こんにちは。

放課後児童支援員の「しんごうき」です。このブログにお越しいただきありがとうございます。

 

このブログは、

小学生の放課後の安心・安全を担う「放課後児童支援員」がその処遇の悪さから「支援員を諦めるより他ない状況」から抜け出す方法や考え方を伝えるものです。

 

■下浦忠治先生の日曜講座を受講して(上)

今日は岡山県学童保育連絡協議会が主催してくださったZoomでの日曜講座にて、放課後児童支援員認定資格研修の講師を務められてる下浦忠治先生の講義を受けました。その内容をまとめながら、私の視点で放課後児童支援員(以下、児童支援員)に大切だと感じたことをお伝えしていきます。

 

◆学齢児にみられる関係性の変化

下浦先生の講義は『子供と保護者の生活を支える視点』というテーマでスタートしました。最初に学齢期における関係性の変化をお話され、いくつかある中で次の3つのワードが記憶に残りました。

※学齢期とは、学校に就学して教育を受けることが適切とされる年齢のこと。

 

①放課後の塾化

 年々、放課後児童クラブ(通称、学童保育)や放課後子供教室の内容が塾や習い事の要素が色濃くなってきています。毎日の放課後のスケジュールがパンパンで、やっと施設に遊びにきたのに、塾の宿題が終わらなくて結局遊べずに塾に行く姿をみると切なくなります。

 

②評価の文化

 これか家庭に入りこみすぎていて「できる・できない」を気にする児童がおおくなり自己評価を下げてしまっています。

 

③親はスマホ、子はゲーム

 「遊びは子どもの主食である」という日本医師会と日本小児科医会の願いの込めたポスターがあるのをご存知でしょうか。すこしでもスマホを見る時間を少なくして子どもたちとふれあい遊びを促進するポスターですが、家庭内にこの風景が定着しつつあります。



 

これら3つの根底に共通しているのは「大人の余裕のなさ」ではないでしょうか。大人が自分に余裕を持てず、子どもの顔色や様子を見ていれば気が付けることにも、気が付けなくなっている。その要因は様々あるとは思うのですが、何がそれを生み出し、それに対して児童支援員にできることは何なのかと考えてしましました。

 

 

◆親の余裕の無さを生み出す背景と、それが生み出すもの

次に親の余裕の無さを生み出す要因である格差を貧困についてお話がありました。日本は、相対的貧困※※率13.9%(2015年)で、7人に1人が貧困という状況です。母子家庭は120万世帯を超えているが。生活保護を受給している家庭は約1割。あるお母さんは子どもたちの夕食を作った後で居酒屋に皿洗いのバイトにいき、子どもたちは今日の学童であった出来事を話すチャンスもない。さらに学年が上がれば、親の負担を増やしたくないからと、塾や習い事に行きたい気持ちを抑え込む子が出てきてしまうそうです。

 

※※相対的貧困とは、その国の文化水準、生活水準と比較して困窮した状態を指します。これに対して、人間として最低限の生存を維持することが困難な状態を絶対的貧困といいます。日本は街でガリガリにやせ細って今にも飢え死にしそうな子を見かけることがないので貧困家庭は少ないのではないかと捉えがちですが、相対的貧困率で把握する必要があります。

 

余裕のなさが生み出す虐待やDVについてもお話がありました。ここまで流れだと虐待はひとり親などの貧困家庭に多そうな予想ができますが、実はひとり親家庭より実父母家庭のほうが虐待は多いそうです。それ以外には「面前DV」と「教育虐待」という心理的虐待が印象に残りました。

 

①面前DV

これは子どもには直接、暴力を振るわずに、子どもの目の前で、母親(もしくは父親)に暴力をふるうことです。子どもは大好きな母親(父親)に暴力を振るわれるので心理的に傷つきます。 

 

②教育虐待

「良い中学や一流の大学に我が子を入学させたい!」という気持ちが暴走して発生する虐待です。テストは100点でないとダメだしをされてしまったりするそうです

 

この二つの心理的虐待を自分の経験に当てはめて考えてみると、面前DVは子どもの前で両親がケンカしていることも含まれるので、大小影響が異なるにせよ被害を受けている児童が多そうな印象をもちました。

 

教育虐待は、ごく軽いものですが思い当たり顔が浮かぶ子どもが何人もいました。面談や迎えの際にここぞとばかりに日頃のガンバりを伝えてもその後子どもからの様子はあまり変化がなく支援員みんなで頭を抱えたものです。そしてその子が他の子に意地悪をしたり、友達の文房具を取った疑いがある話を耳にすると「お母さんに認められらにことからの行動かな」と考えてさらにやきもきした記憶を思い出しました。結局その子には大したアプローチもできないまま卒業となってしまいました。

 

◆虐待が子どもにもたらす5つの影響

間接的にせよ直接的にせよ児童が虐待を受け続けるけると次のような影響が出るそうです。

 ①脳の前頭前野の縮小  

 ②愛情不全・障害

 ③自尊感情・自己評価の低落

 ④自己抑制の育ちそびれ(ウソや盗みなど)

 ⑤攻撃性  

   ※思考・感情をつかさどる部位

なんとなく①から③は虐待を受けた子の内側に、④と⑤は外側に影響のベクトルが向いているようです。①の前頭前野の縮小は、④の自己抑制にも関係がありそうな気がします。④についての下浦先生のエピソードがとても衝撃的でしたのでご紹介します。虐待を受けていたある男の子は、友達のデジモンカードがつい欲しくなって盗んでしまいました。それを机の置くなどに隠すこともせず、見つかりやすい場所に置いていたそうです。「盗む」という行為に対する罪悪感の無さを物語っていると感じました。このように悪い行為を抑制できなくなれば、たとえ親の虐待から逃れたとしても、坂を石が転がっていくように自然に身を崩していってしまうのではないでしょうか。

 

虐待の影響が出始めらた児童支援員には何もすることができないのでしょうか。それには下浦先生はこのように仰っていました。「(自分を)認めてくれて、思いを受け止めてくれて、愛してくれる人との出会いがあれば回復していける」と。

 

この環境変化に保育士、教員、恋人そして児童支援員も含まれています。つまり私たち児童支援員によって、回復やその手助けをすることができるのです。

 

※次回は「虐待を受けた子どもが大人になって虐待しないようにするために大事なこと」をお伝えします。

 

 

■■■まとめ■■■

・学齢時における変化には「放課後の塾化」「評価の文化」「親はスマホ、子はゲーム」などがある
・日本は、相対的貧困※※率13.9%(2015年)で、7人に1人が貧困という状況
・虐待の影響は「認めてくれて、受け止めてくれて、愛してくれる人との出会い」があれば回復する

 

 

私が下浦先生を知るキッカケとなったのは放課後児童支援員認定資格研修の会場でした。どの講義も勉強になったのですが、下浦先生の講義はわかりやすく、また事例も豊富で自然と引き込まれ、聞き入ってしまいました。また講義冒頭で児童支援員の処遇改善のお話をされていて「諸先輩方が色々処遇改善で戦ってきてくれたお陰で、認定資格がつくられ、こういう研修を受けられるのだよな」としみじみと感じたのを強く覚えています。それからご縁が無くてこのような形でやっと講義が受けられて今日は充実した休日を過ごすことができました。下浦先生、本当にありがとうございました。そして最後までお読みいただきありがとうございました。