<前編>

 

3か月ごとに循環器内科に定期検査で通っている。今日6月2日がその日だ。

 

10年ほど前に心臓の痛みで、夜中に病院にタクシーで駆け込んだら、「即入院」と言われてしまった。そして翌日にはカテーテル手術が行われ、5日間入院した。病名は「不安定狭心症」。「心筋梗塞の一歩手前だった」と医師から説明されて、「ああ、もうオレはこれで終わったか」と一瞬だけだったが、覚悟をした。

 

その後、3年間ほどで3回のカテーテル検査と手術を繰り返して、この7年間は薬を飲みながらでもあるけど、無理しなければ仕事もできる安定期に入っている。それでも、3か月に1回の採血、心電図などの検査は欠かせない。

 

最近の検査結果については、薬を服用していることもあって、血圧、血糖、コレストロールなどの数値は正常値内あるいはやや高め程度。担当医師も「特に問題ないでしょう。塩分の摂りすぎには気をつけて」とアドバイスしてくれる。

 

それでも、毎回検査の当日はどういう診断を下されるか、診察前の待合室ではハラハラドキドキ状態。なぜ、そういう心理になるのか、トラウマのせいかもしれない。以前、体調のいい時に自信満々で検査を受けたら、担当医師から「次はCT検査をしてみましょう」と診断され、そのCT検査の結果が「カテーテル手術」だったからだ。ショックだった。

 

検査の中で一番つらいのは、採血の時に注射針がなかなかスムーズに入らないことだ。血管が非常に細いらしい。比較的に左腕のほうが入りやすいけれど、それでもダメで右腕に変える場合もある。それでもうまく入らない時は、担当者が交代したり、時には別のところにあるベットに移動させられて横になり、採血してくれることもある。「痛かったでしょう。ごめんなさいね」と優しく声をかけてもらうけど、こちらとしては、「血管が細くて申し訳ない」と恐縮しているのである。

 

診断結果がまずまずの時に病院帰りに必ず行うことがある。スーパーに立ち寄って「イカの塩辛」を買うこと。「3か月間、よく頑張ったな」という自分への褒美なのだ。仕事仲間に、以前に

この話をしたら「なんだよ、それ」という顔で笑われてしまった。

 

狭心症になるまでは、1週間にひと瓶を空にするほどの好物だったのに、その病気になってからは自分でも信じられないほど食するのをピタリとやめた。塩分摂りすぎは高血圧になるからだった。ご褒美としてたまに食べるようになったのは、3年ぐらい前から。もちろん担当医師には内緒。

 

さて、今回もイカの塩辛はゲットできるのか、今日4時ごろには結論が出るはず。