青龍にはまだ及ばないけれど、相撲内容には元横綱を彷彿とさせるものがある。初場所に10勝以上の成績を残せば、3月場所は大関取りに挑む場所となる。

 

若隆景と豊昇龍の直近2場所の成績はいずれも計19勝11敗、もし初場所に14勝以上ならば33勝に届く。かなりハードルは高いが、可能性はゼロではない。

 

 

■霧馬山と初三役の琴ノ若、若元春はまず2ケタ勝ち越し

 

小結霧馬山も直近2場所は三役で連続勝ち越し。まだ2ケタ勝ち越しはないので、まずは地力強化の必要性はあるものの、伸びしろは十分ある。

 

小結琴ノ若については前頭上位で戦いながら力をつけて、初の三役入りを果たした。父親は元関脇琴ノ若で6組目の親子三役の誕生となった。25歳の189㎝、167㌔の大型力士は、初場所で大関昇進の起点をつくれるか。

 

前頭で連続2ケタ勝ち越しの成績を収めて新三役入りした小結若元春も大関候補の1人に浮上した。弟の関脇若隆景の背中を見ながら番付を上げてきたが、大関取りレースでは同じスタートラインに立ったことになる。「三役8人」を対象に調べた幕内通算勝率では若隆景と若元春の兄弟力士が1、2位を競う形になっている。

 

初場所の三役8人を対象にした幕内通算勝率ベスト5はー。

➀若隆景  130勝85敗  .605

➁若元春    53勝37敗     .589

③琴ノ若   119勝92敗  .564

④高安   512勝397敗 .563

⑤豊昇龍  116勝92敗  .558

 

元大関高安は優勝、大関復帰などを目標に。正代は10勝で復帰めざす

 

元大関の高安は幕内で約900回戦って通算勝率は5割6分を超える。大関時代にケガをして平幕まで降格、その後は復帰と休場を繰り返す試練の相撲人生。ようやく底力を発揮できるまでに復活して、9月場所は前頭で11勝、11月場所にも12勝の好成績で優勝決定戦に参戦、最後は力尽きて敗れたが、初場所番付では1年半ぶりに関脇に戻ってきた。来年は「優勝、大関復帰、そして横綱昇進」の3つの目標を掲げて土俵に上がると明言している。

 

先場所、カド番で負け越して関脇に転落した正代は10勝を目標にして大関へのカムバックをねらう。しかし、幕内通算勝率は.527でベスト5位にも入っておらず、数字的には物足りない。大関在位の13場所の勝率も.513とかなり低い。横綱にはほど遠い成績という意味で「クンロク(9勝6敗)」大関という呼び方をされるが、この勝率では「ハチナナ(8勝7敗)」にも届かない。ちなみに大関貴景勝の大関勝率は.651で10勝5敗ペースの成績を残している。

 

それでも正代は休場が極端に少ない。大関昇進後の場所で10日間休んだだけで、その後は休まず土俵に上がり続けていることは評価される。しかしながら最近の相撲では相手の「押し・突き」をこらえきれずに、あっさりと土俵の外に出されるパターンが多く、足腰の弱さを露呈しているようにも見える。初場所に10勝すれば大関に戻ることはできるけれど、従来通りの気持ちや戦術で土俵に上がっても白星の量産はムリだろう。もし戻れなかったら平幕力士で終わってしまう。だからこそ、春場所は不退転の覚悟を持って土俵に上がってほしい、とファンは切に願っているはずである。

 

■先場所初Vの前頭阿炎も有力候補に。朝乃山は関取復帰

 

先場所、三つ巴の優勝決定戦を制した前頭3枚目の阿炎には熱い視線が送られている。協会のガイドライン違反で3場所の出場停止を受けて幕下まで急降下した。親方の叱咤激励もあって土俵に復帰後は一気に番付を上げて関脇まで戻ってきた。ところが、9月場所はケガで全休となり前頭中位まで番付を落とした。

 

復活は早かった。休場明けの11月場所に12勝3敗で初優勝を飾り、再び脚光を浴びることになる。初場所も期待通りの活躍を見せてくれるだろう。関脇・小結陣がモタモタしていると一気に大関候補の本命に躍り出る可能性だってある。幕内通算勝率も.564と上位三役陣にも引けを取らない。苦難を乗り越えて「心・技・体」の面でも成長著しい。

 

大関経験者の朝乃山が1年ぶりに関取に復帰、十両12枚目からスタートする。2場所で十両を通過、再入幕して3場所で三役入りして大関への起点をつくる。そして早ければ2024年春場所には大関に復帰するーこれは期待を込めての予想である。

 

 

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