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航空コンサルタント・うえしんのブログ

最新の航空業界・航空産業の動向について語ります。

2012年4月25日、初の国産ジェット旅客機MRJ(ミツビシリージョナルジェット)の開発遅延が発表されました。初号機の納入は現計画から1年超遅れの、2015年夏以降になるとのこと。

実はこれ、2009年に続いて2度目の遅延発表です。前回も1年超の遅れを発表しましたから、これで、当初の計画からすると、2年半の遅れになります。MRJは、1960年代に開発されたYS-11(プロペラ旅客機)以来、約半世紀ぶりの国産機として注目されているだけに、心配です。

しかし、実は最近の航空機開発の事例を見ると、開発遅延は珍しいことではありません。超大型旅客機A380の1年半遅れを始め、ボーイングの最新鋭中型機787は、3年半も遅れました。MRJの競合機である中国のARJ21に至っては、当初計画から7年遅れとなっていますが、今後もどうなるか分かっていない状態です。787への対抗としてエアバスが開発中のA350は、いまのところ半年遅れの見通しですが、今後このスケジュールを本当に守れるのか、業界関係者の注目を集めています。ですから、MRJの2年半なんて、ごくごく平均的な遅れなのです。(下表参照)

では、なぜ航空機開発の遅延が常態化しているのでしょうか。それは、そもそもメーカー側が無理な開発計画を組むからです。では、なぜ無理な計画を組むのか。それは、注文を取るために、そうする必要があるからです。

航空機の開発には莫大な開発費が掛かりますので、メーカーは、航空会社からの注文が取れて初めて、開発を決心します。787の開発着手に当っては、全日空がいわゆるローンチカスタマーとして50機の発注を行いました。しかし、もしこのときに、納入が7年とか10年も先になるとメーカーから言われていたらどうでしょう。航空会社としては発注しづらかっただろうと思います。そんなに先であれば、しばらく様子を見ようということになっていたでしょう。

したがって、メーカーとしては、多少困難であっても、航空会社にとって受け入れられやすい開発計画を提示せざるを得なくなります。もちろん、メーカーとしてはその計画を達成するために全力を尽くしますが、最終的には納入遅延金を航空会社に支払ったとしても致し方なしというところです。そのような計画を提示しなければ、注文が取れないわけで、注文が取れなければ、開発に着手することができないわけですから。

MRJも、ご多分にもれず、積極的な開発計画を提示しました。そしていま、その計画から2年半の遅れが出ているという状況です。つまり、ボーイングやエアバスのような一流メーカーと同じ道をたどっているわけです。

だから別に、問題はないのです。。。

と、言いたいところですが、問題は、MRJが開発決定から5年近くが経とうとしているのに、受注がほとんど取れていないことです。787では、全日空の発注を皮切りに、次々と受注を獲得し、現時点で854機を受注しました。A350も開発発表からあっという間に500機を超える注文を取りました。引き換え、MRJでは、全日空から15機の発注を受けて以降も受注が伸び悩み、現時点で70機の注文を得ただけです。

実績のあるメーカーには、だまっていても注文が来ます。一方、MRJは新参者です。航空会社にしてみれば、実績のないメーカーからの新製品を買うのに、実物を見ないで、先行発注するのは相当な勇気が必要です。だからこそ、MRJは、一刻も早く開発を終えて、実機が飛ぶ姿を披露しなければいけないのです。もちろん、中途半端な開発はできませんが、後発者が先行者と同じことをやっていていいのかということです。

日本はいまだ航空機産業の後進国です。終戦後7年間にわたって航空機開発を含めたあらゆる航空事業への関与を禁止されました。この間に航空機技術の発展に乗り遅れたわけです。また、武器輸出三原則がありますので、防衛航空機の国際共同開発にも参加することができず、最新技術の取り込みが困難です。非常に厳しいハンデを背負っています。

しかし、それを言い訳にしていたら何も始まりません。ハンデを乗り越えるためには、まわりと同じことをしていては、埒が開きません。その覚悟があるでしょうか。

航空機開発には莫大な資金が必要です。しかも、1機種を開発すればよいというものではありません。製品を1つしか持たないメーカーから、ものを買う気にはなかなかなれません。複数の機種を開発して、実績を積まなければいけませんし、製品ラインナップを取り揃える必要があります。そのためには、もはや一企業の枠を超えて、国としての覚悟をも問う必要があります。

国家としての航空機開発のメリット(産業創出や国威発揚)とデメリット(莫大な税金投入)を明らかにして、日本国としての一度賛否を問うべきだと思います。航空機開発をやるのか、それとも、もっと別のことにお金を使うのか。

MRJは累計1,000機の受注を目指していますが、おそらく現実はかなり厳しいでしょう。しかし、それで止めてしまってよいのでしょうか。YS-11は、182機で生産が打ち切られましたが、それから、半世紀近くにわたって日本では本格的な航空機開発が行われてきませんでした。なんとも、中途半端です。やるのか、やらないのか。もし、やるのなら、徹底的にやらなければ、成功は見えてきません。中途半端にやるのが、一番の無駄です。

今回のMRJの遅延発表を契機として、日本の航空機産業をどうしていくべきなのか、活発な議論がされることを期待したいと思います。