徳島市に入り、ひたすらに国道をすすむ。
アスファルトのゆるーい坂をのぼり、頂を越え、また降りる。
車でいけばガードレールのむこうに見える緑の中を抜ける気持ちのいいコースのはずだ。
だが足でいくと景色の捉え方と感じ方は全くちがう。

ペラペラ漫画を観るような車での景色とぺらぺら漫画の一枚目が延々続くような景色。
お話はすすむのに背景が全くかわらない紙芝居のような感じだ。
体にとっても車のドライバーがアクセルとブレーキを使い分けるように、ウォーカーも登りは太もも裏と心肺機能に、そして下りはつま先と前太ももに非常に負担がかかるので使う筋肉が違う。町歩きではほとんど体験できないような歩きによる筋肉の使い方、筋の動きが違う事を一つ一つ痛みをもって知覚していく。

眼前に広がるパノラマを楽しんでいる余裕は正直ない。



道中、遠くに見える民家があり、お家の門の前でなぜかずーっっとこちらをみている年配の方が見える。
だれかのかえりをまっているような、何かを待っているようにずーっと道をみている。

その方との距離が縮まったとき、

"please come here and..."

”??”

再度 “please come and..."

”あ、日本語わかります?”

とおっしゃるその男性。

”あ、はい、日本人ですが…。”と私。

”ちょっとまってねー”
と家の中に消えていき…。

10秒もたたないうちに中から出てきたその方の手には一本の缶コーヒーが。

”これ、お接待!格好がそんなんだから外国人かと思っちゃった。結構外国人も多くてね”とのこと。

無糖派の方でもこうして頂いたら微糖派になってしまうんでないかというほど、気持ちがいいほどのお接待ぷり。
微糖だろうがgeorgiaだろうが、なんだろうが、その日飲んだ最上のコーヒーはこれだった。

お遍路さんが12番から13番にいくときに必ず通るであろうこの道、おそらくずーっとここでお遍路さんがくるのを雨の日も風の日も(←たぶん)毎日待っているのだ。
そして一本のお接待。
10数キロをあるいたあとでこのお接待。

生涯忘れられない缶コーヒーとなった。





おじさんにお礼をいい、さらに数百メートルもいくとコンビニを発見。
もれなくトイレを借り、簡単な食事も買い、パワー補給に大事なエクレアをGETした。
今後各地でいろんなエクレアを食べる事になろうとはこのときは知る由もなかったが、この旅はじまって初のエクレアだったのではなかろうか。


甘いものをたべ、ブーストがかかったところで13番大日寺に到着。
ここはご住職が韓国の方ということで有名なお寺。

要領を得てきたのでサクサクと本堂、大師堂と納経して
納経所にて御朱印を頂きここをあとにする。





ここからは17番井戸寺までは比較的近い距離でお寺がまとまっている。
入れ食いならぬ、入れウチだ。


いいテンポで次の14番 常楽寺へ。



途中だんだん人里っぽくなってきてところどころに神社や祠が増えてきた
なかには素敵なアプローチや立派な社、鳥居があるものもあった。

時間があればしっかり見たかったが、今日は17時までに井戸寺にいかないと
納経所がしまるのでパスとした。


そうこうしているうちに
常楽寺に到着。

じょうらくじ

ジョウラクジ

always happy temple ?!

と安易に直訳してケラケラ笑いながら山門にて一例。

自分でいうのもなんだがとっても不謹慎な遍路修行者だ。

このときに後に歩いていてシンドイ時に札所を英語に訳すと心が癒されるという
テクを身につけたのかもしれない。


昔は海の底だったという常楽寺境内。
かなりのハードコアな様相だ。

まだ9月末の日差しと相まって砂漠にいるような空気感の中、
そして砂漠なのに蚊がぶんぶんいるというエジプトとアマゾンが合体したような不思議な状況の中、納経しながらパントマイムのように手で振り払いつづける私。

20数分後、
蚊にやられた内股をぼりぼりかきながら14番をあとにした。


内股を気にしながら、
携帯でナビを確認しながら曲がり角一つ間違う事無く歩を進める。
間違えるとその数百メートルが痛いからだ。
肉体的にもだがきたところをまた戻るという不毛さに精神がやられる。


こんなカラフルな、ちょっと中国の社寺のようなカラーリングの
お堂を横目に”ケバいな”とつぶやきながら次のお寺を目指す。