よく”見た目はタイプだけどヒモ見たいな男とブサイクだけど半端ないお金もちだと
どっちがいい~?”というような究極の選択というものがあるが、
この12番札所はその最悪なところだけがミックスされた箇所と言っていいと思う。

前述の例で言うと、
”長いけどフラットな道か勾配キツいけど短いか、さぁどっち~?”
のどちらでもなくて、長いし勾配もキツいといった感じだ。


12番焼山寺、”1に焼山、2にお鶴、3に龍”と言われる遍路転がし三大難所のトップバッターであり最大の難所だということで、クリアしやすくするために前日はもっともスタート地点に近い吉野さんに泊まった。
そして11番藤井寺の本堂横からスタートするその遍路道はヴィジュアル的にも
中途半端な気持ちのものの入山を拒否しそうな様相を呈している。




健脚5時間、
並6時間、
遅脚8時間とも言われるロングバトル。

山を一つ超えたら、また途中までおり、そしてまた次の山を登り焼山寺に至る。
参拝後はまた山をおりなければいけないという総高低差は1500mを超えるとも言われ、その距離と勾配こそが最大の難所といわれる所以である。

はっきりいってこれをお遍路が始まって三日目にもってくる四国88カ所の
開祖空海は超ド級のSだと思った。

(バトルにふさわしい気持ちのいい朝だ)



(12.3km)なんて平道だったのしてもキツい。それが全部勾配なのだから…。

そんなドSの開祖がつくった魔境にドキドキしながら足を踏み入れる。
(聖地なのだが、正直初遍路転がしはいろいろな意味で怖い=魔境)

途中
”マムシに注意”
”へんろころがし1/6”
といういやがらせか!と叫びたくなるような注意書きがちらほら目に付くがしらぬふりをしてすすむ。



偽木のステップがつづくのぼりをひたすらに上る。

途中道路とクロスして、また山道に。ひたすらひたすら上る。
早朝ではあるが先行している方々がいるからか、蜘蛛の巣がたくさんあるのだが、人が通れるくらいには通路は確保されていてそこの注意はしなくていいから楽だ。


ひたすらキチガ○のようにすすむがいっこうに休憩所すらみえてこない。

遍路はこんなにキツいならこのまま下山してとっとと尻尾を巻いて
帰った方がいいんじゃないか、


・・・・


・・・・・


とか思う人も多いだろうなぁ~とか思いながら、
でもひぃひぃいいながら無言で登山。

一時間弱は歩いただろうか(いや、登山しただろうか)



長戸庵に到着。
といっても水飲み場があるわけでもなく、
売店がある訳でもなくただベンチがあるだけなのだが、
一休みできるというのは
大きい。
荷物をおろし、しっかり足をもみ、一息つく。

5分経過。

誰も来ない。

10分経過。

それでも誰もこない。

一緒の宿に泊まっていたお遍路さんたちもだいたい同じ時間にスタートしているはずなのに、いっこうにこないので途中で道を間違えたんじゃないかとか(長戸庵があるのが正当なコースなので間違っているはずは無いのだが)少し考えるが、
別に一緒に歩く訳でもないので、次のポイントをめざし荷物を背負い、歩きを再開した。


このときまだ朝の7時半。